雇用連情報 第50号

発行 全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行責任者 田中章治


連絡先 田中章治(会長)
〒334-0071 埼玉県川口市安行慈林645-4
電話 048-285-9935
電子メール koyourenアットマークnpo-jp.net
URL http://www.koyouren.npo-jp.net
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郵便振替 00150-4-67809(加入者名)全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行日 2004年 6月1日


(この情報誌は活字版(標準サイズ)、点字版、テープ版、フロッピーディスク版、電子メール版(雇用連メーリングリストで配信)で製作されています。必要な方はご連絡ください。)



目次

まえがき
厚生労働省交渉報告
第13回雇用連定期総会とシンポジウムが開催されました
違法マッサージ求人問題で事務連絡
診療報酬改訂
機能訓練指導員の現状と課題
私の職場
(短信)新刊本発刊のご案内


まえがき

少し間が開いてしまいましたが、『雇用連情報』第50号をお送りします。今回も資料性の高い内容となっております。

なお、会員のみなさまには「会報」を随時発行していることもあり、PRと情報提供を目的とした本誌については年1回程度の発行となるかもしれませんのでご了承ください。

(伊藤 記)




厚生労働省交渉報告

昨年12月8日、厚生労働省交渉が行われました。

厚労省側の出席者は障害者雇用対策課 坪井、障害者雇用対策課障害者雇用専門官 工藤、障害者雇用対策課調整係 伊藤、障害者雇用対策課 宮寺、障害者雇用対策課 五十嵐、統計情報部社会統計課 河合、同課 木杉、職業能力開発課の方の以上8名。(敬称略)
以下、要求項目ごとに回答と関連質疑を交えご報告します。

2003年12月8日
厚生労働大臣
坂口力 様
全国視覚障害者雇用促進連絡会
会長 田中 章治

厚生労働省への要求

<雇用の促進及び安定>
要求1. 国・地方公共団体は、特定身体障害者(視覚障害3級以下)に適用される特定職種(あん摩マッサージ指圧師)特定身体障害者雇用率100分の70を達成するため、法にもとづく採用計画を作成し、すみやかに達成すること。また、同雇用率の達成が努力義務となっている民間企業に対しては、達成のための指導を強化し、必要に応じて雇い入れに関する計画の作成を命じること。
回答: 身体障害者の雇用率の達成の指導ということでご要望をいただいておりますが、毎年6月1日、現在の障害者の方の雇用状況の報告を民間企業及び官公庁の方から求めております。民間企業では「障害者雇用状況報告」、官公庁では「障害者任命状況通報」というものを求めているところですけれども、その際に合わせて特定身体障害者の方の雇用状況について報告をさせているところです。国または地方公共団体の機関で特定身体障害者の雇用率未達成の機関につきましてはこの雇用率を達成するように特定身体障害者の採用計画を策定させ、計画期間の中で雇用率を達成するべく指導を行っているところでございます。また民間企業につきましても現在、特定身体障害者雇用率は努力義務となっているところでございますが、国または地方公共団体と同じように基本的に未達成の企業につきましては雇い入れ計画を策定させまして計画期間の中で達成を行うべく、ハローワーク及び都道府県労働局の方で指導を行っているところでございます。
質疑 雇用 特定身体障害者雇用率、人数は?

厚生 平成14年度で60.58%、安定所調査で1,291人です。

雇用 事業所の数は?

厚生 抽出で174事業所です。

雇用 平成13年度は55.1%ですから少し増加していますか。

厚生 ええ、そうです。
要求2. 報奨金制度については、保健医療機関の場合、その支給要件を緩和すること。
回答: 報奨金制度につきましては常用労働者が300人以下の中小企業の事業主の方について経済的負担能力の上から当分の間、障害者雇用納付金月額5万円になっておりますが、これを徴収しない。またその負担の軽減を図ることを目的として当分の間は報奨金を支給することというのが制度の趣旨となっております。報奨金につきましては納付金を納付しない事業主の方に支給するということがございまして、特に障害者の方を多数雇用する事業主の方、現在では常用労働者の4%、または6人のいずれか多い方の数を超えるものに対して業種を限定することなく支給するという形をとっております。したがいまして保険医療機関に限って支給要件を緩和するということについては調整金あるいは報奨金の制度の趣旨から現時点では難しいと考えております。報奨金につきましては平成16年度から支給される15年度支給分から一人あたり月額1万7千円から2万1千円に引き上げられます。
質疑 雇用 個人の整形医や治療院開業の事業主が5人以上、視覚障害者を雇用するのは難しい。

