発行 | 全国視覚障害者雇用促進連絡会 |
発行責任者 | 田中章治 |
連絡先 | 田中章治(会長) 〒334-0071 埼玉県川口市安行慈林645-4 電話 048-285-9935 電子メール koyourenアットマークnpo-jp.net URL http://www.koyouren.npo-jp.net (ここから本誌のバックナンバーがダウンロードできます) 郵便振替 00150-4-67809(加入者名)全国視覚障害者雇用促進連絡会 |
発行日 | 2007年 7月1日 |
(この情報誌は活字版(標準サイズ)、点字版、テープ版、フロッピーディスク版、電子メール版(雇用連メーリングリストで配信)で製作されています。必要な方はご連絡ください。)
1年ぶりに雇用連情報をお届けします。視覚障害者の雇用は遅々として進みませんが、それでも本誌に掲載するような明るいニュースが飛び込んできています。最後までお読みください。
毎年、恒例となっている雇用連と厚生労働省との懇談が、2007年3月5日午前10時〜12時まで、厚労省会議室において開催されました。厚労省側の出席者は、障害者雇用対策課の市川・工藤、老人保健課の米丸の各氏。雇用連側の参加者は10名でした。以下、当日厚労省に提出した要望書の要望項目に沿って、当局側の回答について、報告いたします。
平成19年3月5日 | |
厚生労働大臣 柳澤伯夫様 |
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全国視覚障害者雇用促進連絡会 会長 田中章治 |
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厚生労働省への要求 |
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[視覚障害者の雇用促進] | |
要求1. | 参議院{障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案に対する付帯決議}2005年6月29日では、「二、視覚障害者等就職の困難な障害者の雇用を促進するため、障害の重さの程度区分が職業生活上の困難さを配慮したものとなるよう障害者雇用率制度の見直しを行うとともに、障害者雇用納付金制度においては、納付金の額、徴収範囲、報奨金の在り方等についても見直しを行うこと。」とされています。また昨年12月に国連で障害者権利条約が採択され、その中で職場においても障害をカバーする合理的配慮を行うことがうたわれています。これを踏まえ、これまで実績のある職域については一層の雇用促進につながるような施策を講じてください。また、新しい職域を開発する研究を促進してください。 |
回答: | 付帯決議の関連では、高齢・障害者雇用支援機構の障害者職業総合センターで「職業的困難度からみた障害程度の評価に関する検討」を開始した。身障手帳1・2級といっても、視覚障害と他の障害とでは、就職のしやすさという点ではかなり異なる。また、『障害者雇用マニュアル92号―福祉施設における視覚障害者の雇用促進について』の改訂版を作成、積極的な活用を進めるよう指示文書をつけてハローワークに発送した。さらに、各労働局に一人配置されている障害者担当官会議の際に、この文書や、関係団体の資料も含め伝達、指示をしている。具体的には、新しい特養(特別養護老人ホーム)がオープンするという情報をキャッチしたらアプローチするとか、特養担当者が集まるような会議があったら資料を持っていくとか、きめ細かな指導をするよう話をした。一つレベルが上の通知を近近出す予定である。 新しい職域開発の研究については、19年度から障害者職業総合センターで「視覚障害者の雇用拡大のための支援施策に関する研究」を開始する。また、「重度身体障害者(下肢と視覚)のアクセシビリティー改善による雇用支援策の調査研究」をテーマに検討している。 |
[視覚障害者の雇用実態について] | |
要求2. | 雇用されている視覚障害者の実数、視覚障害者全体に占める割合、他の障害種別との比較について、過去にさかのぼった分も含めたデータをお知らせください。 |
