雇用連情報 第52号

発行 全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行責任者 田中章治


連絡先 田中章治(会長)
〒334-0071 埼玉県川口市安行慈林645-4
電話 048-285-9935
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郵便振替 00150-4-67809(加入者名)全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行日 2005年 7月1日


(この情報誌は活字版(標準サイズ)、点字版、テープ版、フロッピーディスク版、電子メール版(雇用連メーリングリストで配信)で製作されています。必要な方はご連絡ください。)



目次

厚生労働省交渉報告
雇用連第14回総会開催される
人事院に対する要望事項について
介護保険制度における機能訓練指導員についての動向
障害を持つ医師として
2005年10月1日から実施されている職場介助者制度の概要
在宅就業障害者に対する支援



厚生労働省交渉報告

2006年2月13日、恒例の厚生労働省交渉を行いました。

双方の日程の関係でいつもより多少遅い時期となりました。

以下要望書に沿って報告します。

平成18年2月13日
厚生労働大臣 
川崎二郎様
全国視覚障害者雇用促進連絡会
会長 田中章治 

厚生労働省への要求

[視覚障害者の雇用促進]
要求1. 参議院{障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案に対する付帯決議}2005年6月29日では、「二、視覚障害者等就職の困難な障害者の雇用を促進するため、障害の重さの程度区分が職業生活上の困難さを配慮したものとなるよう障害者雇用率制度の見直しを行うとともに、障害者雇用納付金制度においては、納付金の額、徴収範囲、報奨金の在り方等についても見直しを行うこと。」とされています。これを踏まえ、これまで実績のある職域については一層の雇用促進につながるような施策を講じてください。また、新しい職域を開発する研究を促進してください。
回答: 雇用率制度や納付金の見直しは有識者により検討する。事例集や雇用マニュアルを活用して雇用を促進したい。新たな職域拡大についても、高齢・障害者雇用支援機構の研究成果を踏まえて検討したい。
[視覚障害者の雇用実態について]
要求2. 雇用されている視覚障害者の実数、視覚障害者全体に占める割合、他の障害種別との比較について、過去にさかのぼった分も含めたデータをお知らせください。
回答: 平成15年度の調査で視覚障害者の就業者17,000人また、ハローワークからの紹介件数を見ると、16年度の視覚障害者の就職件数は1,644人で対前年度比較2.9%増となっている。
雇用連:重度視覚障害者の雇用促進の観点から、等級別のデータをとってほしい旨強く要望した。
[特定身体障害者の雇用]
要求3. 国・地方公共団体は、特定身体障害者(視覚障害3級以下)に適用される特定職種(あん摩マッサージ指圧師)特定身体障害者雇用率100分の70を達成するため、法に基づく採用計画を作成し、すみやかに達成するようにしてください。また、同雇用率の達成が努力義務となっている民間企業に対しては、達成のための指導を強化し、必要に応じて雇い入れに関する計画の作成を命じてください。さらに現在どの程度雇用率が達成されているか数字を示してください。
回答:

多少雇用率が上がっている。17年6月1日の調査では、
公的機関:対象機関94、身体障害者334人、65.9%。
民間:対象機関20,111人、53.4%である。

[職場介助者制度の改善]
要求4. 職場介助者制度について次の改善を行ってください。
(ア) 職場介助者制度(非事務職)を知らない保険医療機関である事業主が多く、また、視覚障害者が職場介助者の委嘱を希望しても事業主が消極的な事例があるので、保険医療機関への周知徹底を図ること。
回答: 納付金事業の説明会、ハローワークによる達成指導のときパンフレットを配布している。