厚生 理解はできるが、難しい。
要求3. 職場介助者制度について次の改善をおこなうこと。
(ア) 職場介助者制度(非事務職)を知らない保健医療機関である事業主が多く、また、視覚障害者が職場介助者の委嘱を希望しても事業主が消極的な事例があるので、保健医療機関への周知徹底を図ること。
回答: 職場介助者制度についての助成金は障害者雇用納付金制度にもとづく助成金ですが、この助成金は現在、高齢・障害者雇用支援機構において支給事務を行っております。この「機構」が中心となってパンフレット・リーフレットを作成して各地方協会であるとか、公共職業安定所等で配布したり、いろいろな事業主の会議で配布したりして周知に努めております。特にこの「機構」では企業の担当者に対して納付金事業の説明会のおりに説明したり、安定所でも障害者雇用率の達成指導の実施の際に周知するなどしております。今後とも助成金制度については、周知を行って参ります。また今回、日本障害者雇用促進協会から、高齢・障害者雇用支援機構になる際にパンフレットも改訂いたしまして、今まで1冊になっていたのがその助成金ごとにパンフレットを作るなどいろいろやっております。

(イ) 全雇用期間にたいして、職場介助者(非事務職)を適用すること。
回答: 職場介助者の配置または委嘱に関わる助成金は障害者の雇用の継続を図る観点から支給期間を延長し、現行10年間を限度とするということになったわけです。障害者雇用納付金を財源としておりまして、納付金会計の障害者雇用に伴う事業主間の経済的負担の調整という性格が大前提としてありまして、他の助成措置との均衡を考慮すると、この助成金のみの助成期間を全雇用期間に拡大することは非常に困難と考えております。
障害者の就職に当たって公共職業安定所あるいは障害者職業センターにおいて就職後における助言援助を行うとともに、事業主に対して作業環境の整備や障害者雇用に対する助言等を行うことによって、障害者を受け入れて働ける環境作りを作っていきたいと考えております。
質疑 雇用 職場介助者制度の延長をお願いしたい。
最初3年、次いで7年、10年となったわけで、これが12年13年になってもかまわないでしょう?

厚生 現段階では困難である。

雇用 視覚障害者の実態を調査していただけないか?

