雇用連情報第57号

発行 全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行責任者 田中章治
連絡先 田中章治(会長)
〒334-0071 埼玉県川口市安行慈林645-4
電話 048-285-9935
電子メール koyourenアットマークnpo-jp.net
URL http://www.koyouren.npo-jp.net
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郵便振替 00150-4-67809(加入者名)全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行日 2011年7月1日

(この情報誌は活字版(標準サイズ)、点字版、フロッピーディスク版、電子メール版(雇用連メーリングリストで配信)で製作されています。必要な方はご連絡ください。)なお、都合によりテープ版については現在製作を中止しておりますが、必要な場合は検討します。

目次

まえがき
  1. 厚生労働省交渉報告
  2. 大阪府・大阪市での公務員試験におけるパソコン受験について
  3. 柔道整復師施術療養費に関するアンケート調査結果
  4. 被災地にいらっしゃる視覚障害者の方へ(鍼灸師さんの募集)のご案内
  5. 平成22年7月からの障害者雇用に関する制度の改定について

まえがき

 このたびの東日本大震災で御家族・御親戚・大切な方を亡くされた方々に心からお見舞い申しあげます。また、依然として不便な生活を強いられている方々が、1日も早くもとの生活に戻ることができますよう、協力できることを探っていきたいと思います。
 視覚障害者の被災状況は日本盲人福祉委員会などが調べていますが、未だに全容がわかっていません。限られた情報では、ヘルパーの不足、避難所への受け入れの問題、生活物資の確保の課題などが浮き彫りになっています。就労問題では、全体的に三療の治療院が被災したり、原発事故の影響もあって患者が激減するなどの問題がおきています。

 今回の雇用連情報は震災前の厚労省交渉報告なので、要求に上記の問題を反映していません。しかし、被災した視覚障害者を雇用する動きがありましたので掲載いたします。雇用連としても、今後の要求に震災の影響を反映して活動していきたいと思います。

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厚生労働省交渉報告

 雇用連が年1回実施している厚生労働省との交渉が、去る2月28日の午後3時〜5時、中央合同庁舎5号館内の会議室において行なわれました。当局側の出席者は、職業安定局障害者雇用対策課の西川課長補佐、工藤専門官、能力開発課、労働基準局、老健局、保険局医療課でした。雇用連側の参加者は、10名でした。以下、交渉の概要を簡単に報告します。

雇用連会長 田中章治

〈障害者権利条約関係〉

要求1.

障害者権利条約の批准にむけて、障害者雇用における合理的配慮について検討しているとのことですが、視覚障害者関係について、どのような内容になっているか具体的にお知らせください。

回答:
厚労省としては、平成20年より、研究会を立ち上げ、障害者雇用審議会で議論し、昨年4月に中間とりまとめを出した。一方、内閣府の障害者制度改革推進会議ができており、合理的配慮の提供については24年度内に、結論を得るという閣議決定が昨年6月なされた。また、昨年11月には、差別禁止部会ができ、議論が開始されており、25年度には、差別禁止法を作ることになっている。
雇用連:
「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて(平成19年1月29日・人事院通知)」のような規程が民間にも欲しい。これも一種の合理的配慮ではないか。
厚労省:
そう思う。昨年3月、総務省の「公務部門における障害者雇用マニュアル」に、この人事院通知を加えてもらった。

要求2.

先の「障害者の雇用の促進等に関する法律」の一部改正によって、視覚障害者の雇用が促進されたかどうか示してください。

回答:
施行は、昨年7月からである。法改正によって、視覚障害者雇用が進んだかどうかは、まだ判断できない。22年7月〜12月までのハローワークにおける障害者の職業紹介件数は、対前年度比19パーセント伸びている。来年度予算案には、ハローワークの雇用率達成指導、ハローワークを中心とした関係機関との連携強化、障害者就業生活支援センター設置箇所数を増やす等の施策を盛り込んでいる。

要求3.

雇用情勢は相変わらず厳しいものがありますが、障害者雇用にどのように影響しているか実情を示してください。

回答:
昨年6月の調査で障害者雇用率は、1.68パーセントと過去最高、5年連続で率を更新している(対前年度比0.05ポイント増)。ハローワークにおける就職件数も21年度は45,257件で20年度より増えている。しかし、法定雇用率の未達成企業もまだ過半数あるので課題も多い。

要求4.