回答: | 平成15年度の「障害者雇用実態調査」によると、視覚障害者の就業者数は1万7千人、前回の平成10年度調査では4万3千人だったので、大きく減少した。障害者全体に占める視覚障害者の割合も、10.9パーセントから4.6パーセントとなった。その理由として考えられるのは、高齢化の影響による就業年齢自体の減少、正規雇用から非正規雇用への就業形態の流れの影響とみている。ハローワークの紹介による視覚障害者の就職件数は17年度で、1,795人、対前年度比9.2パーセント増となっている。 |
雇用連: | 重度視覚障害者の雇用促進の観点から、等級別のデータをとってほしい旨強く要望した。 |
[特定身体障害者の雇用] | |
要求3. | 国・地方公共団体は、特定身体障害者(視覚障害3級以下)に適用される特定職種(あん摩マッサージ指圧師)特定身体障害者雇用率100分の70を達成するため、法に基づく採用計画を作成し、すみやかに達成するようにしてください。また、同雇用率の達成が努力義務となっている民間企業に対しては、達成のための指導を強化し、必要に応じて雇い入れに関する計画の作成を命じてください。さらに現在どの程度雇用率が達成されているか数字を示してください。 |
回答: | 平成18年6月1日現在の特定職種の雇用状況は、国及び地方公共団体については、対象機関数66、特定身障者数170人、実雇用率69.4パーセントであった。民間企業では対象企業数148、特定身障者数1,046人、実雇用率52.3パーセントであった。引き続き達成のための指導をしていく。 |
[職場介助者制度の改善] | |
要求4. | 職場介助者制度について次の改善を行ってください。 (ア)職場介助者制度(非事務職)を知らない保険医療機関である事業主が多く、また、視覚障害者が職場介助者の委嘱を希望しても事業主が消極的な事例があるので、保険医療機関への周知徹底を図ること。 |
回答: | 高齢・障害者雇用支援機構に尋ねたところ、職場介助者制度の平成17年度の申請は121件。周知徹底を図るべく今度出す通達にも載せていきたい。 |
(イ)全雇用期間に対して、職場介助者(非事務職を含む)を適用すること。 | |
回答: | 全雇用期間への延長については現状では難しいが、「機構」側に伝えていきたい。 |
[解雇された視覚障害者対策] | |
要求5. | 病院マッサージ師(あはき師)や電話交換手など解雇された視覚障害者に対する雇用対策を立て、再就職支援の他、ヘルスキーパーや事務的職種など新たな職域を開拓し、再就職のための支援を行ってください。 回答:事業主が障害者を解雇する際には、すみやかにハローワークに届けなければならない。解雇の届出があった時、ハローワークはその人にあった求人の開拓等を積極的に行い、再就職を支援することになっている。病院マッサージ師やあはき師、電話交換手を解雇された方については、その資格、技能を生かし、再就職できるようにしている。 |
[助成金の申請手続] | |
要求6. | 障害者雇用納付金制度に基づく助成金及び障害者雇用継続助成金に基づく助成金の申請手続を簡素化してください。並びに、都道府県協会において、申請手続を熟知するよう指導し、申請に係る手続を丁寧に助言するようにしてください。 |
回答: | 申請手続きの簡素化については、高齢・障害者雇用支援機構で従来から取り組んでいる。たとえば、平成18年度においては、「機構」のホームページに掲載している助成金の申請書をダウンロードできる対象を、14種類から29種類に拡大した。申請手続きのいっそうの簡素化については「機構」に伝える。 都道府県協会、地方協会の職員の接遇の問題については、「機構」が毎年会議を開催し、指示している。 |
[雇用関係書の点字化等] | |
要求7. | 雇用関係の図書・資料(例えば障害者雇用ガイドブック、障害者職域拡大等研究調査報告書、障害者雇用マニュアル、障害者職域拡大マニュアル及び障害者雇用管理等講習資料シリーズなど)のうち、点字化、テキストファイル化等がされて視覚障害者が読むことができる状態になっているもののリストをお知らせください。また現在点字化等がされていないものについて要望があった場合どのように対応するかお答えください。 |
回答: | あらためてリストを作ってお渡ししたい。(後日、『独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構における各種資料の視覚障害者への対応状況 3月28日高齢・障害者雇用支援機構企画調整課』という資料をいただいた)ホームページ等で視覚障害関係のものは、テキストファイルでアップされているものが多いが、PDFファイルのものもある。視覚障害者団体から要望のあったものはテキスト化を検討したい。障害者職業総合センターの研究報告書についてはテキスト化されている。また、営利を目的としない範囲で点訳・音訳・拡大写本することを認めている。 |