厚生 「・・・・・。」

(ウ) 職場介助者(非事務職)の「24回以内」の回数を増やすこと。また、「1回1万円以内、年24回」を「年間24万円以内、回数制限なし」と改めること。
回答: 日本障害者雇用促進協会が2003年10月から独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に変わったのを契機として助成金制度を整理合理化するとともにより活用しやすい助成金を交付していこうということで見直しをはかりました。その結果ご要望をいただいておりました「年間24万円以内、回数制限なし」ということで改めたわけでございます。今後ともより活用しやすい助成金制度にしていきたいと考えております。
要求4. 公共職業安定所の求人票のうち、あん摩マッサージ指圧師のそれには、「免許があればなおよい」「有免許者優遇」「無免許者も可」など、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)第1条違反を助長する内容のものが横行しています。これは、「公共職業安定所は、いかなる求人の申込も、これを受理しなければならない。但し、その申込の内容が法令に違反するとき、又はその申込の内容をなす賃金、労働時間その他の労働条件が、通常の労働条件と比べて、著しく不適当であると認めるときは、その申込を受理しないことができる。」に抵触すると思われます。またこの求人票による職業斡旋は、「公共職業安定所は、いかなる求職の申込についても、これを受理しなければならない。但し、その申込の内容が法令に違反するときは、その申込を受理しないことができる。」に抵触するものと思われます。このようなことのないようにしてください。
回答: 安定所における求人票の件なんですが、「医師以外のものであんまマッサージ指圧はり、きゅうを行おうとしようとするものは、それぞれあマ指免許、はり師免許、きゅう師免許を受けなければならない」と法律に明記されております。そのため職務内容があん摩マッサージ指圧、はり、きゅうを行うことを想定している場合には必要な免許資格等求人票の欄に該当免許が記載されていることが必須となります。これらの職務に関していらないという形はあり得ず、実際にあん摩マッサージ等を行うことはできません。「あん摩マッサージ指圧師見習い」という求人は法律違反であり受理しないとしております。なお理容・美容師と同様に室内清掃等の補助業務を行うものについては、これを行う場合には職種のところに「○○業務補助従業員」等の名称を用いて仕事の内容欄も求人受理の窓口において違法な点がないかどうか見直して、これに見合ったものになるように指導を行っているところです。何がマッサージ等の行為に当たるかにつきまして求人者もしくは求職者の方からお問い合わせをいただいている場合には各事例を解釈することは各保健所に問い合わせることとしております。平成14年の夏頃に全国の労働局職業安定課宛に文書として発信しております。
要求5. 病院マッサージ師(あはき師)や電話交換手など解雇された視覚障害者に対する雇用対策をたて、再就職支援のほか、ヘルスキーパーや事務的職種など新たな職域を開拓し、再就職のための支援を行ってください。
回答: 視覚障害者に限らず再就職に向けてハローワークを中心として再就職の支援を行っているところですが、職域につきましてはこれまでにも電話交換者、プログラマー、ヘルスキーパーなど職域を広げるために様々な周知方法を行ってきております。近年ではケアワーカー、福祉施設の機能訓練指導員について積極的に周知を図り視覚障害者の雇用促進に資するよう努めてきたところです。特に福祉施設の機能訓練指導員につきましては各労働局の方にもパンフレット等、通知を流しておりまして、そちらの方でさらに有効に活用していただければと思っております。
<助成金の申請手続き>
要求6. 障害者雇用納付金制度に基づく助成金及び障害者雇用継続助成金に基づく助成金の申請手続を簡素化してください。並びに、都道府県協会において、申請手続を熟知するよう指導し、及び申請に係る手続を丁寧に助言するようにしてください。
回答: 各種助成金の申請の受付については現在申請書を窓口で受け付ける方式でやっておりますが、電子化(IT化)が進んでおりますので、今電子媒体による申請とか、オンラインによる申請について検討をしているところです。これによる簡素化を図ろうと考えております。また申請書類につきましてはこれまでにも簡素化の話と不正受給防止の両方の兼ね合いで配慮しながら書類の改正や添付書類の見直しなどを皆さんや事業主の方の意見を踏まえてはかっているところです。今回10月1日から一部の障害者雇用にかかる助成金については事業主が助成金申請時に提出することが用件であった公共職業安定所長の「意見書」を廃止したところです。助成金の申請基準については先ほど申しましたパンフレットだとか、高齢・障害者雇用支援機構のホームページにおいてできるだけわかりやすく記載することにし、トラブルなくできるように明確化に努めているところです。また都道府県協会における申請手続きの指導につきましては高齢・障害者雇用支援機構では都道府県協会の担当者が制度の内容を熟知できるよう、また申請事業主に対して適切な助言を行えるよう助成金の取り扱いに関する会議を開催いたしております。ここで各協会の事務処理状況の把握に努めるとともに必要な指導を行っております。また厚生労働省におきましても都道府県労働局の全国会議の場などを活用して各都道府県協会の窓口の応接等について助言を行う等、適切な業務に努めるよう効果的な指導をお願いしております。いずれにしましても都道府県協会が適切な申請手続きが行えるよういろいろな場で指導していきたいと考えております。
<雇用関係書の点字化等>
要求7. (ア)「障害者雇用ガイドブック」を電子化(点字版及びテキスト版)にしてください。
回答: 障害者雇用ガイドブックの電子化につきましては正式には障害者職業生活相談員講習あるいは障害者雇用推進者講習のテキストとして活用しているものです。出版しているところが、印刷した際に市販していいですよということになっています。雇用支援機構としてはテキストとしてしか活用していないものです。このためそれぞれの講習の受講者からテキスト版の要望があればこれに応えるためCDROM版を用意しておりますが、このCDROM版を広く配布するような形はとれておりません。作成の数も100部程度準備しております。基本的には市販されているものですので、冊子自体を受講者以外に差し上げるというのは、どういうふうになるのかちょっと整理しなければなりません。ただし、テキストで視覚障害その他の障害の方で電子媒体でほしいという場合にはご要望に応えられるようCDROM版を用意しております。

