雇用連情報 第49号

発行 全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行責任者 田中章治


連絡先 田中章治(会長)
〒334-0071 埼玉県川口市安行慈林645-4
電話 048-285-9935
電子メール koyourenアットマークnpo-jp.net
URL http://www.koyouren.npo-jp.net
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郵便振替 00150-4-67809(加入者名)全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行日 2003年 7月1日


(この情報誌は活字版(標準サイズ)、点字版、テープ版、フロッピーディスク版、電子メール版(雇用連メーリングリストで配信)で製作されています。必要な方はご連絡ください。)



目次

まえがき
厚生労働省交渉報告
特別養護老人ホームマッサージ師の雇用についてのあらたな課題
ケアマネジャーと視覚障害者
平成13年度理療科関係卒業生進路状況
第11回あはき師試験結果一覧
教員採用試験受験勉強体験記
短信



まえがき

お待たせしました。『雇用連情報』第49号をお届けします。

2002年6月10日に「手をつなごう集会」に雇用連も参加したのですが、その報告については、タイミング的に本誌に掲載することができず「会報」で行うのみになってしまったことをお詫びいたします。

今回は資料的価値のある記事が中心となっております。読むのがしんどい方もいらっしゃるかもしれませんがご了承ください。

(伊藤 記)




厚生労働省交渉報告

昨年12月9日、厚生労働省交渉が行われました。 以下、要求項目ごとに回答と関連質疑を交えご報告します。

2002年12月10日
厚生労働大臣
坂口力 様
全国視覚障害者雇用促進連絡会
会長 田中 章治

厚生労働省への要求

 
〈雇用の促進及び安定〉
要求1. 国・地方公共団体は、特定身体障害者(視覚障害3級以下)に適用される特定職種(あん摩マッサージ指圧師)特定身体障害者雇用率100分の70を達成するため、法にもとづく採用計画を作成し、すみやかに達成すること。また、同雇用率の達成が努力義務となっている民間企業に対しては、達成のための指導を強化し、必要に応じて雇い入れに関する計画の作成を命じること。
回答: 1番、特定職種に従事する特定身体障害者の雇用状況につきましては、毎年6月1日現在の障害者の雇用状況に報告されている「障害者雇用状況報告」に合わせまして雇用状況を把握しております。国または地方公共団体の機関で特定身体障害者雇用率未達成の機関に対しましては、雇用率を達成するよう指導しております。また雇用率達成が努力義務になっていることにつきましては、これを以って雇用率が達成されないよう、また必要に応じ「雇用計画書」を作成させ指導を行っております。
質疑 雇用 特定身体障害者雇用率、人数は?

厚生 平成13年度で55.1%、安定所調査で1322人です。

雇用 事業所の数は?

厚生 抽出で188事業所です。

雇用 どういう処理、免許の数か、機能訓練士を配置する事業主もあるが?

厚生 あん摩師等法に基づく免許の数である。

雇用 免許を持っていて他の仕事をしている場合は対象か?

厚生 その仕事をしていなければ対象ではない。

雇用 あん摩マッサージ指圧師という業務になっていれば問題はない。「機能訓練士」という名前で法の適用を免れようとする事業所がある。そこのところはどうなっているか?

厚生 法の適用外であれば現行では適用としていない。

雇用 「機能訓練士」として登録し適用事業主からはずれる所がある。そのことが視覚障害のあん摩マッサージ指圧師の解雇につながっている。またそのような事例が多数ある。悪質なものは解雇直前に職種変更と称して「機能訓練士」となり解雇された事例もある。理解してほしい。

厚生 現行では難しい。事業主に問題があり、自治体を通じ周知徹底し、是正を図りたい。実態があるということで認識した。

要求2. 報奨金制度については、保健医療機関の場合、その支給要件を緩和すること。
回答: 2番、保健医療機関に限り支給要件の緩和については、報奨金支給制度の主旨から難しい。

要求3. 職場介助者制度について次の改善をおこなうこと。
(ア) 職場介助者制度(非事務職)を知らない保健医療機関である事業主が多く、また、視覚障害者が職場介助者の委嘱を希望しても事業主が消極的な事例があるので、保健医療機関への周知徹底をはかること。
回答: 3番(ア)、重度障害者介助等助成金をはじめとして、雇用納付金制度に基づく助成金につきましては厚生労働省の関係団体であります日本障害者雇用促進協会等で支給事務を行っておりますが、当協会においてパンフレットを作成しまして都道府県の各地方協会及び公共職業安定所で配布しているところであります。
また、日本障害者雇用促進協会では企業の担当者に対して障害者雇用納付金事業の説明会開催の際によく周知させ、また、公共職業安定所においても企業の方に対し障害者雇用率達成指導の際に周知するなど行っておりますが、今後とも当該助成金につきましては周知徹底を図ってまいります。