[IT機器の訪問指導] | |
要求8. | 以前から要求している視覚障害者が働く職場に訪問してのパソコン等のIT機器の操作指導について、前回の回答で「ジョブコーチが有効」との見解をうかがいました。これを実のあるものにするため、パソコンサポートの技術のある視覚障害者専門のジョブコーチを増やしてください。 (補足)視覚障害者(特に全盲者)は、画面読み上げソフトによって画面内容を確認しながらマウスを使わずキーボードのみでパソコンを操作します。この技術は単に通常の環境でのパソコン使用に精通しているだけで指導できるものではありません。 |
回答: | ジョブコーチは視覚障害者の職場定着を図る上で有効である。平成17年度10月より、職場適応援助者助成金制度を創設した。これは、社会福祉法人等、障害者への就労支援の実績のある機関で、指定団体となっているものが申請すれば、職場適応援助者を配置し、ジョブコーチによる支援ができるようになった。 |
[中途視覚障害者対策] | |
要求9. | 中途視覚障害者が解雇されたり、不安定雇用にならないよう、能力開発のためのリハビリ(例えば歩行訓練や音声パソコン操作の習得など)を研修で保障するとともに、所得保障を行うよう就業規則を改正させる指導を行ってください。 |
回答: | 中途障害者の継続雇用を図るため、作業施設の設置や職場適応の措置を実施した事業主に対し、障害者雇用継続助成金を支給している。 平成19年1月29日の人事院通知「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」により、国家公務員である中途障害者が職務を遂行するために必要なリハビリテーションについては、病気休暇や研修制度の中で受けることが可能となった。これを民間企業に適用できるかどうかは、労使間で決めることである。民間企業の就業規則の雛形である「モデル就業規則」が2003年11月に改定された。従業員を解雇できる場合の一つに「精神または身体の障害について、適正な雇用管理を行い、雇用の継続に配慮してもなお、その障害により業務に耐えられないと認められたとき」との項目が書き加えられた。今後、「適正な雇用管理」の内容について、機会があれば啓蒙・啓発していきたい。 |
[公務員である視覚障害者の職場介助者] | |
要求10. | 民間に模範を示す意味からも公務員である視覚障害者への職場介助者制度を創設するよう、人事院にはたらきかけてください。 |
回答: | 民間に模範を示すという趣旨は理解している。国家公務員採用試験等が点字で実施されていることから、人事院とも協力しつつ、今後とも視覚障害者の働く環境や支援のあり方について、適宜各省庁に広報し、理解を求めていく。 |
[視覚障害者担当相談員の配置] | |
要求11. | 視覚障害者の職場定着・安定のために、特定の職業安定所に視覚障害者の雇用を専門に担当する相談員を配置してください。 |
回答: | ハローワークに障害者職業相談員(障害者専門支援員、障害者相談担当)を配置し、障害者の職場定着に努めている。平成16年から全国10箇所のハローワークで「地域障害者就労支援モデル事業」がスタートした。この間の経験を生かして、今後は地域の関係施設等社会資源とも密接に連携し、チームによる支援を行っていきたい。障害者担当職員の研修内容についても工夫していきたい。視覚障害者の雇用を専門に担当する相談員の配置はしていないが、これらによってある程度の対応はできると思う。 |
[視覚障害機能訓練指導員関係] | |
要求12. | 「福祉施設における視覚障害者の雇用促進のための障害者雇用マニュアル」が改訂されました。その後の介護保険施設における視覚障害者機能訓練指導員に対する雇用促進への厚生労働省と各都道府県の取り組みについて教えてください。 |
回答: | 平成18年7月18日付障害者雇用対策課課長通知を持って、地方労働局や各ハローワークに対し、同マニュアルの有効活用について指導した。全国の介護老人福祉施設等に対しては、「機構」から「視覚障害者雇用マニュアル92号改訂版」を送付した。本年2月9日に開催された全国労働局障害者雇用担当官会議の席上、周知徹底を図った。現場における工夫としては、課長通知に基づいて新しく施設を作る社会福祉法人に新規雇用を働きかけたり、出向いて求人開拓をするよう積極的に取り組んでいる。 ハローワークの紹介による平成18年4月〜12月の特別養護老人ホーム等への就職件数は13件であった。 |