(イ)障害者の雇用関係資料である、障害者職域拡大等研究調査報告書、障害者雇用マニュアル、障害者職域拡大マニュアル及び障害者雇用管理等講習資料シリーズで、すでに電子データ化(点字版及びテキスト版)されたもののリストを教えてください。
回答: 研究調査報告書、雇用マニュアル等につきましては事業主等に対する周知啓発を目的として配布されているものですが、ご要望があれば一般にも無料で配布させていただいております。テキストの状態でも保管されておりますが、情報量がかなりのものになるため現在のところホームページ等には載せておりません。個別の要望に応える形で提供させていただきたいと考えております。点字版につきましても個別に点字版がほしいという方がいらっしゃった場合には点訳の上、配布をさせていただいております。ただし、先ほどの「障害者雇用ガイドブック」につきましてはかなりの分量になりますので点訳等は部分的には可能ではございますが、全体の点訳というのは計画しておりません。電子媒体の一覧につきましては後でお渡しします
<IT機器の訪問指導>
要求8. 視覚障害者が働く職場に訪問して、パソコン等のIT機器の操作について専門的に指導する制度を実施してください。訪問指導の必要な理由を以下に示します。
(ア) 現在社内ネットワークへのスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)によるアクセスが困難なケースが多い状況です。見ることのみを前提としたグラフィックの多い画面であることに加え、セキュリティ等の観点から高度な技術が使われていてマウスを使わずキーボードのみを使用した操作をするには卓越した指導員による操作法の研究が必要です。そのことはネットワークに接続可能な社内でしかできません。
(イ) 視覚障害者が他の社員と文書をやりとりする場合、パソコンによるファイルの授受が重要な役割を果たします。その場合図表が多かったりレイアウトが複雑だったりする文書だと音声で(テキスト部分も含めて)読み上げないことがあります。同僚や上司にも視覚障害者のパソコン利用について理解してもらう必要があるため、社内での指導が必要です。
(ウ) マウスを使わない操作には限界があるので、視覚障害者が担当する業務内容を調べ、それに必要な技術を集中的に学習する必要があります。単にコンピュータ操作の学習のみならず業務分析が必要なので、指導員が出張してコーディネートする必要があります。
(エ) (ア)〜(ウ)を実施する中から、周囲の人が視覚障害があってもパソコンを使えば仕事の幅を広げることができることに気づくということもあるでしょう。
それによってこれまで以上に担当できる業務内容が広がる可能性があります。
回答: 現在のパソコンがGUIグラフィックを使ったものになるため、若干視覚障害の方々には使いにくいことは理解できます。新たな職場に入り込む場合であれば、(ア)にあげられている専門的な技術知識よりも、職場の理解向上という(イ)にあげられているものというのが最大の要因になるのではないかと考えられます。このような場合には職場適応援助者による支援が有効と思われます。ジョブコーチは1ヶ月から3ヶ月程度職場を訪問し、障害者が職場に適応しやすいように障害者への指導、職場のキーパーソンなどに情報提供を行い職務内容あるいは作業手順の見直しなども行うことが可能です。通常そのような職場に入る場合には障害者も職場の方々もうまく適応できるか不安に思っているはずですので、作業の状況及び作業遂行上の課題を十分に把握し対応を検討することができます。また具体的な機器操作などある程度専門的な知識等が必要な場合には、雇用管理サポートとして派遣するのがよいでしょう。これは雇用支援機構の障害者雇用情報センターに登録されている専門家が企業等に派遣されて障害者の雇用管理等に関するアドバイスをするという制度です。内容は医師や弁護士、それから障害者雇用の経験のある企業の社長とか指導の経験を有する施設の指導員とか職業能力開発校の指導員など様々な方が登録されております。この中に適当な方が登録されていない場合には新たに登録して派遣することも可能です。ただし、この雇用管理サポートは企業の行う雇用管理のお手伝いという意味合いが強いために企業が専門家の派遣が必要であると考えていることが前提となります。就職の際であればジョブコーチなどキーパーソンを通じてさらに専門家の必要性などを訴えていくことが可能だと思います。また就職後しばらくたってから新たな職務に適応する必要が生じた場合でも企業と障害者の要望があればジョブコーチ、雇用管理サポート等の専門家の派遣は可能です。詳細につきましてはお近くの公共職業安定所や障害者職業センターなどにお問い合わせいただければと思います。
<中途視覚障害者対策>
要求9. 中途視覚障害者が解雇されたり、不安定雇用にならないよう、「障害者差別禁止法」(仮称)を制定するとともに、中途障害リハビリ期間中の所得補償等を実施してください。
回答: 「障害者差別禁止法」自体どのようなことを想定しているか疑問があります。
アメリカのいわゆるADA、アメリカが持っている差別禁止法というものがありますが、こちらをみていきますと最終的には裁判によって障害者差別に関わる紛争を解決していく、それによって紛争処理をしています。我が国とアメリカとでは紛争処理の考え方が、文化的、社会的背景が違っていましてアメリカの仕組みがなじむのかどうかという問題がそもそもあります。具体的に雇用の分野でみていきますと障害者が救済措置を求める、これをするために障害者自らが告発する必要があるという仕組みになっておりまして、通常かなりの時間と労力を要するということがありまして障害者の負担が大きくなってしまいます。さらに重度の障害者に関していうと採用の対象となる有資格障害者「いわゆるそういう観念があるわけなんですが」としての能力が不足しているというふうに判断されますと、実質的に排除されてしまうという現状があります。こうなりますと重度障害者の雇用促進を図るということが実質困難となってしまいます。というようなこともありまして現段階では様々な問題があると認識しております。従いまして我が国において障害者の雇用を進めるためにはADAのような差別法制をとるよりも現行の障害者雇用促進の法制度をとる方がよいと現在考えております。また障害者の雇用の促進等に関する法律におきましては障害者の雇用の促進、安定を図ることが規定されております。
