雇用連情報 第48号

発行全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行責任者田中章治
編集責任者伊藤慶昭
連絡先田中章治(事務局長)
〒334-0071 埼玉県川口市安行慈林645-4
電話 048-285-9935
電子メール koyourenアットマークnpo-jp.net
URL http://www.koyouren.npo-jp.net
(ここから本誌のバックナンバーがダウンロードできます)
郵便振替 00150-4-67809(加入者名)全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行日2002年 6月1日

(この情報誌は活字版(標準サイズ)、点字版、テープ版、フロッピーディスク版、電子メール版(雇用連メーリングリストで配信)で製作されています。必要な方はご連絡ください。)




目次

(巻頭言)視覚障害者の雇用・就労促進を目指して
厚生労働省交渉報告
雇用連の広場
第12回雇用連総会が開催されました
雇用連の新役員
(職場レポート)井上博徳さん
(短信)
雇用連規約




<巻頭言> 視覚障害者の雇用・就労促進を目指して

雇用連会長 田中章治


 私は、2001年12月9日に開催された雇用連第12回総会において新しく会長に選出された。雇用連が結成されたのが1979年、初代松井会長から数えて私が4代目となる。それにしても、結成当時から役員の地位にあるのはついに私だけになってしまい、時の流れを感ぜずにはいられない。

 ところで、視覚障害者の雇用・就労促進の課題はこの間私たちの粘り強い運動と社会的理解の進展とがあいまって改善されたと言ってよかろう。しかし、未だ道半ばというのも事実に違いない。各種公務員試験における点字試験の実施、職域の拡大や職業リハビリテーションの充実、中途視覚障害者の継続雇用、あはき業従事者の仕事と身分を守る等の諸課題が未解決のままだ。私たちはこれらの課題解決に向けて果敢に取り組んでいく所存である。

 雇用連は、昨年、団体中心から個人会員中心の組織に改変された。運動の仕方は大きく変わることはないだろうが、一人一人の会員の協力が不可欠である。真のノーマライゼーションの実現のため、引き続きご支援をよろしくお願いいたします。




厚生労働省交渉報告


昨年12月10日(月)午前10:00〜12:00、厚生労働省第1共用室において交渉が行われました。以下、要求項目ごとに回答と関連質疑を交えご報告します。


2001年12月10日

厚生労働大臣
坂口 力 様
全国視覚障害者雇用促進連絡会
会長  田中 章治

厚生労働省への要求


<マッサージ関連診療報酬の改善について>

要求1.現在の診療報酬のように、「消炎・鎮痛処置」、あるいは、「理学療法T〜W」の基本的動作能力の回復をはかるためのマッサージにその役割を限定せず、肩こり・腰痛などの疲労性疾病の治療、生活習慣病の改善及び高齢者の健康と長寿のための役割にも着目し、診療報酬項目に「マッサージ」を復活すること。
回答:1と2は診療項目についてでありまして、1番は消炎鎮痛処置と理学療法のあり方にマッサージを追加するかでありますが、現在診療項目に数千項目ありまして、今その項目を検討しているところではありますが、今現在の所マッサージを復活するという事は、具体的検討機関から上がっておりません。ただ、数千項目に渡る診療項目見直しは中医協という形で議論されていまして、検討の中でこういったご意見を伝えたいと思います。
要求2.「消炎・鎮痛処置」(マッサ−ジ等の手技による療法)と「消炎・鎮痛処置」(器具による療法)の点数を別項目とすること。
要求3.「消炎・鎮痛処置」(マッサージ等の手技による療法)の所定点数を、「理学療法W」の「複雑なもの」と同様の115点に引き上げること。
回答:2番でございますが、マッサージ等の手技による療法と器具による療法、これを別項目にしてほしいという事でございますが、つまり、点数を変えて下さいという事だと思いますが、これも診療項目の見直しという事で具体的検討機関としては中医協議して、3番も同じでありまして「消炎・沈痛処置」と「理学療法W」の「複雑なもの」とまったく同じ点数というのは難しいと思いますが、今後中医協の議論を待ちたいと思います。
要求4.「消炎・鎮痛処置」(マッサージ等の手技による療法)点数と、「消炎・鎮痛処置」(器具による療法)、「介達牽引」及び「理学療法T〜W」との包括点数制を廃止し、出来高払いにすること。
回答:4番のこちらの包括点数制の廃止でございますが、こちらは同地に行った場合いずれかということでございますが、この部分に限らず検査でありますとか、手術でありますとか、あらゆる項目におきまして複数行った場合、原則包括になっており、この部分だけというのは難しいです。
要求5.200床以上の病院においても、「消炎・鎮痛処置」点数が算定できるよう改めてください。
回答:5番、平成12年4月診療報酬改定において、外来で「消炎・沈痛処置」項目が「外来診療料」となったものを指していると思いますが、機能分担の観点からこういった包括点数になっており、改めるということは現在の所考えてない。
要求6.「理学療法V」及び「理学療法W」において、人的基準を設け、あん摩マッサージ指圧師等の有資格者をその要件とすること。
回答:6番、資格要件等の見直しも行っているところである。
要求7.「理学療法V」及び「理学療法W」の診療報酬を、それぞれ適正に引き上げること。
回答:7番、そもそも現在の医療保険体制は大変逼迫しておりまして、一般的な引き上げというのは数千項目ある中で1項目もできない、どれを引き下げるかという事が中心に合理化の議論がなされており単純に引き上げることは難しい。