要求13. | 昨年4月より介護老人福祉施設において個別機能訓練加算となり、個別機能訓練計画書が義務づけられました。現在の各施設の個別機能訓練計画書では視覚障害者が使用できず働き続けることが困難な状況になっています。個別機能訓練計画書を視覚障害者が使えるような書式や音声対応にしてください。 |
回答: | 個別機能訓練計画書については、様式は示していないので、視覚障害者が使いやすいような書式にしてもらってかまわない。 |
雇用連: | 書式が決まっていないと言うことを施設側に伝えてあるのか? 計画書作成の際の施設側の対応の結果、退職した視覚障害者がいる。 |
回答: | 特段の様式を示していないと言うことは、適宜作ってよいと言うことである。都道府県単位の画一的判断がある。 |
雇用連: | 東京都の場合、この件については何の考えも持っていない。計画書のフォーマットをこちらで作るので、検討してほしい。 |
雇用連: | 持ち帰って検討する。 |
(文責 田中章治) |
下堂薗 保
この通達の内容は、1 病気休暇の運用についてと、2 研修の運用についての二本立てになっております。前者は、従来、治る見込みのない疾病は療養の範囲に含まれないとしていたものについて「社会復帰のためのリハビリテーションであってもそれが医療行為として行われる限り、負傷又は疾病が治る見込みがない場合であっても、病気休暇の対象となり得るものであること」と修正したこと。後者は、音声パソコン操作訓練などを研修扱いとするというもので「負傷又は疾病のため障害を有することとなった職員の能力、資質等を向上させることを目的として実施される、点字訓練、音声ソフトを用いたパソコン操作の訓練その他これらに準ずるものは、研修に含まれるものであること。」などと、新しい解釈を追加したもので、中途視覚障害者の就労継続の促進に役立つものと期待される画期的な内容です。
人生の中途において治る見込みのない負傷または疾病を背負った者にとって、これまでに培ったノウハウを活かしながら働き続けたいと強く思っていても、職務の遂行に必要な電子情報機器等の操作訓練を学習できなかったため希望がかなえられない状況もありましたが、今回新設された研修制度等は、それらの問題を改善しようとするところに画期的な意義があります。
この通知が及ぼす効果については、「@障害を受傷した当事者が、早めに職務能力の向上に対処できることが期待されること、A障害者をかかえることになった雇用主においては、かかえていた難題への対処法が明示されたことで対処しやすくなったこと、B研修の受講の結果職務効率を何倍も高めるようになり、人材の効率的活用ができること、C仕事がはかどるようになれば当然、安定雇用につながることが予想されること、D雇用が安定すれば障害者基本法などに言われる障害者の自立が図られることになり家庭の崩壊が防げるようになること等々、多くの好影響がもたらされることが考えられます。
研修の実施主体者は各府・省庁あるいは各都道府県等であり、かつ、対象者は公務員に限られているなどという限定的なものですが、今後はこの研修制度が周知徹底され、普及することが大いに望まれると同時に、通知書の主旨が広く民間企業等へも波及し、視覚障害者の就労環境が改善されることが望まれるところです。
■人事院交渉経過
☆2005年10月17日
下堂薗は個人的に、人事院職員福祉局職員福祉課に対し、「療養」の範囲の定義及びその拡大についてと、病気休暇の目的とするところは仕事ができるようになることにも大きなネライがあるのではないかと考えるが? などと、電話とメールにより照会開始。
☆同年、10月20日
副会長ら役員から、雇用連の応援をもらうほうが効果的との助言。
☆同年、11月2日
人事院職員福祉課から電話により、療養の範囲内にリハビリテーションを含めるとの、「脈あり」を感じさせる前向きな朗報。
文書処理するに当たり、要望書等は歓迎するとの回答。
☆同年、11月4日、5日
下堂薗から「脈あり」の感触を、田中雇用連会長、篠島副会長らに上の状況を報告。
☆同年、11月6日
雇用連総会において、雇用連の要望事項の一つに加えることで可決される。
☆同年、11月23日