中途障害者の方の雇用を継続するため作業施設の整備、職場適応の措置を講じるよう障害者雇用継続助成金を支給いたしております。
<公務員である視覚障害者の職場介助者>
要求10. かつて労働省は、公務員である視覚障害者の職場介助者の配置について、人事院と相談することを約束しましたが、この件について、その後の経過を教えてください。
回答: 国家公務員の点字による採用試験が実施されたのが1991(平成3)年度からです。これについていろいろ資料を読んでみますと皆さん方の「雇用連の20年史」というものも読ませていただいたんですが、公務員の点字試験の実施ということについては皆さん方が随分いろんな形で努力されてきたということに、私自身も中途失明者ですので個人的にも敬意を表したいと思います。その結果97(平成9)年度に初めて第2種の国家公務員試験の合格者がでて、我が行政に採用されております。採用されてもう6年以上経つわけですが、現在のところ非常に順調に仕事をされておられるようです。転勤も今年の4月にされております。介助者の制度化については残念ながら制度化するということにはなっておりません。いろいろな機会を捉えながら人事院とも相談しながら連絡会議等で視覚障害者に対する職場介助のあり方だとか配慮のあり方だとかそういうことについて理解を求めてきております。実際合格者がでたそのころなんですが、各省庁から人を集めた場で民間企業で働いている全盲の方の体験を話していただいた、そういう機会を持ったりしております。
<視覚障害者担当相談員の配置>
要求11. 視覚障害者の職場定着・安定のために、特定の職業安定所に視覚障害者の雇用を専門に担当する相談員を配置してください。
回答: 厚生労働省といたしましては公共職業安定所の障害者の就職等の支援、職場定着等きめ細かな相談を図っていくために専門援助部門もしくは特別援助部門という窓口を設置しております。その窓口の中に就職促進指導官とか身体障害者担当の職業相談員を配置しておりまして、視覚障害者の方を含む身体障害者全体としての職業の相談、職場定着についての支援を行わせていただいております。要望いただいております視覚障害者のための専門的な相談員の配置ということにつきましては現状の中では困難と考えております。先ほど申しました就職促進指導官及び身体障害者担当の職業相談員の資質向上のために随時研修等を行う中で視覚障害者に関わる研修等を行い資質の向上に努めているところです。
<作業施設設置等助成金>
要求12. 障害者雇用納付金制度に基づく助成金である作業施設設置等助成金について、視覚障害者のみがマッサージ事業所を運営している場合において、視覚障害者の金銭授受に伴うトラブルを回避し、領収書を発行することができる機能を付加した「自動販売機」を、助成金の支給対象にしてください。
回答: 障害者作業施設設置等助成金につきましては、障害者が作業を遂行するために使用するもの、これを整備する場合に助成対象としているところです。現実の機器につきましては雇い入れ、または継続して雇用している障害者の方が活用するものに限って原則一人1台という形をとらせていただいております。従って要望のありました自動発券機につきましてはお客様の利便性を考えて、障害者の方が直接使用する機械ではないという形になりますので、現在は助成対象としては困難と考えております。
<介護保険導入下のマッサージ師>
要求13. 介護保険制度における介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、全国でいくつ施設はありますか。その人員配置の中で機能訓練指導員は何人いて、その資格要件の一つである、あん摩マッサージ指圧師は何人ですか。また、視覚障害者は何人いますか。
回答: 平成14年の「介護サービス施設事業所調査」の結果に基づいて回答させていただきます。平成14年10月1日、現在の全国の数となります。まず介護老人施設の数ですが4,870施設、この介護老人施設に勤務する機能訓練指導員の数は5,051人、このうち柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師という把握になりますが647人というふうになっております。なおこちらの調査ではご質問の中にありました視覚障害者の数につきましては把握しておりません。
要求14. 都道府県労働局職業安定部長あて「視覚障害者の雇用の促進について」の通達について、各都道府県の取り組みを教えてください。
回答: この通達につきましては、今年の8月下旬に出したものです。それと同時に旧日障協が作成した「福祉施設における視覚障害者の雇用の促進」というパンフレットをそれと併せて都道府県に通知し周知をはかり「雇用の促進を図ってください」というものでした。8月下旬から9月にかけて配布した状況でして、現時点ではまだ各都道府県の取り組みなど統計的にはとっておりません。もちろん今後状況把握の上、たとえば好取り組み例などをまとめてそれを各都道府県にバックするというような取り組みなどをやる必要があるなあ、と個人的に考えております。これについても今後、取り組んでいきたいと考えております。都道府県安定所にはこの周知を継続的にやっていただくことはもちろんです。
要求15. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、短期入所生活介護、通所介護における機能訓練指導員は、視覚障害者に適職と考えます。今後の介護保険見直し時に、機能訓練指導員加算を廃止しないでください。
回答:
介護報酬は3年に1度見直しが行われておりまして、本年4月に初めて改訂が行われております。その際、機能訓練指導員の財政加算につきましては変更なしと従前通り設定されておりまして、現在のところ変更する予定はございません。以降の介護報酬の見直しにつきましては社会保障審議会介護保険分科会におきまして議論していただくことになります。
<マッサージ関連診療報酬>
要求16. 直近年度の社会医療診療行為別調査(平成13年6月審査分)における、「消炎鎮痛等処置」項目の「イ マッサージ等の手技による療法」、「ロ 器具等による療法」及び「ハ 湿布処置」のそれぞれについて、診療行為別回数・点数を教えてください。
回答: 平成13年6月審査分の調査結果につきましては診療報酬点数表の消炎鎮痛処置として報告書に搭載しておりまして、消炎鎮痛処置については回数が768万4858回、2億7898万1971点です。