病院マッサージ師や電話交換手などを解雇された視覚障害者に対する雇用対策を立て、再就職支援の他、ヘルスキーパーや事務的職種など新たな職域を開拓し、再就職のための支援を行なってください。

回答:
事業主が障害者を解雇しようとする場合には、ハローワークに届出義務がある。これを受けてハローワークは、求人開拓や職業指導等、早期の再就職支援を行なっている。その際、本年度改定した「視覚障害者の職場定着マニュアル」も活用していきたい。

要求5.

視覚障害者の職場定着・安定のために、特定の職業安定所に視覚障害者のことをよく理解した専門の担当相談員を配置してください。

回答:
ハローワークには、障害者職業相談員、障害者専門支援員を配置し、きめ細かく対応している。本省においては、年2回の研修の中で、視覚障害者に対するパソコン指導の実際や、職業相談の実施方法を研修している。

要求6.

視覚障害者の雇用について、年次的にその推移をお示しください。

回答:
ハローワークにおける視覚障害者の職業紹介件数は、平成21年1,824件、うち重度は、1,122件、障害者全体に占める割合は8.2パーセントであった。平成19年度は1,820件7.4パーセントであった。
雇用連:
視覚障害者の多くは、あはき業に従事しており、自衛を含めた就労支援策が急がれる。全鍼師会に委託している開業を目指す委託訓練も良いが、企業と組んだヘルスキーパーの訓練、特別養護老人ホームの機能訓練指導員のためのジョブコーチの活用をもっと考えてはどうか。

要求7.

国・地方公共団体は、視覚障害3級以下に適用される特定職種(あん摩マッサージ指圧師)の特定身体障害者雇用率100分の70を達成するため、法に基づく採用計画を作成し、すみやかに達成するようにしてください。また、同規程が努力義務となっている民間も同様に進めてください。

回答:
6月1日の状況報告の際、この件も併せて報告させている。国・地方公共団体及び、民間については、要望にある方向で実施していきたい。

要求8.

医療機関及び介護保険施設において、視覚障害者が働きやすいように職場介助者制度(非事務職)について、次の改善をはかってください。

(ア)医療機関及び介護保険施設においては、本制度を知らないことが多く、また、視覚障害者が職場介助者の委嘱を希望しても事業主が消極的な事例があるので、周知徹底をはかってください。
回答:
障害者雇用納付金制度に基づく助成金制度は、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(以下、「機構」と略)が支給事務を行なっている。事業主に対する相談、援助と併せて、周知もしている。ハローワークでも事業主に対し、周知を実施している。
(イ)職場介助者制度(非事務職)に、配置を加えてください。
(ウ)職場介助者制度(非事務職)において、同一職場内に介助を受ける視覚障害者が複数いる場合に、一人の職場介助者が介助ができるようにしてください。 
(エ)全雇用期間に対して、職場介助者を適用してください。少なくとも、緊急に現行の適用期間を3〜5年延長してください。
回答:
事業主が新たに障害者を雇い入れる際、経済的負担を和らげるために本制度ができた。永久に支給することは、効率的効果的制度の執行上、疑問がある。他の助成金との均衡上、困難がある。視覚障害者関係の他の支援制度も活用してほしい。また、推進会議の議論を見ながら、制度のあり方を検討していきたい。
厚労省:
今年度で職場介助者の委嘱が終了する事例は10件、来年度は2件ある。全国に指示を出し調査した結果、各事例とも引き続き雇用される見込みがあるようなので良かったと思っている。
雇用連:
「情報障害」という視覚障害者の特性をもっと受け止めるべきだ。
(オ)民間に模範を示す意味からも公務員である視覚障害者への職場介助者制度を創設するよう、人事院に強くはたらきかけてください。 
回答:
障害者の雇用の促進等に関する法律第7条に基づく、障害者雇用対策基本方針の中で、指針を示している。具体的には、雇用主が行なうべき雇用管理に関する基本的留意事項を定めており、視覚障害者については、援助体制の整備が中心となっている。

〈助成金等申請の簡素化等〉

要求9.