(イ) 全雇用期間にたいして、職場介助者(非事務職)を適用すること。
回答: 3番(イ)、障害者雇用納付金会計等をみながら徐々に延長してきた。本助成金は障害者雇用納付金会計の財源としているものですので、障害者雇用に伴う雇用主間の経済的負担を軽減することがその主旨になっていますので、他の助成金との均衡を考えますと本助成金のみを全雇用期間に拡大することは難しいと考えている。障害者の方の就職に当たっては、公共職業安定所ですとか障害者職業センターにおいて就職後においても安定を図るためにいろいろ助言をしており、そういったことを通じまして給付期限が過ぎた後も安定して雇用が図られるよう環境づくりに協力し、また助言等も行っていきたいと思います。
質疑 雇用 10年たったからといって目が見えるようになるわけではない。職場介助者制度の延長をお願いしたい。現在利用者の数は?

厚生 平成13年度で5923人です。

雇用 視覚障害者は?

厚生 100〜200人。

雇用 最初3年、次いで7年、10年となったわけで、これが12年13年になってもかまわないでしょう?。

厚生 現段階では全く検討していない。

雇用 視覚障害者の実態を調査していただけないか?

厚生 「・・・・・。」


(ウ) 職場介助者(非事務職)の「24回以内」の回数を増やすこと。また、「1回1万円以内、年24回」を「年間24万円以内、回数制限なし」と改めること。
回答: 3番(ウ)、この助成金は平成9年4月に行った「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正に基づき、助成金の大幅な改正の際に事務的業務の方以外にも適用となった経緯があります。回数無制限というのは助成金の事務管理の面でなかなか難しいと思うが、また他の助成金との整合性もあり難しい面もあるが、回数をふやす事については介助の実状をふまえて検討していきたい。
今後とも内容をふまえて障害者の方の雇用拡大に努めていきたい。
質疑 雇用 もう少し踏み込んで答えてほしい。

厚生 確定ではないが、要望の方向で検討している。

要求4. 公共職業安定所の求人票のうち、あん摩マッサージ指圧師のそれには、「免許があればなおよい」「有免許者優遇」「無免許者も可」など、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)第1条違反を助長する 内容のものが横行しています。これは、「公共職業安定所は、いかなる求人の申込も、これを受理しなければならない。但し、その申込の内容が法令に違反するとき、又はその申込の内容をなす賃金、労働時間その他の労働条件が、通常の労働条件と比べて、著しく不適当であると認めるときは、その申込を受理しないことができる。」に抵触すると思われます。またこの求人票による職業斡旋は、「公共職業安定所は、いかなる求職の申込についても、これを受理しなければならない。但し、その申込の内容が法令に違反するときは、その申込を受理しないことができる。」に抵触するものと思われます。このようなことのないようにしてください。
回答: 4番、厚生労働省としては「医師以外のものであってあん摩、マッサージ、指圧またははり、きゅうを業とするものは、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許、きゅう師免許を有しなければならない」と明記されており、このため職務内容があん摩、マッサージ、指圧またははり、きゅうを行うことを想定している場合は、必要な経験免許、資格等欄に当該免許資格等が記載されていることが義務づけられております。また、これらの職務については見習いという形で実際にあん摩、マッサージ、指圧、または、はり、きゅうを行うこともできないので「あん摩マッサージ指圧師見習い(無免許)」というような求人は法律違反であり受理できないものと考えております。なお、理容、美容師と同様に室内清掃及び処置室等準備の補助業務を行うものについては、免許のないものも募集できますがこの場合は「○○補助業務従業員」等の名称を用いていただいて「仕事の内容」欄にも支障がないかどうか確認し法令に見合ったものになるよう修正させる等の指導を行って、求人・求職者に誤解のないよう取り計らっております。また、求人・求職者に法令解釈に説明を求められたときは各県庁に問い合わせるよう指導しております。6月に行われた「全国職業所主幹職業紹介改訂調査係長会議」においても指導を徹底させ、また11月にはそういった通達を各安定所に出して指導しているところであります。
質疑 雇用 よくやっているが、実態を認識してほしい。

厚生 個別の問題であり、法に基づいているかどうかしか判断できない。

雇用 法の解釈の問題で、医政局が同席しないといけないのか?