第13回雇用連定期総会とシンポジウムが開催されました

雇用連(全国視覚障害者雇用促進連絡会)の第13回定期総会とシンポジウムが去る12月7日、東京の港区立勤労福祉会館において開催されました。参加者は、約40名でした。以下、当日の内容を簡単に報告します。

総会では、2年間の活動について報告があり、会員数が122名(12月1日現在)と若干増えたことが報告されました。活動面では、宮崎県の誠心ウルスラ学院の窪田先生を支援する「点字・墨字対訳ジャンボはがき」を送る運動に取り組んだことが特筆されます。毎年、実施している厚生労働省交渉では、この間、あはき師の職安での違法な求人票を受理しないよう通達を出させたこと、非事務的職種の職場介助者の委嘱について「年間24万円以内、回数制限なし」と改善されたこと。障害者雇用に関する研究調査報告書や障害者雇用マニュアル等について「要望があれば無料で配布できる」との解答を得たことは大きな成果でした。運動方針の中では、今後、盲学校や職業訓練施設などと連携し、雇用促進運動のあり方について研究していくことが確認されました。

最後に新役員の提案があり、全員留任の形で承認されました。新役員は、次の通り。なお、敬称は略させていただきます。


○会長: 田中章治
○副会長: 東郷進、篠島永一
○事務局長: 伊藤慶昭
○事務局次長: 乗松利幸
○幹事: 稲垣実、小日向光夫、田中和夫、西原清松
○会計監査: 高橋秀治
○相談役: 橋本宗明、馬渡藤雄

同日の午後は、講演とシンポジウムが開催されました。

まず、厚生労働省障害者雇用専門官五十嵐意和保氏から「障害者の雇用の現状と施策について」と題する講演がありました。続いて、「視覚障害者の就労を進めるために」をテーマにシンポジウムを行いました。シンポジストとして、長岡英司さん(筑波技術短大教授)、荒川明宏さん(株式会社ラビット代表)、木村志義さん(ジョイ・コンサルティング代表)の3名の方々にお願いしました。

シンポジウムを通して、「インターネット上で仕事をするようになったが、新たにグラフィカルな画像データの処理ということが課題となっている」、「情報リテラシーの向上ということが大切で、そのための職場研修の保証を要求すべきだ」、「求職活動に当たっては、明確な方向性や目的を持っている方が評価が高くなる」などが参加者の共通理解となりました。

[以上]




違法マッサージ求人問題で事務連絡

全国病院マッサージ問題連絡会(病マ連)の提起を受けて雇用連が改善を求めてきた「違法マッサージ求人問題」で、02年11月19日付で事務連絡が出されたことが、9月の厚生労働省交渉の中で明らかになりました。

ハローワークの求人票には、「必要な経験・免許資格等」欄が用意されています。マッサージ師を募集する求人票であるのに、ここに、「免許不問」「無資格者も可」「経験者ならなおいい」などと書かれているものが全国的に受理されていることについて、00年以来、職業安定局にこの是正を求めてきました。