(イ) 全雇用期間に対して、職場介助者(非事務職)を適用すること。
回答: この事業は雇い入れ促進の制度である。納付金の効率的活用を図るため、企業内でのノウハウの構築、体制の整備によって定着が図られるまでの一定期間まで助成するもので、それを過ぎたら事業主の負担でサポートすることとなっている。
[解雇された視覚障害者対策]
要求5. 病院マッサージ師(あはき師)や電話交換手など解雇された視覚障害者に対する雇用対策を立て、再就職支援の他、ヘルスキーパーや事務的職種など新たな職域を開拓し、再就職のための支援を行ってください。
回答: 障害者解雇届けの提出、ハローワークによる求人開拓、職業指導、事例集や雇用マニュアルの活用により行っている。
[助成金の申請手続]
要求6. 障害者雇用納付金制度に基づく助成金及び障害者雇用継続助成金に基づく助成金の申請手続を簡素化してください。並びに、都道府県協会において、申請手続を熟知するよう指導し、申請に係る手続を丁寧に助言するようにしてください。
回答: 職安の意見書を求めることを廃止。支給請求書の記載事項の一部をあらかじめ印刷しておく「レプリント方式」を採用することとした。今後も簡素化を行う。
[雇用関係書の点字化等]
要求7. 雇用関係の図書・資料(例えば障害者雇用ガイドブック、障害者職域拡大等研究調査報告書、障害者雇用マニュアル、障害者職域拡大マニュアル及び障害者雇用管理等講習資料シリーズなど)のうち、点字化、テキストファイル化等がされて視覚障害者が読むことができる状態になっているもののリストをお知らせください。また現在点字化等がされていないものについて要望があった場合どのように対応するかお答えください。
回答: 高齢・障害者雇用支援機構のホームページにいくつか掲載されている。要望があれば個別に対応する。新しく作る視覚障害者関係のマニュアルはテキストまたはPDFにする。古いものも更新のときテキストまたはPDFにする。
雇用連:PDFファイルは例え読めたとしても画像や表は音声化できないため非常に困難。表などレイアウトの複雑なものは読み上げ用のタグを埋め込むことができるので、そのようなことも含めて画面読み上げソフトで読める形式にしてほしい。
[IT機器の訪問指導]
要求8. 視覚障害者が働く職場に訪問して、パソコン等のIT機器の操作について専門的に指導する制度を実施してください。また、昨年の要望の際、民間企業の取り組みも含めて調べると回答していただきましたので、これまでの検討結果についてお知らせください。
訪問指導の必要な理由を以下に示します。

(ア)現在、社内ネットワークへのスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)によるアクセスが困難なケースが多い状況です。見ることのみを前提としたグラフィックの多い画面であることに加え、セキュリティ等の観点から高度な技術が使われていてマウスを使わずキーボードのみを使用した操作をするには卓越した指導員による操作法の研究が必要です。そのことはネットワークに接続可能な社内でしかできません。
(イ) 視覚障害者が他の社員と文書をやりとりする場合、パソコンによるファイルの授受が重要な役割を果たします。その場合、図表が多かったり、レイアウトが複雑だったりする文書だと音声で(テキスト部分も含めて)読み上げないことがあります。同僚や上司にも視覚障害者のパソコン利用について理解してもらう必要があるため、社内での指導が必要です。
(ウ)マウスを使わない操作には限界があるので、視覚障害者が担当する業務内容を調べ、それに必要な技術を集中的に学習する必要があります。単に一般的なコンピュータ操作の学習のみならず業務分析が必要なので、指導員が出張してコーディネートする必要があります。
(エ)(ア)〜(ウ)を実施する中から、周囲の人が視覚に障害があってもパソコンを使えば仕事の幅を広げることができることに気づくということもあるでしょう。それによってこれまで以上に担当できる業務内容が広がる可能性があります。

回答: ジョブコーチが有効。ジョブコーチは障害者を指導するだけでなく、職場のキーパーソンに情報提供を行ったり、仕事の手順を見直したりできるしくみになっている。専門知識が必要なら雇用管理サポートとして専門家を登録することができる。
雇用連:(補足意見として)、米国のリハビリテーション法第508条の考え方を取り入れ、職場のIT機器はだれでも使えるものにしなければならないということを制度化する必要がある。助言だけでなく実務対応型の研修制度を作ってほしい。
[中途視覚障害者対策]
要求9. 中途視覚障害者が解雇されたり、不安定雇用にならないよう、「障害者差別禁止法」(仮称)を制定するとともに、能力開発のためのリハビリ(例えば歩行訓練や音声パソコン操作の習得など)を保障する制度を創設し、その間の所得を保証してください。
回答: わが国とアメリカでは紛争処理に対する文化的背景が違うので(差別禁止法が)日本になじむかという問題がある。
[公務員である視覚障害者の職場介助者]
要求10. 民間に模範を示す意味からも公務員である視覚障害者への職場介助者制度を創設してください。
回答:

人事院の担当なのでそちらに言ってほしい。厚労省としては各省庁に障害者の積極的採用について文書を出していて、職場環境改善も要請している。
雇用連:次のような意見を述べた。
・視覚障害公務員についても、職場介助者制度が切実に求められている。現行では制度化されていないため、採用された後、本来の能力を発揮できず、お客様的な存在となっている人、回覧物を読んでもらえず、情報から置き去りにされている人、見えないのに資料のコピーをしなければならず表裏の状況が分からず苦労している人など、気の毒なケースが少なからずある。
・視覚障害公務員の実態を調査、把握し、改善策を講じて欲しい。民間企業並の配慮をすべきではないか。特に中途視覚障害者の場合、リハビリテーションについて、事業主からほとんど協力がなく、本人任せというのが実態。研修や能力開発についても同様。事業主に協力義務を課し、働き続けられるよう、リハビリテーション、研修・能力開発の機会が保障されるようにしてほしい。

[視覚障害者担当相談員の配置]
要求11. 視覚障害者の職場定着・安定のために、特定の職業安定所に視覚障害者の雇用を専門に担当する相談員を配置してください。
回答: 最近様々な障害の人が求職している。障害別でなく個々のニーズを把握するため、障害別ではなく、障害者専門支援員を設置。これは非常勤職員である。
雇用連:これまでも相談員は知識がないだけでなく、視覚障害者だと聞いただけで「仕事ないよ」というそっけない対応をされた例がある。専門員の研修をやっているのか。
[介護保険導入下のマッサージ師]
要求12. 都道府県労働局職業安定部長宛「視覚障害者の雇用の促進について」の通達について、各都道府県の取り組みを教えてください。
回答: 平成15年に日本障害者雇用促進協会で「福祉施設における視覚障害者の雇用促進のための障害者雇用マニュアル」を作成し各労働局に通知した。マニュアルの活用については各事業所に対する雇用管掌の他、昨年度老人保健施設にアンケートを実施し、障害保健福祉部と調整して老人保健施設の研修セミナーでマニュアルを配布した。なおマニュアルは現在改定中。
要求13. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、短期入所生活介護、通所介護における機能訓練指導員は、視覚障害者に適職と考えます。今後の介護保険見直し時に、機能訓練指導員加算を増額してください。 
回答: 機能訓練指導員加算は据え置きとなった。介護報酬全体はマイナス5%、特に在宅についてはマイナス1%の減額で、そのなかでの据え置きということなのでご理解いただきたい。

この件についてつぎのようなやり取りがあった。
雇用連:建設予定の特養など現場にマニュアルが行くようにしてほしい。
回答: 労働局から都道府県庁の福祉関係のところに周知することは考えられる。
雇用連:機能訓練指導員を看護職員が兼務して加算をもらっていない施設がある。兼務規定をはずさないとなんでもやらされて記録をとる業務まで付加されると、視覚障害者の雇用は難しくなるのではないか。
雇用連:まず全盲はだめということになるだろう。
雇用連:ケアプラン以外に立てることになっている機能訓練計画について他の職種と共同してつくることになると機能訓練指導員は何をすることになるのか。
回答: 今までの業務に加えて意見を求められたとき関わることと、ケースカンファレンスへの参加。
雇用連:ケアプランと別に計画を立てろという意味がわからない。
回答:(新しい制度になっても)そういったことをきちんとやっている施設にとっては何も変わりがない。
雇用連:現実には事務量が増える。
雇用連:重要なことがわかったので今後も話し合いましょう。理学療法士がのびて視覚障害者の仕事が奪われた二の舞にはしてほしくない。

以上




雇用連第14回総会開催される

第14回総会が2005年11月6日、東京都障害者福祉会館において開催されました。以下、その概要を報告します。

2年間の活動については、何といっても「職場介助者制度の適用期間が現行10年間から5年間延長される」という大きな成果を勝ち取ったことが注目されます。この実現には、厚労省交渉の他、啓発用リーフレットの作成と配布、国会請願署名行動の取り組み、衆参の厚生労働委員会で取り上げてもらう取り組み、マスコミへの取材申し入れ等の多面的活動を展開したことによる成果という点を確認しました。また、視覚障害者雇用促進に係わる助成制度の現状や、指定管理者制度など、視覚障害者の就労と直接関連のあるテーマで講演会や学習会を企画したことを評価する意見もありました。