要求5. 病院マッサージ師(あはき師)や電話交換手など解雇された視覚障害者に対する雇用対策をたて、再就職支援のほか、ヘルスキーパーや事務的職種など新たな職域を開拓し、再就職のための支援を行ってください。
回答: 5番、きびしい雇用状況が続いておりますが、平成13年度、14年度公共職業安定所届けで障害者解雇者数が前年に比べて約60%増加している。従来に比べ、特に、再就職の方の雇用の維持、安定が難しくなっている。厚生労働省としてはこういった雇用情勢に対応するために東京都職業安定所に支援窓口を置いて障害者雇用支援対策を指示したところである。また視覚障害のある方については、職域が限定されていることもあり、日本障害者雇用促進協会において雇用拡大の検討を行っているところで、さらに今後活用が期待される視覚障害者用ソフトの開発を行って、職域拡大に努めたい。また、現在リーフレットも作成中である。
質疑 雇用 雇用拡大の研究とは何か?

厚生 晴眼者と視覚障害者において「あはき」を業とする場合のどういう形態、差があるのか、その中で視覚障害者特有の問題は何か、その結果どういう政策が必要か、実態を調査して、どういう支援が考えられるのかといった研究と聞いている。

雇用 着目はいいと思う。視覚障害者の就労は「あはき」がほとんどで、その実態をみてほしい。

雇用 安定所に設けられた緊急雇用窓口とは何か?

厚生 求職者対象のもので、東京と大阪に設けられた。解雇者が多いので在職中からの相談、やむなく離職された方に設けられたものである。

雇用 PRはどうしているのか?

厚生 11月より発足したもので、財源も人も限られており、やれるところから実施しており、順次PRしていく。PR不足であれば努力したい、また実施している職安は飯田橋職安が行っていると思う。補正予算、15年度予算において全国に拡大できるよう要求している。

要求6. (助成金の申請手続き)
障害者雇用納付金制度に基づく助成金及び障害者雇用継続助成金に基づく助成金の申請手続を簡素化してください。並びに、都道府県協会において、申請手続を熟知するよう指導し、及び申請に係る手続を丁寧に助言するようにしてください。
回答: 6番、各種助成金の申請につきましては各都道府県協会の方で取り扱っていますが、現在電子媒体やオンラインによる申請・事務手続きが行えるよう検討している。また申請書類等につきましては、これまでにも不正支給防止の観点に配慮しつつ様式書類の改訂、添付書類の見直し等事業主等の意見をふまえ簡素化に努めている。さらに、支給基準につきましては、パンフレットやインターネット上の雇用促進協会のホームページ上に可能な限り正確かつ詳細に載せ、その明確化に努めている。今般、厚生労働省のホームページ上にも掲載する方向で検討している。
また、都道府県協会の問題については日障協の担当者会議の方で対応していきたい。また、厚生労働省としましても都道府県労働局の全国会議の場で都道府県窓口で控えめになることのないよう効果的な指導をお願いしている。いずれにしましてもご指摘を受けた点につきましては真摯に受け止め各種会議の場で指示していきたい。

要求7. (雇用関係書の点字化等)
(ア)「障害者雇用ガイドブック」を電子化(点字版及びテキスト版)にしてください。
回答: 7番(ア)、本年度予算で日本障害者雇用促進協会の方で電子データ化を進めている。

(イ)障害者の雇用関係資料である、障害者職域拡大等研究調査報告書、障害者雇用マニュアル、障害者職域拡大マニュアル及び障害者雇用管理等講習資料シリーズで、すでに電子データ化(点字版及びテキスト版)されたもののリストを教えてください。
回答: 7番(イ)、一部テキストデータとして保存されている。後ほどお渡しする。

要求8. (IT機器の訪問指導)
視覚障害者が働く職場に訪問して、パソコン等のIT機器の操作について専門的に指導する制度を実施してください。また、そのような訓練機関はいくつありますか。
回答: 8番、現在のところ訪問という形はない。視覚障害者専門の訓練校も3カ所であるが、本年度の予算で各訓練校にも音声機器等を導入し視覚障害の方に対応していきたい。
質疑 雇用 就労している方のIT講習はないのか?