求人については、職業安定法の第5条の5に、「求人の申込みはすべて受理しなければならないが、その申込みの内容が法令に違反するときには受理しないことができる」とあり、求職も同様に、第5条の6に「求職の申込みはすべて受理しなければならないが、その申込みの内容が法令に違反するときは、受理しないことができる」とあります。

今回の事務連絡は、厚生労働省が、ハローワークの職業紹介担当者にあてて、マッサージ師の求人票の記載について法に基づく適正な実施を求めたものです。今後とも、事務連絡に反して違法な求人が受理されないよう監視を弛めないことが大切です。

平成14年11月19日・事務連絡

各労働局職業安定課職業紹介担当官 殿

厚生労働省職業安定局業務指導課職業紹介係

あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうに係る求人票の記載について

さて、平成14年度全国職業安定主管庁職業紹介関係担当補佐・係長会議において申しあげましたとおり、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうに係る求人票の記載について、関係者団体より法に基づいた適切な取り扱いを行うよう要請があり、今般、下記のように取りまとめましたので、今後はこれに則り求人者・求職者の方への周知・指導に努めて頂きますよう、お願い申しあげます。

医師以外の者で、あん摩マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうを業としようとする者は、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」(昭和22年12月20日法律第217号)において、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゅう師免許を受けなければならないと明記されている。

このため、職務内容が「あん摩マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうを行う」ことを明らかに想定している場合は、「必要な経験・免許資格等」欄に該当免許が記載されていることが必須である。また、これらの職務については、「見習」という形で、実際にあん摩マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうを行うこともできないので、「あん摩マッサージ指圧師見習(無免許)」という求人は法律違反であり、受理できない。

なお、理容・美容師と同様に、室内清掃、処置室の準備等の補助業務を行うものについては、免許のない者を募集することができるが、この場合は、「〜補助業務従業員」等の名称を用い、仕事の内容欄も違法な点がないか見直し、法令に見合ったものとなるよう修正させる等の指導を行い、求人者及び求職者に誤解のないよう取り計らうこと。

なお、求人者及び求職者より、さらに詳細な法令解釈に関する説明を求められた場合は、各保健所に問い合わせるよう指導すること。




診療報酬改訂

新しい診療報酬がこの4月1日から実施されます。雇用連は、視覚障害者の多数が従事している病院マッサージ師の雇用に関心を寄せ、「マッサージ診療報酬の適正な引き上げを求める署名」(国会請願)に協力してきました。

診療報酬は、公的医療保険から支払われる医療費の単価で本体と薬価で構成されます。今回の改訂は、本体の伸びはプラスマイナスゼロ、薬価は1%の削減となります。

マッサージ師に関連する部分についての改訂は次の通り、リハビリテーションや処置については、やや雑点になりました。(1点は、10円。1単位は、20分の治療。)

理学療法・作業療法・言語聴覚療法の「集団療法」のそれぞれについて、「患者1人につき、1日2単位、1月8単位上限」は変わりませんが、但し書き、「急性発症した脳血管疾患で、発症後180日以内は、1日2単位・1月12単位を上限とする」が加わりました。
言語聴覚療法に、施設基準のT、Uに加えてVが新設されました。(個別療法1単位100点、集団療法1単位40点)
整形外科等で行われる「介達牽引」(バンド等を装着して首や腰を牽引する療法)が、「消炎鎮痛等処置」からはずれて、独立項目(35点)として復活しました。
「消炎鎮痛等処置」(マッサージ等の手技による療法)、「消炎鎮痛等処置」(電気・温熱等の器具による療法)は、それぞれ今回も据え置かれ、21年間35点のままとなりました。
「介達牽引」「消炎鎮痛等処置」(電気・温熱等の器具による療法、湿布処置)を併せて月5回目からは、18点とすることは変わりませんが、但し書き、「急性発症した脳血管疾患で、発症後180日以内は、月7回目から18点とする」が加わりました。

雇用連も加盟する「保険で良い病院マッサージを署名推進連絡会」は、今通常国会に請願署名を提出しています。今後ともご協力をお願いします。




機能訓練指導員の現状と課題

昨年12月の雇用連の厚生労働省交渉において、平成14年10月現在調べで全国に特別養護老人ホームが4,800施設あり、機能訓練加算を取っているのが2,639施設あり、そのうち機能訓練指導員を柔道整復師・あんま、マッサージ、指圧師が460人採用されていることが報告された。この数字から推測すると視覚障害者マッサージ師数は、東京都の約150人を考えると、東京都以外は、あまり雇用が進んでいない状況であることが分かる。