障害者雇用納付金制度に基づく助成金及び障害者雇用継続助成金に基づく助成金の申請手続きを簡素化すると共に、申請に係る手続きを丁寧に助言するようにしてください。また、申請から給付までの時間を大幅に短縮してください。

回答:
不正受給の防止の観点も必要である。来年度から申請手続きは、「機構」の職員が担当することになっている。

〈ジョブコーチ〉

要求10.

視覚障害者が働く職場に訪問してのパソコン等のIT機器の操作指導について、「ジョブコーチが有効」との見解をうかがいましたが、これを実のあるものにするため、パソコンサポートの技術のある視覚障害者専門のジョブコーチを増やしてください。

回答:
養成については、「機構」が実施する研修の他、厚労大臣が定める民間の研修実施機関として4団体がある。今後も増やしていきたい。

〈職業能力開発局あて 職業訓練〉

要求11.

視覚障害者が全国どこでも地元で職業訓練を受けられるよう、指導員を養成してください。

回答:
全国19カ所の障害者職業能力開発校が中核である。平成20年から訓練指導員を対象にして、視覚障害者の訓練技法や就労支援の研修をしている。地方から宿泊により、パソコン研修を受ける際の宿泊費の補助制度については、持ち帰って検討したい。

〈中途視覚障害者のリハビリテーション〉

要求12.

「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」(平成19年1月29日、人事院通知)により、国家公務員である中途障害者が職務を遂行するために必要なリハビリテーションについては、病気休暇や研修制度の中で受けることが可能となりました。障害者権利条約の理念に基づき、民間企業においてもこれに準じた取り扱いがされるよう、労働基準法関係の法令で制度化をしてください。

回答:
(労働基準局)法改正はなかなか難しい。労使の協議が前提となる。平成19年度より、「特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度の普及事業」を実施している。

〈機能訓練指導員 回答は老健局〉

要求13.

介護保険下における個別機能訓練加算を増額してください。

回答:
介護報酬単価の改定時、すなわち、24年に向けて、介護給付費分科会で検討することになる。
雇用連:
特養(特別養護老人ホーム)のマッサージは医師の指示が要らないにもかかわらず、医療的リハビリの流れを踏襲しようとしている。特養では、QOLを高めたり、生活支援の場として位置づけ、介護報酬に反映されるべきだ。

要求14.

「福祉施設における視覚障害者の雇用促進のための障害者雇用マニュアル」が改訂されました。その後の介護保険施設における視覚障害者機能訓練指導員に対する雇用促進への厚生労働省と各都道府県の取り組みについてお示しください。

回答:
(障害者雇用対策課)本年、「視覚障害者の職場定着推進マニュアル」が改訂されたので、あらためて特養等の施設長が集まる会議において、視覚障害者を機能訓練指導員として雇用するよう、労働局、ハローワークを通じて要請した。

要求15.

2007年4月より介護老人福祉施設において個別機能訓練加算となり、個別機能訓練計画書の作成が義務づけられました。現在の各施設の個別機能訓練計画書では視覚障害者が使用できません。個別機能訓練計画書を視覚障害者が使えるような書式や音声対応にしてください。

回答:
平成20年8月から事務の簡素化を図り、職種間で連携し、記入していただいてよいこととした。
雇用連:
チームワークで処理すると言っても現場ではできていない。

〈診療報酬関係 回答は保険局医療課〉

要求16.

診療報酬における、「消炎鎮痛等処置」(手技による療法)点数を増額してください。

回答:
医療保険においては、有効性をかんがみ、点数設定を中医協で実施している。
雇用連:
マッサージ点数が1983年以来、35点に据え置かれている状況はおかしい。

要求17.