今後の雇用連としての具体的運動の課題として、(1)重度視覚障害者(点字使用者)の雇用促進。(2)特定身体障害者の雇用率制度の遵守と同制度の普及(具体的にはあん摩・マッサージ・指圧師が想定される)。(3)介護施設へのマッサージ師の雇用促進と雇用維持の3点を確認しました。

新しい役員体制(敬称略)

○会長: 田中章治
○副会長: 篠島永一、東郷 進
○事務局長: 伊藤慶昭
○事務局次長:  乗松利幸
○幹事:  稲垣 実、下堂薗 保、田中和夫、西原清松
○会計監査:  高橋秀治
○相談役:  橋本宗明、馬渡藤雄



人事院に対する要望事項について

1. はじめに

病気休暇は、いつでもだれでも容易に認められるものと考えがちですが、実は、それが然に非ずで、「治る見込みのある病気」に限られると聞いたら、だれでも驚くことだろうと思います。【人事院規則第18条。文末参照】

この規定にある「療養」の言葉のお陰で、治る見込みのない疾病を有する多くの視覚障害者が歩行訓練や、コミュニケーション訓練など、いわゆる生活訓練を受けようとして病気休暇申請をした場合、「療養」に該当しないという理由で、承認されません。

仮に何らかの診断書を書いてもらい、病気休暇の承認を受けてこれらの訓練を受けている事実が雇用者側に見つかってしまった場合、病気治療のための「療養専念の義務」に違反するとして、その休暇承認は直ちに取り消されてしまいます。

なぜ、このような理不尽とも思える現実が発生しているかという要因は、その根拠が「療養」の定義にあります。つまり、療養とは、病気を治すための「医療行為」を受けるという定義があるからですが、その療養行為とは診療報酬の対象になっている疾病ということで、みなさんご承知のとおり、毎年のように診療報酬の単価引き下げなどと政治問題化しているように診療報酬の対象になっていないものは該当しないということであります。よって、治る見込みのない疾病は医療行為に該当しないからということで、病気休暇を付与できないという理屈につながり、治療法のない疾病患者が仕事を遂行するために受けようとするリハビリテーション訓練はまさに、対象外になるというわけです。

換言すれば、現行法の運用には、再生不可能な視覚機能を補助するための生活訓練とか、職業訓練などという概念はまったく存在しないというわけです。端的に言えば、行政側に時代感覚のズレがあるということですが、これでは失われた視覚機能を補うIT機器を活用しながら仕事を遂行しようとする可能性が阻害されているばかりでなく、視覚障害者の働く権利が踏みにじまれているものでもあると言えると思います。

そもそも、療養とは、一日も早く職場に復帰して元気に働いてほしいという理念が含まれていることが類推されることから働ける現実を無視するような運用は視覚障害リハビリテーションの有用性が高まっている今日、行政側の対応の怠慢と言わざるを得ません。

2. 経緯

このような観点から、2005年11月6日に開催された雇用連シンポジウムにおいて、この時代にマッチしない「療養」の定義の範囲の拡大の要求を他にもいろいろある要望事項の中の一つに加え、まず、公務員を先行的に解決すれば民間企業への波及は必至との見通しから、人事院に対して要望書を提出し、交渉することになりました。

その「要望事項」は、
「国家公務員である職員が在職中、疾病のため視覚障害を有するようになった場合、日常生活能力の向上及び労働能力向上のための視覚障害リハビリテーションを病気休暇により容易に受けられるようにしてください。

なお、万一できない場合、その根拠をお示しください。」という内容です。

3. 口頭回答

この内容に対して、2005年12月12日に人事院において交渉を行った結果、同局職員福祉課植村課長補佐から、関係機関との調整もあるが人事院の立場としては次のようになるだろうとの口頭回答が出されました。

回答 「国家公務員の病気休暇の要件は規則に定められている通りである。社会復帰のためのリハビリであっても医療行為として時間内に行われれば認められる。その際、医師の診断が必要である。視覚障害が治るかどうかは無関係である。周知徹底方法については、どういう内容でやるか、持ち帰って検討する。」というものでした。

4. 現状と課題

あくまでも文書による回答と、各省庁への周知徹底が大原則ですが、この口頭回答には、「視覚障害が治るかどうかは無関係である。」と、一歩踏み込んだ見解が見られていますが、しかし、「社会復帰のためのリハビリであっても医療行為として」という、あくまでも「医療行為として」という条件がついております。この裏側には、厚生労働省に関わる「診療報酬」の問題点が壁になっていることが推測されるところです。人事院は厚生労働省に意見照会をしているとのことですが、厚生労働省から未だに回答がきていないというのが現状であります。