一方、厚生労働省から出された「福祉施設における視覚障害者の雇用促進のための雇用マニュアル」に機能訓練指導員が取り上げられた。8月には、各都道府県労働局職業安定長あてに出された課長通達は「視覚障害者の雇用について」で、雇用促進マニュアルを活用し、特別養護老人ホームの機能訓練指導員の採用、職域の拡大を図るなど雇用促進に努めることとした内容である。今までにない具体的な通達で一定の評価をあたえたい。

私達は、実効あるものにするため2月に東京にある中央労働局と東京都社会福祉協議会に雇用促進のための施策の実施を要請した。

しかし、3月に、東京都内の特別養護老人ホームで身体障害者職場定着相談員が職場訪問し、経営者の立場に立ってしまった面談があった。それは、経営者と本人が同席し「全盲だから仕事は半人前だ」「給料を下げたい」などという経営者の発言に同調するような発言「仕事を探してみよう」と職場定着相談員とは思えない問題がありました。強く抗議を行いました。この職安の管内は、昭和45年頃から特別養護老人ホームが多くあり視覚障害者マッサージ師が雇用されている地域です。職安の担当は、通達のことも知らず、職場定着相談員は、視覚障害者雇用の現状を知らないというありさまでした。職安の担当は、雇用促進を図ることが、現在雇用されている者の解雇の抑止になることを忘れないでほしい。

今年は、介護保険制度の全体的見直しがあります。特別養護老人ホームがどうなるのか、機能訓練加算がどうなるのか。また、東京都では、補助金(経営支援事業)も見直しが予想されます。




私の職場 点字印刷共同作業所

雑草の会 内田邦子

私の職場は、点字印刷を仕事としているところです。創立から約25年くらいで私は入所して12年くらいになります。場所は、荒川区で、全視協(全日本資格障害者協議会)を知っている方なら元一緒にいたので「ああ」と思われるかもしれません。都電荒川線が走り、その向こうには隅田川が流れています。

雑草の会の特徴として、理事が「視覚障害者の雇用と点字の出版」を目的で集まり、理事と作業所で働く人とで構成されています。

一緒に働く人は視覚障害者4〜5人、健常者は2〜3人くらいでなんとか細々と運営しています。仕事の中身は点字の出版、印刷、カセットテープのダビングなどです。その中で私の仕事は、見積りから掃除にいたるまで様々です。健常者もこういった小さな作業所では校正の読みあわせから金銭の出し入れ、機械の調整にいたるまで、様々な仕事が要求されます。入所した当時は給料計算も音声電卓で何時間もかかって計算したのを思い出します。今ではパソコンが4台入り、機械もずいぶん多くなりました。

点字の仕事は工程がいろいろあって、それも手作業が多く、入稿から発送まで10段階くらいあります。入稿、入力、読み合わせ、校正、製版、校正、印刷、点検、製本、発送などです。入力も健常者に読んでもらったり、最近ではデータでの入稿が増え、点字変換ソフトでのデータ作りが多くなっています。表など難解なこともありますが、やらせてもらえるのは幸せなことです。そのほかにも視覚障害者の作業所ということで手紙や決算書、見積りの計算なども視覚障害者がやっています。最近では、昨年導入したレーザープリンターで名刺の普通字と点字の印刷ができるようになりました。でも仕事の面ではなかなか厳しいものがあり、営業マンがいないのが難点です。でもいろいろな人が仕事を紹介してくれたり、頼んでくれたりそんな善意の中で運営できていると思っています。

「雑草へくると仕事を頼まれてしまう、こき使われる」など言われながらも花見や大きい仕事の後の打ち上げは、楽しくやっています。




<短信> 新刊本発刊のご案内

「タートルの会」(中途視覚障害者の復職を考える会)では、昨年12月9日(障害者の日)に『中途失明〜それでも朝はくる〜』(1997/12発行)につづく図書を出版しました。

視覚障害者の雇用を進めていく上で、壁とされている「何ができるのか」の理解を深めてもらうために事務的職種の働く事例を数多く示しています。雇用率を達成しようと努める企業が障害者雇用を進めるうえで、なぜか視覚障害者は敬遠されます。

それは視覚障害者の理解が不足しているために、「目が見えないと何もできない」という先入観があるからです。この先入観を取り除く最適な本といえます。

書名: 「中途失明U〜陽はまた昇る〜」
価格(税込み): 墨字本 1,200円、FD/CD 1,000円、墨字&FD/CD 1,700円
問合せ先: (株)大活字 tel:03-5282-4361
http://www.daikatsuji.co.jp/
タートルの会事務局 tel:03-3351-3208
http://www.turtle.gr.jp/