視覚障害者の就労継続のために必要なリハビリテーション(相談・助言・指導等のロービジョンケア)を、診療報酬に算定できるようにしてください。

回答:
現制度では、状態の改善を目的としたリハビリテーションを評価している。両眼視機能に障害のある患者に対して、矯正訓練を行なった場合には、視能訓練として評価している。ロービジョン指導についても、要望等、学会から受けているので内容、治療効果を科学的根拠に基づいて検討していきたい。24年の改定に向けて、日本眼科学会、眼科医会、日本ロービジョン学会から、直近ではこの1月に要望とその根拠が出されている。中医協の医療技術評価分科会で検討されるので、そちらでの協議を待ちたい。

〈資料1〉ハローワークにおける平成22年7月から12月までの就職件数

障害者全体:25,343(21,307)件
身体障害者のみ:12,101(11,076)件

※( )内は21年7月〜12月の就職件数

〈資料2〉視覚障害者の職業紹介状況

(平成21年度累計)

1.概況

(件、人、%)
  新規求職申込件数 有効求職者数 就職件数 就職率
  うち重度   うち重度   うち重度   うち重度
2,747 1,628 7,199 4,044 1,824 1,122 66.4 68.9

2.職業別就職件数

(件、%)
職業 視覚障害者
  構成比 うち重度 構成比
合計 1,824 100 1,122 100
専門的・技術的職業 1,129 61.9 880 78.4
  あんま・鍼・灸・マッサージ 977 53.6 776 69.2
(うち就職先が医療機関) (170) (9.3) (130) (11.6)
(うち就職先が施術院) (660) (36.2) (523) (46.6)
ヘルスキーパー 47 2.6 40 3.6
機能訓練指導員 35 1.9 26 2.3
理学療法士 16 0.9 9 0.8
ケアマネージャー 11 0.6 4 0.4
情報処理技術者 15 0.8 11 1.0
管理的職業 8 0.4 3 0.3
事務的職業 230 12.6 101 9.0
販売の職業 58 3.2 22 2.0
サービスの職業 95 5.2 26 2.3
保安の職業 23 1.3 5 0.4
農林漁業の職業 9 0.5 4 0.4
運輸・通信の職業 13 0.7 4 0.4
  電話交換手 10 0.5 4 0.4
生産工程・労務の職業 236 12.9 70 6.2
分類不能の職業 23 1.3 7 0.6

〈資料3〉特定身体障害者の雇用状況

(平成22年度累計)

(件、人、%)
  対象数 特定身体障害者数 実雇用率 雇用率達成割合
国及び地方公共団体 37 90 57.3 73.0
民間団体 144 897 42.4 61.1
(件、%)
  視覚障害者(件) 身体障害者(件) 視覚障害者の割合(%)
平成19年度 1,820 24,535 7.4
平成20年度 1,771 22,623 7.8
平成21年度 1,824 22,172 8.2

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大阪府・大阪市での公務員試験におけるパソコン受験について

(文・吉岡久美)

 私は、点字の習得時期が比較的遅かったので、点字の読み書き速度があまり速くない視覚障害者です。そこで、大阪府と大阪市に対し、パソコン試験を要望し、実現させることができました。以下は、その際の受験の具体的な状況と、パソコン試験についての私の思いです。

大阪府:

○試験にあたって

 音声パソコンの動作確認がありました。音声readerの設定やデスクトップに不要なファイルがないか、USBがきちんと作動するかどうか、試験当日同様の動きをします。

○試験日

 通常の受験者よりも、30分ぐらい早めの集合がかけられます。音声パソコンのsettingをします(パソコンの起動は、受験者自身でします)。デスクトップに不要なファイルがないかの、確認があります。

試験案内:
txt形式のものが(USB)にて配付されます。
その後、デスクトップに、「解答」「メモ」のテキストファイルを作ります。
※大阪府では、メモ帳と、PC Talkerに元々ついているMY EDITが使用可能です。
試験問題:
txt形式のものが(USB)で配付されます。そして、試験開始とともに、「試験問題」のファイルを開いて、試験です。
解答は、「解答ファイル」に、問題番号と解答番号を書きます。
例)問題番号13で、解答が5の場合は、13-5.