厚生 職場に出向いて指導を行うのは人員上難しい。ただ、通所の困難な方、高齢者の方に本年度より検討している。

雇用 盲人には使えないでしょう? 他の障害との均衡といい、いいことは全部均衡といい押さえられ、欠落するときは全部視覚障害者で全然均衡ではありませんよ。視覚障害者の場合IT環境が変われば使えないのですよ。

厚生 障害者法の中で可能な限り対応していきたい。

要求9. (中途視覚障害者対策)
中途視覚障害者が解雇されたり、不安定雇用にならないよう、「障害者差別禁止法」(仮称)を制定するとともに、中途障害リハビリ期間中の所得補償等を実施してください。
回答: 9番、障害者を解雇禁止する法律はないが「障害者の雇用の促進等に関する法律」においてその雇用する身体障害者または知的障害者の方が法定雇用率以上であるようにしなければならない雇用率制度を設けている。障害者の雇用促進・安定を図る事も含め法律で定めている。また、障害者の再就職が難しいことに鑑みて事業主の方が障害者の方を解雇する場合にはその旨をすみやかに公共職業安定所に届け出ることになっており、それによって公共職業安定所はあらかじめその方の適した求人の開拓や職業指導を行い対応している。さらに中途視覚障害者になった方の雇用を継続するということで、作業施設設備の設置ですとか職場適応といった措置を実施した事業主に対しまして「障害者雇用継続助成金」を支給しているところである。障害を理由にして解雇することのないように雇用継続を図っております。

要求10. (公務員である視覚障害者の職場介助者)
かつて労働省は、公務員である視覚障害者の職場介助者の配置について、人事院と相談することを約束しましたが、この件について、その後の経過を教えてください。
回答: 10番、重度障害者職場介助者等助成金は納付金会計上請求という事で、民間の事業主から徴収しているお金を財源としているので、国・地方公共団体につきましては民間事業主と同一のレベルでの原資はなじまない。納付金制度の適用除外になっている。今ある助成金という形で公務員の方を対象に支給するということは難しい。なお各官公庁に対し障害者を継続雇用するための職場環境の改善、施設のチェック等を働きかけるよう要望している。平成3年度から国家公務員の採用試験が点字で実施されていて、特に、平成9年度の受験者から合格者が出たとか、視覚障害者の働く環境整備について人事院と相談し、また各省庁との連絡会議の場でも理解を求めるように努めてきた。今後とも各機会を活用しながら視覚障害者の働く環境とか支援のあり方について適宜、業務上の相談には各省庁に広報したり、理解を求めていきたい。

要求11. (視覚障害者担当相談員の配置)
視覚障害者の職場定着・安定のために、特定の職業安定所に視覚障害者の雇用を専門に担当する相談員を配置してください。
回答: 11番、公共職業安定所に身体障害者を担当する相談員を配置し、視覚障害者の方についても身体障害者職業相談員の方が対応している。今回、特に視覚障害者を専門に担当する相談員を配置するということは他の障害もありなかなか難しい。

要求12. (作業施設設置等助成金)
障害者雇用納付金制度に基づく助成金である作業施設設置等助成金について、視覚障害者のみがマッサージ事業所を運営している場合において、視覚障害者の金銭授受に伴うトラブルを回避し、領収書を発行することができる機能を付加した「自動販売機」を、助成金の支給対象にしてください。
回答: 12番、作業施設設置等助成金は原則として改良された部分について助成されるものであって、一般的に便利な作業効率の高い機械等は一定に障害を克服し作業効率を高めるとは認められず助成の対象とはしていない。また、助成される機器等は継続雇用される障害者の方が専ら使用するものに限られ、原則として一人1台と限られる。したがって今回の質問の機器はお客様の利便性を考え、お客様が直接使用する機器であることから障害を克服するための機器とは判断できないので助成対象には難しい。

要求13. (介護保険導入下のマッサージ師)
介護保険制度における介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、全国でいくつありますか。その人員配置の中で機能訓練指導員は何人いて、その資格要件の一つである、あん摩マッサージ指圧師は何人ですか。また、視覚障害者は何人いますか。
回答: 13番、機能訓練指導員という形ではなくその職種で、平成13年度で4651施設で柔整師とあん摩マッサージ指圧師をあわせ常勤で418名、非常勤につきましては40名が配置されている。そのうち視覚障害者は何人いるかということですが、わからないとのこと。
質疑 雇用 なぜ機能訓練指導員の数がわからないのか?