要望書(案)作成開始、微調整。
☆同年、12月2日
人事院 職員福祉局局長、関戸秀明殿あての文書を前もって、事務当局にメールにて送信。
☆同年、12月12日、第一回交渉
「国家公務員の病気休暇の要件は規則に定められているとおりである。社会復帰のためのリハビリであっても医療行為として時間内に行われれば認められる。その際、医師の診断が必要である。視覚障害が治るかどうかは無関係である。」以上の口頭回答。
☆2006年2月13日、第二回交渉
第一回交渉で示した見解どおりとの回答。関係部局との調整中とのこと。
☆同年、12月14日、第三回交渉
これまでの回答のほか、リハビリテーションを研修制度の中で実施できないかということについて、関係部局と調整中と、こちらの要望より前進した回答を用意しているとの口頭回答。
☆2007年、1月23日
人事院から、決裁がとれそうなため、事前に説明したいので、1月29日か、30日に交渉したいとの連絡があったが、雇用連側の日程調整が厳しく、交渉は決裁後に設定することを連絡。
☆同年、1月29日
人事院から、第三回交渉時に口頭回答した内容で、本日付で決裁が取れたとの報告。
☆同年、2月9日、第四回交渉
障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて(通知)により、
1 病気休暇の運用について
2 研修の運用について
が示され、予期以上の画期的な内容の回答を得て決着。
☆同年、2月18日
毎日新聞社会面、点字毎日に報道される。
田中章治会長、画期的な内容と、コメント。
☆同年、2月25日
NHKラジオ第二放送「視覚障害者のみなさんへ」で放送される。
T.R.
私は特別養護老人ホームにおいて職務に従事しています。施設では、常時介護が必要で在宅生活が困難な要介護高齢者に対し、日常生活全般の援助や機能訓練健康管理等のサービスを提供することにより、要介護状態を改善し、自立した生活を送ることができるよう支援しています。この施設での私の業務内容は、施設利用者に対する相談援助、施設利用を希望する方たちから寄せられる電話や窓口相談への対応、利用申込み受付等です。
利用者への相談業務では、入所・入院・退所といった一連の事務手続きの代行、施設サービス計画の確認、利用者の生活に潤いを与えるような行事の実施といったことを行っています。定期的な利用者・家族との対話を重視し、把握したニーズをサービス向上に繋げていくことができるよう努力しています。最近では、利用者の重度化が進んでおり、言葉によるコミュニケーションが困難な方が多くいるため、関わり方に難しさを感じることがあります。こちらが一人一人の状況を理解したうえで、居室やベットサイドといった利用者にとって落ち着いて話ができる場所に積極的に出向き、工夫しながら取組んでいます。
利用希望者への対応では、電話や窓口に寄せられる施設利用相談に応じたり、利用申込みを受付、介護度・介護者の状況、住宅の状況を審査しランク分けすることにより、待機者の利用の優先度を決定するという業務に取組んでいます。現在施設では、4人部屋を2〜3人部屋にするという居室改善と規模の縮小を進めています。一方で待機者数は増加傾向にあり、待機者の円滑な施設利用が困難な実情があります。そのため、「これだけ待機者がいるのにどうして人数を減らしているのか?」という苦情も多く寄せられています。相談者に施設の方針や現状を説明し、理解を得ていくことに苦労しています。他の施設や相談機関を調べ、アドバイスできる範囲で情報提供を行う等、少しでも相談者の負担を軽減できるよう接遇にも留意して職務に従事しています。
職場環境については、ベテラン職員が多く福祉施設ということもあるのか、とても理解があり障害を持つ私が働くにあたり恵まれた職場であると思います。こちらが前向きに働きかけていくことで上司や先輩から必要な手助けや助言を頂き、やりがいを感じながら働いています。仕事は、パソコン(職場の組織端末に音声ソフトを入れたもの)を使って行っています。その他、毎週1回勤務時間の3時間程度職務に関わる書類の対面朗読時間を頂く等の配慮も受けています。
この職場で働き始めて6年目となります。他の職員と比較するとできる仕事量が少なかったり、知識・技術面においても劣っていることばかりで、戸惑いや力の無さを痛感し悩むこともあります。しかし、「自分の関われる仕事を少しずつでも意欲的に増やしていくこと」を目標に奮闘する毎日です。職務に必要な社会福祉士資格を取得したり、ケアマネージャーを目指して勉強してみたりと、今後も相談員としてステップアップを図っていくため、努力していきたいと思います。