○試験後

 デスクトップのファイルは、常に上書きが必要です。「解答」ファイルをUSBにコピーします。その後、それを印刷してもらい、デスクトップにある「解答」「メモ」ファイルを消去します。

これが、試験の一連の流れです。

大阪市:

 音声パソコンを使用しての、試験の一連の流れは同じです。ただ、大阪市は、メモ帳しか使用することができません。また、プリンターも持参することが求められています。これに対しては、だいぶん抗議をさせていただきましたが、認められませんでした。

音声パソコン受験の課題:

 音声パソコンでの受験をさせていただく中で、課題も感じています。私自身も、これらの課題をどのように良い方向に向けていくことができるのかを、考えています。皆さん、良いアイディアがありましたら、教えていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。ところで、音声パソコンは、あくまでも点字の併用としてしか、現在は認められていません。たとえば、試験問題中に「点字参照」という言葉があります。また、問題中に、最低でも6問ぐらいは、図を見ての問題や古典などの、音声できちんと聞き取れない問題が出てきます。これらの問題を、どのように取り組むかが大きな課題だと思います。試験においては、一問のミスが、勝敗を分けてしまうことにつながると思います。これは、音声パソコンが、点字の併用でしか認められていない点に問題があります。

 点字を読むことが、ただスピード的に遅いのだから、そこを配慮するために音声パソコンで読むことを認めているというものです。音声パソコンで表せない部分は、点字での確認をすればいいとのことです。今後、音声パソコンが一つの受験のツールとして認められれば、上記の課題は解消されるように思えます。問題を作る時点で、代替問題にすることも考えられるでしょうから、フェアーな配慮が、行われると思います。音声というものを、一つの言葉を理解する、ツールとして認めてもらいたいものです。なぜ点字受験ではなく、音声パソコンを嘆願しているかのその根本的な部分の理解が、まだまだしてもらえないのが現状です。

 本年度から実施されると聞いている高知県での音声パソコン受験で、これらの課題にも一歩踏み込んだ試験となることを願っています。様々なツールで、その人がもっとも力を発揮できる形での受験が、全国どこででも受けられる体制が、いっそう広がっていってもらいたいと私は願っています。

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柔道整復師施術療養費に関するアンケート調査結果

(以下の情報を入手しましたので掲載します。 編集担当)

平成22年1月29日
全国保険医団体連合会

 平成21年11月11日に開催された政府の行政刷新会議による事業仕分け作業において指摘されたように、医療保険から支払われる柔道整復師による療養費は年々増加し、平成19年度には約3,377億円に達しています。これは、診療所入院外医療費でみると、産婦人科の1,932億円、小児科の3,334億円を上回る額です。

 当会は、平成21年12月にインターネットを用いた柔道整復師施術療養費に関するアンケート調査を実施し、整形外科医229名、一般市民200名から回答を得ました。

 厚生労働省の抜き取り調査によれば、柔道整復師の請求の99.2%が捻挫、打撲であり、しかも3部位以上が50.5%を占めていますが、これは余りにも実態と乖離しています。  整形外科医を対象としたアンケートによると、外来レセプトに占める捻挫、打撲の割合は、「3%未満」が35.8%と最も多く、加重平均で6.1%でした。

 また、長崎県保険医協会が平成21年11月に整形外科医会員151人を対象にしたFAXによるアンケート調査では、55名から回答があり、1ヶ月のレセプト総件数は43,240件で、このうち、捻挫、打撲の割合は2,098件(4.9%)でした。

 平成19年度の捻挫、打撲の請求件数は整形外科が360万件に対し、柔道整復師は3,690万件と推計されます。その差3,330万件は金額に換算して年間約3,100億円となります。

 一般市民を対象としたアンケートで、本来、柔道整復師には保険請求が認められない、慢性の肩こり、腰痛などで整骨院または接骨院を受診したという回答が45.3%でした。

 さらに、捻挫、打撲全体に占める3部位の割合については、整形外科医の92.6%が「3%未満」と回答をしており、加重平均でも2.4%に過ぎません。

 日本臨床整形外科学会(JCOA)が平成21年に実施した全国一斉調査でも、平均外傷部位数は1.22部位と報告されています。

 今回のアンケートで、3部位以上で柔道整復師を受診したと推計される1,860万件は、整形外科を受診した9万件の約200倍に相当します。このような事は起こり得ず、柔道整復師の請求の50.5%が3部位以上であることは明らかに不自然であります。