<各種調査について>

要求8.保健医療機関で働く視覚障害であるあん摩マッサージ指圧師の雇用状況に関する調査を、定期的に実施すること。緊急に、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の解雇の実態を明らかにする調査を行うこと。
回答:8番でございますが、申し訳ないが回答できない。
要求9.「消炎・鎮痛処置」の総請求点数・回数を明らかにすること。また、「消炎・鎮痛処置」(手技による療法)と「消炎・鎮痛処置」(器具による療法)のそれぞれの請求点数・回数を明らかにすること。
回答:9番、総点数評価はしていない。ただ、毎年6月に1ヶ月間の診療報酬の抽出調査である「社会医療診療行為別調査」の中でマッサージと器具の両方が合わさった回数、しかも抽出で1ヶ月間で調査評価をいたしまして、回数が630万回となっている。

<雇用の促進及び安定>

要求10.国・地方公共団体は、特定身体障害者(視覚障害3級以下)に適用される特定職種(あん摩マッサージ指圧師)特定身体障害者雇用率100分の70を達成するため、法にもとづく採用計画を作成し、すみやかに達成すること。また、同雇用率の達成が努力義務となっている民間企業に対しては、達成のための指導を強化し、必要に応じて雇い入れに関する計画の作成を命じること。
回答:10番、特定職種に従事する特定身体障害者の雇用状況につきましては、毎年6月1日現在の障害者の雇用状況に報告されている「障害者雇用状況報告」に合わせまして雇用状況を把握しております。国または地方公共団体の機関で特定身体障害者雇用率未達成の機関に対しましては、雇用率を達成するよう指導しております。また、雇用率達成が努力義務になっていることにつきましては、これを以って雇用率が達成されないことのないよう指導を強めて参ります。
質疑雇用  対象事業所の数は?
厚生  抽出で194事業所で特定職種従事者は2,234人、うち特定身体障害者は1,452人である。率にして65.00%である。
雇用  視覚障害のマッサージ師の方が理学療法従事者や機能訓練従事者で届けられたりしています。もう一度調査をお願いします。
厚生  理解はしています。
要求11.報奨金制度については、保険医療機関の場合、その支給要件を緩和すること。
回答:11番、保険医療機関に限り支給要件の緩和については、報奨金支給制度の主旨から難しい。
要求12.職場介助者制度について次の改善を行うこと。
(ア) 職場介助者制度(非事務職)を知らない保健医療機関である事業主が多く、また、視覚障害者が職場介助者の委嘱を希望しても事業主が消極的な事例があるので、保健医療機関への周知徹底を図ること。
回答:12番(ア)、雇用納付金制度の説明会を公共職業安定所等で行い事業主に職場介助者制度についても併せて説明を行っている。安定所によって雇用率達成指導を行う際、職場介助者制度についても説明を行っている。
(イ)全雇用期間に対して、職場介助者(非事務職)を適用すること。
回答:12番(イ)、現在10年間となっている、本助成金は障害者雇用納付金会計の財源としているものですので、障害者雇用に伴う雇用主間の経済的負担を軽減することがその主旨になっていますので、他の助成金との均衡を考えますと本助成金のみを全雇用期間に拡大することは難しいと考えている。
障害者の方の就職に当たっては、公共職業安定所ですとか障害者職業センターにおいて就職後においても安定を図るためにいろいろ助言をしており、そういったことを通じまして給付期限が過ぎた後も安定して雇用が図られるよう環境づくりに協力しまた助言等も行っていきたいと思います。
(ウ)職場介助者(非事務職)の「24回以内」の回数を増やすこと。また、「1回1万円以内、年24回」を「年間24万円以内、回数制限なし」と改めること。
回答:12番(ウ)、この助成金は平成9年4月に行った「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正に基づき、助成金の大幅な改正の際に事務的業務の方以外にも適用となった経緯があります。回数無制限というのは助成金の事務管理の面でなかなか難しいと思うが、また、他の助成金との整合性もあり難しい面もあるが、回数を増やす事については介助の実状をふまえて検討していきたい。
質疑雇用  申請された数はどのくらい?
厚生  平成12年度で事務的・非事務的職種共に20件です。回数を増やす事については、その利用状況を調べて検討したい。
雇用  私も「雑草の会」という印刷所で働いているが職場介助者制度は大変助かっている。ただ10年ということで不安である。全雇用期間に対し職場介助者制度の延長をお願いしたい。また公務員に対しても何らかの方策を考えていただきたい。
厚生  認識している。今後検討していきたい。