5. 今後の対応策

人事院は、交渉の席でも、その後の電話での進捗状況の問い合わせに対して、むやみに文書回答を遅らせたり、あるいは回答をしないようなことはしないと明言しているので、当面回答を待ち続けることとして、なんとか、視覚障害リハビリテーションが医療行為として認められるように要求をし続けることになりますが、最悪、これがうまくいかないような情勢になった場合、「視覚障害が治るかどうかは無関係である。」ということを最大限に活かした方策を練り出し、現状よりも前進させるように対処するとともに、民間企業にも同様の扱いを拡げるようにしていかなければならないと考えております。

<根拠条文>
(病気休暇)
第18条 病気休暇は、職員が負傷又は疾病のため療養する必要があり、その勤務しないことがやむを得ないと認められる場合における休暇とする。

以上(レポート、下堂薗 保)




介護保険制度における機能訓練指導員についての動向

特別養護老人ホームの機能訓練指導員
稲垣 実

4月の介護保険の見直しで、介護予防サービスにおける運動器の機能向上という新しいサービスにマッサージ師を入れてほしいという要望が叶いました。通所介護(デイサービス)では、マッサージ師が機能訓練指導員として個別機能訓練加算と介護予防の運動器の機能向上の両方ができるようになりました。また、東京都社会福祉協議会作成の民間社会福祉施設モデル給料表にマッサージ師を職種として入れるようにという要望が、17年度から取り入れられるようになりました。

一方では、機能訓練加算が個別機能訓練加算に次の通り変わりました。

・改正前

専ら機能訓練指導員の職務に従事する常勤の理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師(以下この注において「理学療法士等」という。)を1名以上配置しているものとして都道府県知事に届け出た指定介護老人福祉施設については、1日につき12単位を所定単位に加算する。

・改正

専ら機能訓練指導員の職務に従事する常勤の理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師(以下この注において「理学療法士等」という。)を1名以上配置しているものとして都道府県知事に届け出た指定介護老人福祉施設において、機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活指導員、その他の職種のものが共同して、入所者ごとに個別機能訓練計画を作成し、当該計画に基づき計画的に機能訓練を行っている場合には、個別機能訓練加算を1日につき12単位を所定単位に加算する。

これは、今まで機能訓練指導員を配置していれば加算がもらえた(体制加算)が、体制を整えたうえで多職種の職員と共同で利用者全員の個別機能訓練計画を立て、利用者または家族から同意書をもらい計画的に実施しなければならないようになったということです。今回の見直しにより職場では、視覚障害者には読み書きが大量に増え、「訓練を実施した人数しか加算できない」と誤解を招くような厚生労働省の対応もあり、とても混乱しています。

本来機能訓練指導員は、配置基準に入っているのですが、相談員や栄養士と異なり他職種が兼務できることになっているのです。ですから加算をもらうために常勤が配置され、その加算が人件費になっているわけです。見直しについては現在も大勢の仲間から相談を受けています。このようなことから今後視覚障害者マッサージ師が職場にいづらい状況になる恐れがあります。

厚労省は、制度や政策を作る時に障害者が多数働いていることを考えないのでしょうか。厚労省の障害者雇用関係の部署では、視覚障害者の適職と位置づけ機能訓練指導員の雇用マニュアルを作り職業安定所などに通知を出すなど雇用拡大に力を入れている、一方同じ省庁の介護保険関係の部署で視覚障害者が働けない状況にしているわけです。

厚労省自らバリアフリーの意味を理解してほしいものです。

介護保険の施設の介護報酬が抑えられ、経営の効率化を促進して行くなかで、東京都の視覚障害者マッサージ師に対する補助金事業のような制度が必要なのではないかと考えます。