 柔道整復師の請求の50.5%を占める3部位以上を、金額に換算すると年間約1,700億円となります。

 加えて深刻なのが、整形外科医の93.4%が柔道整復に起因する、あるいは整復によって悪化した症例を経験したことが「ある」と回答している点であります。長崎県保険医協会のアンケート調査結果でも、同じ設問に65.5%が「ある」と回答し、骨折の見落とし、整復によると思われる骨挫傷、肩関節脱臼の患者に「五十肩」と診断し、関節可動域訓練を強制し骨髄損傷を来した症例、化膿性脊椎炎が悪化した症例、亀裂骨折を伴っていたが温めた結果、血腫が増大した症例等の具体例が寄せられています。これは国民の健康にかかわる重大な問題であると考えられます。

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被災地にいらっしゃる視覚障害者の方へ
(鍼灸師さんの募集)のご案内

 このたびは、縁があり、東日本大震災被災地域支援に係る内容ということで、雇用連さまのご理解のもと、機関誌に投稿させてもらうことになりました。同じ、視覚障害者として、特定非営利活動法人まちづくり協働ネットワークかんおん治療院は、被災地にお住まいの視覚障害者のご支援ご協力ができることを願っています。

特定非営利活動法人まちづくり協働ネットワークかんおん治療院院長 平野祐子

 このたびの大規模地震により被害を受けられました皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。皆さまの安全と一日も早い復旧復興をお祈り申し上げます。

 特定非営利活動法人まちづくり協働ネットワークかんおん治療院(以下かんおん治療院)はNPOという特色をいかし、特老などの施設での施術をさせていただいております。

 院長の私を含め、施術をするものは全員視覚障害者です。

 先日の大震災においては、ニュースを目の当たりにし、本当に心を痛めております。

 ニュースを見ている時にふと思ったのが、視覚障害者の方たちはどうしているんだろう?ということでした。

 また、日にちが経ってからは、被災地での就労が健常者でも大変だとニュースでしりました。

 まして、障害者の方たちの就労はどうなっているのだろうと毎日心配しておりましたが、「せっかくNPO法人で治療院を立ち上げたのだから、こちらに被災された障害者の方を呼んで、就労していただくのが良いのではないか」という思いに変わっていきました。

 少し調べてみましたら、障害者を雇う時には住宅の補助があったり、被災をした方が移転する場合、住居の提供があることが分かってきました。

 また、愛知県では転居の場合50万円を無利子無担保で借りることができるなどの支援があることもしりました。

 まだ立ち上げたばかりのNPO法人の治療院ですが、こういった支援方法があるなら、かんおん治療院で働いていただけるのではないかという結論に達し、10名程度の鍼灸マッサージ師を採用することにしました。

以下に詳しい募集の案内をさせてもらいます。

募集内容

対象: 東日本大震災において被災にあった視覚障害者で鍼灸・按摩マッサージ指圧師の資格のある方
期間: 1〜2年(復旧に伴い故郷に帰っていただけるように)
仕事内容: 特老などの施設内において、保険による治療
(患者一人あたり15分〜20分)
就業時間: 午前9時〜午後6時(お昼休憩1時間)
休日: 土日(GW・お盆・年末年始)
給与: 20万円〜

住居などは名古屋市や愛知県などの支援を利用します。 (詳しくはお訊ねください)

特定非営利活動法人
まちづくり協働ネットワーク
かんおん治療院
院長 平野祐子

事務所
〒460-0011名古屋市中区大須1-35-42サンドリヨン903号

連絡先
事務局長 坂井田(さかいだ) さとる
e-mail:timosseeアットマークyahoo.co.jp
TEL:058-372-8324
FAX:058-372-8400
Mobile:080-1621-1621
e-mail:timosseeアットマークdocomo.ne.jp

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平成22年7月からの障害者雇用に関する制度の改定について

大きな内容として以下の3点が変更になりました。

1.常用雇用している労働者数が200人以上、300人以下の事業所が障害者雇用納付金制度の対象になった。

 障害者雇用納付制度とは、事業主間の経済的負担を調整する観点から雇用障害者数が法定雇用率に満たない事業主から、その雇用する障害者が一人不足するごとに1月当たり5万円を徴収し、それを原資として、法定雇用率を超えて障害者を雇用する事業主に対し、障害者雇用調整金(超過1人につき1月当たり2万7千円)や助成金を支給する仕組みです。