厚生 統計上、看護士が機能訓練指導員なのか介護職員なのか分けることができないからである。

要求14. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、短期入所生活介護、通所介護における機能訓練指導員は、視覚障害者に適職と考えます。機能訓練指導員について、障害者雇用が拡大するような施策を行ってください。
回答: 14番、5番の回答と重複するがリーフレットを作成し、適職であることを事業主や職安を通じ普及していきたい。
質疑 雇用 全体を通じて厚生労働省では規制緩和と機会均等というが機会均等という考えでは視覚障害者の雇用が進むのか?何か特別な計らいが必要ではないのか?

厚生 「・・・・・」





特別養護老人ホームマッサージ師の雇用についてのあらたな課題

稲垣 実

特別養護老人ホームの視覚障害者マッサージ師については、以前より状況報告や問題提起をしてきました。

東京都には、視覚障害者マッサージ師に対する補助金について、厚生労働省には、雇用連として、介護保険制度における視覚障害者マッサージ師の雇用の安定と雇用促進対策などについて交渉を行ってきました。

その結果、東京都は、介護保険制度移行にともなう特別養護老人ホーム経営支援事業として補助金を出してきました。3年後の見直しの年である今年については、継続するが、毎年見直しの対象となりました。

厚生労働省では、交渉要望の一つであった特別養護老人ホーム視覚障害者マッサージ師雇用促進マニュアルが、3月に作成されました。このマニュアルは[福祉施設における視覚障害者の雇用促進]というタイトルです。内容は、特別養護老人ホームマッサージ師の仕事内容が紹介され、また、経営者が視覚障害者を雇用する時のQ&Aや雇用した場合の支援制度などについて掲載されています。

経営者のためのマニュアルであり、全国で4800ヶ所ある特別養護老人ホームなどにどのように配布するのか、就労に結びつけるにはどのように活用すると効果的か、職安をはじめ盲学校や視覚障害者の就労に携わる人達が、知恵を出し合い視覚障害者の雇用拡大につなぐことができるかが課題となっています。

今後、介護保険を取り巻く状況は、視覚障害者に不利なことばかりです。

例えば、「経済特区」による企業の経営参入、公設施設の民間移譲にともなう経営者の入札、障害者雇用率における知的障害者との関係など問題は山積となっています。




ケアマネジャーと視覚障害者

(株)新世紀ケアサービス 介護支援専門員
中村 幹夫

T. 初めに

2000年4月の介護保険制度実施を前に、1998年10月から介護支援専門員(ケアマネジャー)の実務研修受講試験が始まりました。5年(900日)以上の経験を有するあん摩マッサージ指圧師にも、その受験資格が与えられ、視覚障害者のための点字、拡大文字による試験も実施されています。

2002年に実施された第5回試験までの合格者266,681人の内に、3,501人(1.3%)のあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が含まれています。1999年の第2回試験までの視覚障害者の合格者は、115名と言われています。

こうして、視覚障害者の新たな職種として期待されたケアマネジャーの仕事ですが、利用者宅へ赴いての認定調査、アセスメント、モニタリングには、大きなハンディが予想されました。

2001年7月、日本障害者雇用促進協会は、多くの視覚障害者が介護支援専門員の資格を取得しながら、事業主への周知不足のために雇用が進んでいない実態を改善するために、コミック版1 障害者雇用マニュアル「視覚障害者と働く==視覚障害のある介護支援専門員の雇用促進のために」というカラーのA4判パンフレットを作成しました。このパンフレットでは、都内のヘルパーステーション及び特養に勤める2人の視覚障害ケアマネジャーが紹介されました。 しかし、その後も状況は、大きく変わっていないようです。

今回は、現状を総轄するとともに、今後の展望について考えてみたいと思います。

U. 視覚障害ケアマネジャーの現状

私は、2000年4月の介護保険実施とともに、金沢市の「新世紀ケアサービス」という小さな民間事業者に勤めることとなりました。ハローワークに求職登録していた結果です。 物好きな法人代表者に拾われたと言ってもいいでしょう。

この事業者には、ケアプラン作成に当たる「居宅介護支援」部門と、利用者にサービスを提供する「訪問介護」部門とがあります。 私は、職場介助者制度を利用し、居宅介護支援部の選任ケアマネジャーとして働いています。 上田憲三さんは、長崎県島原市の社会福祉法人瑠璃光会(るりこうかい)でケアマネジャーを行いながら、同法人のデイサービスセンター宝生園(ほうしょうえん)で機能訓練指導員に従事しています。