障害を持つ医師として

茨城  大里晃弘

欠格条項の相対化に基づく医師国家試験の受験、そして今から1年あまり前に合格した。免許の交付も不確かなものだったが、支援する友人達からの応援もあり、昨年9月に医師免許が交付された。初期研修の場所をどこにするか決まらずに困っていたところ、出身大学の同窓会や同窓生からの協力もあり、昨年末の12月から筑波大学付属病院の精神科で研修を始めることができた。もう6箇月目である。またこれとは別に、本年1月からは民間病院の精神科のパートとして働いている。時期を前後して二つの別な場所で仕事をしているわけで、盲人として雇用される際の条件整備を両者で並行して進めて行かねばならず、物心両面において苦労が要る。しかも私もすでに51歳をかぞえ、若い頃のようなパワーはとうに無い。頭髪もずいぶん少なくなった。それでも、残った気力と体力をふり絞って、病院に出かける。

大学病院は敷地が広い。大学病院にお願いしたのは、介助者である。移動と情報が一般の職場でも中心的な課題であるが、病院での私の活動においても、事情は変わらない。精神科医局が介助者の準備をしてくれたのだが、彼女は医療従事者ではなかった。主に移動の面をサポートしてもらう。問題は診療の現場での書類の読み書きだ。患者さんの個人情報の保護の面から、彼女が介入できるエリアは狭い。ナースやワーカーも含めた医療従事者が私の情報面でのサポートをするには何の問題もないが、現行の医局内の体制では困難とのこと。一部の例外はあるが、病院のシステムのなかで私がそのなかに組み込まれていないのが実状であり、その解決策を先生方と模索しているが、決め手はまだない。

これに比べると、民間病院では、対応が柔軟だ。私は主に入院病棟を担当しているが、病棟のナースがカルテを読んでくれたり、書類の作成時も細かくサポートしてもらっている。多分、ここでの問題は、他の先生方と同様の範囲まで自分の仕事を拡げることができるか、ということだろう。当直をどうするか、また外部から依頼される診断書などの作成がどこまで可能か。ボチボチ書類の依頼が出始めており、ナースや事務の職員達と相談しながら対応して行かねば、と考えている。書式がある程度緩やかなもの、紹介状などはパソコンでもかなりできそうなので、なるべくPCでできるものを準備しておくこと、自分で書式を作れるものは作っておくこと。こちらの病院では、自分のできることとできないことのバランスが自分なりに納得できている。もちろん、すべてにおいてパーフェクトではないが、自分なりに道を開くことが実感できるような気がする。

私の医師としての道程は、必ずしも運動や団体と有機的にリンクしたものではなかったように思う。欠格条項への取り組みについても、多くの障害者と団体が関わっただろうが、私の運動の中に入れることはできなかった。また国試合格後についても、あまり有効に動いたとは言い切れない。今後、視覚障害を持つ医師や医療従事者の中で、交流を持ちながら、自分達なりの運動ができれば、と願っている。




2005年10月1日から実施されている職場介助者制度の概要

みなさまのご支援により、雇用連は昨年秋、画期的な成果を勝ち取りました。即ち、重度障害者のための職場介助者制度の摘要期間が、10年から更に5年間延長されました。

概略を紹介しますのでご活用ください。

* 表は、番号 項目 補助率 補助額の順。( )内は、はじめの10年間。

事務的業務に従事する視覚障害者、四肢機能障害者の介助者
(1) 配置の場合 ・・・ 3分の2(4分の3) 月額13万円(月額15万円)
(2) 委嘱の場合 ・・・ 3分の2(4分の3) 委嘱1回につき9千円、ただし年間135万円限度(委嘱1回につき1万円、年間150万円限度)




在宅就業障害者に対する支援

平成18年4月に障害者雇用促進法が改正され、以下のような制度ができました。
在宅就業障害者(自宅等において就業する障害者)に仕事を発注する企業に対して、障害者雇用納付金制度において、特例調整金・特例報奨金を支給します。

企業が在宅就業支援団体(在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣に申請し、登録を受けた法人)を介して在宅就業障害者に仕事を発注する場合にも、特例調整金・特例報奨金を支給します。

※ 特例調整金等の支給事務は、障害者雇用納付金、障害者雇用調整金等と同様、高齢・障害者雇用支援機構において取り扱います。

登録要件
在宅就業障害者に対して、就業機会の確保・提供の他、職業講習、就職支援等の援助を行っている法人であること。
常時10人以上の在宅就業障害者に対して継続的に支援を行うこと。
障害者の在宅就業に関して知識及び経験を有する3人以上の者を置くこと(うち1人は専任の管理者とすること)。
在宅就業支援を行うために必要な施設及び設備を有すること。

※ 初回の登録には登録免許税の納付が必要です。



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