 この障害者雇用納付金の徴収は、昭和52年以降、常用雇用労働者を301人以上雇用する事業主のみを対象としてきました。

 しかし、近年、障害者の雇用が着実に進展する中で、中小企業における障害者雇用状況の改善が遅れており、障害者の身近な雇用の場である中小企業における障害者雇用の促進を図る対策が必要になってきました。

 こうした観点から以下のような改定が実施されました。

実施時期 内容
現行 常用雇用労働者が301人以上の事業所
平成22年7月から 常用雇用労働者が200人を超え300人以下の事業所
平成27年4月から 常用雇用労働者が100人を超え200人以下の事業所

 制度の適用から5年間は、経過措置として納付金の減額特例が適用されます。具体的には以下の通りです。

2.短時間労働者(週の所定労働時間が20時間以上30時間未満)が障害者雇用率制度の対象となった。

(1) 身体障害者又は知的障害者である短時間労働者のカウント

 これまでの障害者雇用制度においては原則として、週所定労働時間が30時間以上の労働者を実雇用率や法定雇用障害者数の算定の基礎としていました。このため、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の重度障害者や精神障害者を除き、重度でない身体障害者や知的障害者である短時間労働者については、実雇用障害者数や実雇用率にカウントすることはできませんでした。

 

 一方で短時間労働については、

  1. 障害者によっては障害の特性や程度、加齢に伴う体力の低下等により、長時間労働が難しい場合がある。
  2. 障害者が福祉的就労から一般雇用へ移行していくための段階的な就労形態として有効である。

などの理由から、障害者に一定のニーズがあります。

 こうしたニーズへの対応として、平成22年7月から、障害者雇用率制度における実雇用障害者数や実雇用率のカウントの際に、身体障害者又は知的障害者である短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)をカウントすることとなります。このとき、そのカウント数は0.5カウントとなります。

 障害者である短時間労働者のカウントの方法は次の通り 

 
週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満
身体障害者 1カウント 0.5カウント
重度は2カウント 重度は1カウント
知的障害者 1カウント 0.5カウント
重度は2カウント 重度は1カウント
精神障害者 1カウント 0.5カウント

(2) 健常者である短時間労働者のカウント 

 上記( 1 )の改正にあわせ、平成22年7月から、障害者雇用率制度において、実雇用率や法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)の算定の基礎となる常用雇用労働者の総数に、健常短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)をカウントすることとなります。その際、短時間労働者は0.5カウントとして計算し、これを基に、実雇用率や法定雇用障害者数を計算します。

 実雇用率等の計算式は次のようになります。

実雇用率 = 障害者である労働者の数 + 障害者である短時間労働者の数×0.5
       労働者の数 + 短時間労働者の数 × 0.5

法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)=(労働者の数 + 短時間労働者の数)× 1.8%

《計算例》
実雇用率

8+2×0.5+6×2+4+3+2×0.5 = 1.61%
1500+600×0.5

法定雇用障害者数

(1500+600×0.5)×0.018 ≒ 32人

3.除外率が適用されている事業所において現在設定されている除外率が一律10%ポイント引き下げられた。

 職務によっては、身体障害者及び知的障害者が就業することが困難であり、一律に障害者雇用率を適用するのが不適当な業種があります。

 このため、身体障害者及び知的障害者の就業が一般的に困難であると認められる職種が、相当の割合を占める業種ごとに、あらかじめ除外率を定め、雇用しなければならない法定雇用障害者数を算定する際の、基礎となる常用労働者数の算定に当たっては、この除外率に相当する労働者を控除することとされています。

《具体的な計算例》

 労働者数1,000 人で除外率50%の業種の場合、雇用義務は18 人から9 人に軽減されます。

  1. 除外率なし 1000 × 1.8% = 18人
  2. 除外率あり (1000 - 500※) × 1.8% = 9人

※1,000人に対し除外率50%を掛けた人数をひく。

 このように除外率が設定されている業種では、されていない業種に比べ、障害者を雇用しなければならない人数が緩和されることになります。

 今回の改定で、この除外率が設定されているすべての業種において当率が一律10%引き下げられることにより、該当企業において、障害者を雇用しなければならない人数は増加し、我々、障害者の雇用の場が拡大することが予想されます。

 また、16ページの「障害者雇用義務の中小企業への拡大」も障害者にとっては雇用の場を広げる方向に働くと予想されます。

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