私と上田さんは、インターネットの「介護機器メーリングリスト」で知り合いました。 晴眼者中心のメーリングリストで、思いも掛けず視覚障害者と出会ったのも一つの感激でした。

山梨では、何人かの視覚障害者がケアマネジャーとして働いています。 その内、長沢真さんは、治療院経営の傍ら、居宅介護支援事業所 どんぐりクラブに所属し、週2回非常勤でケアマネジャーの業務に従事しています。10人の利用者を受け持ち、給付管理等は、家族の協力で行われています。 資料は、山梨ライトハウスのボランティアに点訳依頼されることが多いようです。 私たち3人は、全盲です。 このほか、大分県で、デイサービスと居宅介護支援事業所を運営し、自らもケアプランを作製されている全盲の方もいらっしゃるようです。

介護事業者として都道府県の指定を受けるには、法人資格が必要です。鍼・灸・マッサージ業者が介護事業者の指定を受けやすいように、全日本鍼灸マッサージ師会では、株式会社「ゼンシン」を設立しました。 2003年2月20日現在、17事業所が居宅介護支援の指定を受けています。(岐阜4、神奈川3、北海道・熊本各2、青森・群馬・千葉・東京・和歌山・広島各 1)又、全鍼師会の都道府県師会が経営するものが3事業者(福井・京都・大阪各1)、会員個人が経営するものが7事業者(大阪3、秋田・茨城・神奈川・和歌山各1)あります。これら全鍼師会系の27の事業所には、数人の全盲者が関わり、弱視のケアマネジャーも多いと思われます。

株式会社ゼンシン及び会員個人が経営するサービス提供事業者も、各7事業所あり、視覚障害のある施術者も勤務しています。

V. 労務形態と問題点

これらの事例から見ると、視覚障害ケアマネジャーの働く場となりうる場は、次のように区分されそうです。

1、 居宅介護支援事業所で選任で働く。
2、 デイサービス併設の居宅支援事業所でケアマネジャーとして、デイサービスセンターで機能訓練指導員として兼務する。
3、 介護療養型医療施設の病院マッサージ師が入院利用者のケアマネジャー業務を兼務する。
4、 治療院開業の傍ら、居宅介護支援事業所の非常勤職員として関わる。
5、 居宅介護支援事業所を併設する複合型施術所の職員としてケアマネジャー業務を行う。
このような事業者の中には、医療保険による訪問マッサージ(療養費払い)を導入して成功している例もあります。
問題点としては、次のことが上げられます。
(1) 居宅を訪問するのが難しい(認定調査、アセスメント、モニタリング)。
(2) 点字資料や電子情報が少ない。
(3) 書類作成が大変。
(4) ケアプラン作成用ソフトが音声に対応していない。
これらは、職場介助者を置くことでかなり解決できる可能性はありますが、競争原理の世界で、どれだけ充足されるでしょうか。

 

W. 展望

2003年4月、いよいよ支援費制度が実施されました。 私は、それに備えて身体障害者介護等支援専門員の研修も受けました。 それもあり、私の会社では、2000年11月から金沢市と契約して全身障害者(四肢麻痺障害者)の介護に携わり、今年は支援費事業者の指定も受けました。 国の公的責任放棄は許されないとしても、自己選択→自己決定→自己責任という契約社会の訪れは、避けて通れないところまで来ています。

行政、医療、介護の人的ネットワークを活用しながら、介護の現場に障害者が積極的に関わるということは、国民の介護・医療保障(利用者のニーズ実現)、視覚障害者の社会的地位の向上、三療の正当な評価という点でも、実に有意義です。

2年後の介護保険制度と支援費制度の一本化が議論に登りだした昨今、障害を持つケアマネジャーや社会福祉士の役割は、ますます大きくなることでしょう。 又、視覚障害者自身が働きやすい労働環境を創出するという意味では、最低資本金が5年間猶予される確認会社制度や、介護労働安定センターの介護雇用創出助成金制度を積極的に活用する方法も視野に入れたいものです。




平成13年度理療科関係卒業生進路状況

理療科関係卒業生(あはき師養成課程・PT課程を含む)の卒業生数:289名


治療院開業:49名
就職

治療院:60名

病院:29名

診療所:16名

老人ホーム:11名

ヘルスキーパー:8名

一般就職:1名
進学

大学:2名

専攻科理療科:13名

専攻科理学療法科:5名

理療科教員養成施設:7名

その他:12名
その他

資格試験準備:27名

就職準備:21名

その他:28名

となっている。

理療科関係卒業生289名中、就労者は124名(43%)である。そのうち、治療院開業(出張を含む)は16.9%、治療院・サウナは20.7%、病院・診療所 は10%であり、三療の三大進路への傾向は変化なく、ついで老人ホーム3%、ヘルスキーパー2.7%である。