稲垣 実
視覚障害者の職域拡大における介護保険施設(通所介護(デイサービス)・短期入所者介護(ショートステイ)・特定施設入所者生活介護(介護保険利用型有料老人ホーム)・介護老人福祉施設(特養))の機能訓練指導員の有効性などについて報告してきました。毎年厚生労働省から出される統計「介護サービス施設・事業所調査結果の概況」によると介護保険施設常勤換算従事者の職種別人数を平成16年と平成17年で比較してみた。
平成16年は機能訓練指導員として従事している柔道整復師とマッサージ師の事業所別人数(平成16年までは統計上合算となっている)は、通所介護913人、短期入所生活介護167人、特定施設入所者生活介護101人、介護老人福祉施設525人、平成17年はマッサージ師単独の統計で通所介護895人、短期入所者生活介護156人、特定施設入所者生活介護116人、介護老人福祉施設506人となっている。
推計してみると常勤換算従事者数ではあるが機能訓練指導員総数の資格別人数は圧倒的に看護師が多く6割程度を占め、次にマッサージ師となっている。平成16年では柔道整復師数は通所介護で3割程度、特養では1割程度と考える。また、マッサージ師の7割程度が視覚障害者と考えられる。1年間で各事業所での増加が見られるが特に通所介護での増加が目立つ。一方、特養に勤務する理学療法士は、平成16年263人、平成17年256人と減少している。この結果を見ると、雇用マニュアルの作成や厚生労働省から各都道府県労働局などに出された視覚障害者に対する雇用促進のための通知などが成果をあげたと考えます。しかし、昨年の4月の介護報酬を含めた介護保険制度改正があり平成18年以降の推移を見守りたい。
各職場では、昨年4月から個別機能訓練加算となり個別機能訓練計画書が義務付けられた。計画書の様式は各施設にまかされることにはなったが、多くの施設でリハビリ病院で使用しているリハビリテーション総合実施計画書や老人保健施設のリハビリ計画書の様式を採用する所が増えてきた。それは、福祉系施設である特養などの「生活の場における機能訓練」とは異なる内容である。また、視覚障害者には音声対応しないなど対応が困難な様式になっている。そこで私達視覚障害者が使用できる様式の提案を厚生労働省に行った。回答はないが、私達から提案することは大きな意味があると考えます。
今後の課題としては、2月に行われた「介護保険担当課長会議」において平成23年の療養型の廃止に伴う受け皿としての老人保健施設と特養のリハビリのあり方が今後の課題にあげられています。特養などにおける機能訓練のあり方をマッサージ師自らが提案することが大切なことです。
雇用拡大にむけての課題としては、機能訓練指導員として重度視覚障害者の採用が少ないことです。その理由としていくつかあげると、まず介護保険サービス提供者は事故を回避することを最優先としている。そのような現状で雇い主に視覚障害者を雇用するノウハウが少ない、雇い主と雇われる者双方に個別機能訓練加算制度や機能訓練業務についての理解や知識が乏しいことがあげられる。機能訓練指導員として雇用を拡大するには、職場環境や業務内容を熟知しコーデネイトできるジョブコーチのような人の存在が必要であると考えます。
1 | 厚生労働省は平成19年4月17日、職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課長から、各都道府県労働局職業安定部長あてに、「視覚障害者に対する的確な雇用支援の実施について」という通知を出しました。主な内容は この内容は2007年4月22日にNHKラジオ第2放送の「視覚障害者のみなさんへ」で放送されました。そのURLはhttp://www.nhk.or.jp/fukushi/shikaku/で、本誌を編集している時点では内容をこのサイト上から聴くことができます。 |
2 | 雇用連が昨年12月3日に行ったヘルスキーパーについてのシンポジウムの記録集を日本理療科教員連盟が作成する予定です。詳しくは雇用連にお問い合わせください。 |
3 | 参考情報 以下の図書が発刊予定ですが、一般の方が入手できるかどうか不明ですのであくまでも参考情報とさせていただきます。 題名:「視覚障害者の雇用継続支援の実用マニュアル」 |