資格試験準備者は平成9年度以降25→15→27→29→27と推移している。

開業準備以外の就職準備者は平成9年度以降13→15→16→10→21と推移している。

(関東甲信越地区盲学校・養成施設加盟校23校卒業生進路実態調査より)




第11回あはき師試験結果一覧

  受験者(名) 合格者(名) 合格率%(昨年) 現役合格率%(昨年) 再受験合格率%(昨年)
あん摩・マッサージ・指圧師
全体(93校)
2184
1903
87.1 (83.7)
94.3 (91.8)
37.2 (14.2)
晴眼者
1318
1260
95.6 (94.7)
98.8 (98.0)
34.9 (17.6)
視覚障害者
866
*1 643
74.2 (67.7)
85.7 (81.1)
38.0 (13.2)
盲学校合計
568
447
78.7 (73.6)
89.8 (84.0)
40.1 (18.1)
更生援護施設・技短
*2  298
196
65.8 (57.5)
77.4 (73.4)
34.5 (14.6)

*1 全合格者の約1/3
*2 広島聖光学園の普通字受験生3名は除く

  受験者(名) 合格者(名) 合格率%(昨年) 現役合格率%(昨年) 再受験合格率%(昨年)
はり師
全体(99校)
3179
2663
83.8 (84.5)
91.2 (92.8)
20.4 (31.0)
晴眼者
2572
2267
88.1 (88.5)
94.0 (96.3)
25.3 (33.1)
視覚障害者
607
*3 396
65.2 (72.1)
77.5 (81.3)
11.5 (26.1)
盲学校合計
366
256
69.9 (73.6)
83.0 (84.6)
14.0 (30.4)
更生援護施設・技短
*2  241
140
58.1 (63.9)
68.7 (74.0)
8.0 (19.4)

*2 広島聖光学園の普通字受験生3名は除く
*3 全合格者の15%

  受験者(名) 合格者(名) 合格率%(昨年) 現役合格率%(昨年) 再受験合格率%(昨年)
きゅう師
全体(99校)
3136
2627
83.8 (86.2)
90.7 (93.8)
16.1 (33.2)
晴眼者
2546
2236
87.8 (89.7)
93.5 (96.9)
18.8 (35.0)
視覚障害者
590
391
66.3(75.2)
77.2 (83.3)
21.6 (28.5)
盲学校合計
361
254
70.4 (79.6)
82.0 (85.8)
16.0 (30.0)
更生援護施設・技短
*2  229
137
59.8 (69.0)
69.1 (77.3)
2.6 (24.1)

*2 広島聖光学園の普通字受験生3名は除く

○あん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師試験合否結果

全国の学校別合格者状況の公表については、既に前号でもあらましを述べており、『点字毎日』記事でも予告されていたが、福岡裁判での国の敗訴を受けて「雨後の竹の子」状に次々新設された晴眼校卒業生が初めて出る今回から、他の医療関係国試と同じく各校の合格状況を公表し、いい加減学校は淘汰されるという仕組みが動き出した。これは「情報公開法」に基づいて厚生労働省が既に実施を決めていた行政行為であるが、支援費制度の導入によって、盲人が与えられる措置ではなく自ら選択する時代となったわけで、例えば国リハや視障センターでは従来の地区分けが廃止され、全国どこからでも希望するセンターで学べるようになった。学校が選ばれる時代となり、合格状況の実態は選択する側のバロメータの一つともなるが、基本的には提供する側に構造改革的な向上を求めるもので、そういう時代に突入したのだという覚悟と対応が必要である。この公表から今回国試の晴盲別合格状況を割り出してみると、次ページの通りとなっている。

(理教連情報第175号より)




教員採用試験受験勉強体験記

山本宗平

 

みなさん、こんにちは。この4月から大阪府立柴島高等学校で常勤の英語教諭として勤務している山本宗平(やまもと そうへい)と申します。  

今回は、どのようにして教員採用試験を受験する準備をしたかについて原稿の依頼をいただきましたので、参考になるかわかりませんが少し書いてみたいと思います。

私が教員採用試験の勉強を始めようと思ったのは大学4回生の時の冬でした。とは言っても、どんな参考書を使って勉強したらいいのか全くわかっていなかったので、以前その存在について聞いていた視覚障害者支援総合センターから97年度版とやや古いものしかなかったのですが、教職教養シリーズの点字本を買いました。一般教養については特に教員採用試験向けのものは準備できませんでした。その時は公務員試験も受けようと思っていたので、ないーぶネット(*)からダウンロードした公務員試験の一般教養科目の問題集を参考にしました。

そして、7月に教員採用試験を受験しました。結果は一次試験で不合格となりました。ただ、その結果は当然と言えば当然のことでした。と言うのは、私が使用した参考書はいずれも5年から10年前の試験に対応したものだったので、それ以降に法律が改正されていたり、新しい答申が出ていたりしてタイムリーな話題について把握できていなかったからです。それから、実際に受験したことにより、受験勉強している時には漠然としていた「問題の傾向」や「出題のされ方」がよくわかりました。そして、次回受験する時の参考として全ての問題を覚えて帰ってきました。こう書くと大変そうな作業に思えるかもしれませんが、教育心理、教育法規、世界史、音楽等、各分野から出題される問題は一問から数問程度ですので、分野ごとに覚えれば充分可能な範囲かと思います。

さて、それまでの勉強の仕方の反省を踏まえて、再度教員採用試験に挑戦しようと、その年の終わり頃から準備にとりかかりました(この段階で既に出遅れているのではありますが…)。今度は最新版の参考書を使って勉強しようと想い、どんな参考書がいいだろうかと実際に教員採用試験に合格した先輩方にアドバイスを求めました。そして、時事通信社から毎月出ている『教員養成セミナー』で勉強していこうと決め、早速本屋へ買いに行きました。時事通信社からは教職教養の重要事項をまとめた『教職教養スコープ』と一般教養の重要事項をまとめた『一般教養スコープ』というものも出ていると聞いていたので、それらも一緒に買いました。特に、『教職教養スコープ』は学習指導要領の変遷等がわかりやすくまとめてあり参考になりました。そして、これらをボランティアに点訳してもらうようお願いしました。『教員養成セミナー』は内容が盛りだくさんである上に毎月発行されるので、全部点訳をお願いしたのでは間に合わないだろうと想い、教職教養、一般教養のセミナーの部分を中心に点訳してもらい、おもしろそうな付録情報は割愛せざるを得ませんでした。点訳が届くまでの数週間の間は手持ちの古い問題集で、古くても支障が少ないと思われる教育心理や教育史、一般教養科目を勉強しました。概ね、『教員養成セミナー』は数週間遅れで点訳版が届くという状況でしたが、毎月いろいろな重要事項についてタイムリーな話題を中心に掘り下げて勉強できるので、重要事項が効率的に身に付いたように思います。そして、二度目の挑戦で教員採用試験のG判定通知をいただくことができ、希望通り地域校での教員生活をスタートさせることができました。

これから教員採用試験を受験される方も多いことと思います。内容が充実した最新の参考書であれば、その内容をしっかりと把握できるまで繰り返し読むことが大変重要だと思いますし、たくさんの参考書に手を出してどれも中途半端になるというよりは得策ではないかと感じます。一次試験に合格すれば、二次試験はそれぞれの専門科目の力を発揮する試験なので、準備も本番もそれほど悩む必要はないと思います。面接も自分の教育観を堂々と主張することができれば、一次試験よりはとりくみやすいものと思います。自分が教壇に立つ姿を想像して、熱い希望を持って、教員採用試験を受験する仲間が増えることを願っています。

* ないーぶネット − 全国視覚障害者情報提供施設協会がインターネット上に公開する、視覚障害者のための情報ネットワーク。(http://www.naiiv.gr.jp) (編集部)




短信

厚生労働省は、3月28日、新たな「障害者雇用対策基本方針」を発表しました。  

概要を読むと、「障害の種類及び程度に応じたきめ細やかな措置の開発、推進」「進展するITの積極的活用」などの項目が注目されます。また、あはき業において、ヘルスキーパーや特別養護老人ホームにおける機能訓練指導員としての雇用拡大の必要性が述べられています。

内容については今後の要求の中で具体化させていく必要があると思われます。

報告書の詳細については以下にお問い合わせください。

厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課
電話番号 03-5253-1111(内線 5852)
夜間直通 03-3595-1173

(文責 伊藤)