要求13.公共職業安定所の求人票のうち、あん摩マッサージ指圧師のそれには、「免許があればなおよい」「有免許者優遇」「無免許者も可」など、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)第1条違反を助長する内容のものが横行しています。これは、職業安定法第16条(求人の申込)「公共職業安定所は、いかなる求人の申込も、これを受理しなければならない。但し、その申込の内容が法令に違反するとき、又はその申込の内容をなす賃金、労働時間その他の労働条件が、通常の労働条件と比べて、著しく不適当であると認めるときは、その申込を受理しないことができる。」に抵触すると思われます。またこの求人票による職業斡旋は、同第17条(求職の申込)、「公共職業安定所は、いかなる求職の申込についても、これを受理しなければならない。但し、その申込の内容が法令に違反するときは、その申込を受理しないことができる。」に抵触するものと思われます。このようなことのないようにしてください。 
回答:13番、9月18日に行われました「改正雇用対策法にかかる担当係長補佐会議」において、周知徹底を図るよう報告されている。
質疑雇用  会議における文書等はないのか?
厚生  文書はない、口頭で行われた。
雇用  ここで都内の求人票で資格要件が「見習い可」、「免許があればなおよい」、「不問」、「カイロ・整体師」、「学生でも可」等の求人票を提出。
厚生  確かに「不問」というのは資格要件からするとおかしいですね。
雇用  見習いというのもおかしくて、免許を取得してから業は行えるのであって、免許の書くところに「見習い」はおかしいのではないですか?
厚生  明らかに職種がマッサージと入っている場合は職業安定所の受理係を指導していきたいと思います。
厚生  通達というのも職業安定局長が労働局長に対して行うものでして……。
雇用  文章にはなっているのか?
厚生  文書といえるものは……。
雇用  紙になったものはあるでしょう。
厚生  私の一存でお答えできない。
要求14.病院マッサージ師(あはき師)や電話交換手など解雇された視覚障害者に対する雇用対策を立て、再就職支援の他、ヘルスキーパーや事務的職種など新たな職域を開拓し、再就職のための支援を行ってください。
回答:14番、厚生労働省では現在の雇用就業状況の中、離職を余儀なくされた障害者の方の早期に 再就職が図られるように自立訓練施設の他公共職業安定所職員、および公共職業安定所に配置された障害者職業相談員によりまして、すみやかに再就職の道が開かれるよう努めています。また厚生労働省では日本障害者雇用促進協会と協力し各種パンフ、雇用マニュアル等を作成し啓発・啓蒙に努めているところです。
要求15.盲学校に進学した場合も、更生訓練施設の場合と同様、失業手当を支給し、あはき技能取得までの間、所得保障を図ってください。
回答:15番、働いておられた視覚障害の方が離職して盲学校専攻科へ進学された場合には失業の認定を行った上で、雇用保険資格の支給を行うこととなっております。
質疑雇用  盲学校在学で受けられるのか。私の学校では、失業保険をもらっていることを黙って入学しているものもいる。
厚生  私の知る限り歴史上可能である。私に言っていただければ全国どこでも安定所を指導いたします。また、詳しい情報をいただきたい。
要求16.(助成金の申請手続き)
障害者雇用納付金制度に基づく助成金及び障害者雇用継続助成金に基づく助成金の申請手続を簡素化にしてください。並びに、都道府県協会において、申請手続を熟知するよう指導し、及び申請に係る手続を丁寧に助言するようにしてください。
回答:16番、これまでも何度か改正してきたが適正かつ迅速に、また、不正請求の防止等に関しまして事業主等の意見を踏まえまながら簡素化に努めたい。今後、支給件数の調査等を検討していく中で引き続き簡素化に努めていきたい。また、都道府県協会の問題については日障協の担当者会議の方で対応していきたい。
要求17.(雇用関係書の点字化等)
(ア)「障害者雇用ガイドブック」を電子化(点字版及びテキスト版)にしてください。
回答:17番、(ア)日本障害者雇用促進協会の方へ確認しましたところ、現在のところ電子データ化を行っていませんとのことでした。「障害者雇用ガイドブック」、「障害者雇用管理等講習会シリーズ」については今後はテキストデータでの保存を検討していますとのことでした。
(イ)障害者の雇用関係資料である、障害者職域拡大等研究調査報告書、障害者雇用マニュアル、障害者職域拡大マニュアル及び障害者雇用管理等講習資料シリーズで、すでに電子データ化(点字版及びテキスト版)されたもののリストを教えてください。
回答:17番、(イ)リストについては電子データ化されたものがあるのでどなたかのメールに送りたいと思います。電子データ化、テキスト化、PDF化されたものがある。今後は電子データ化の方向に持っていきたい。何が電子データ化されているのか、また、それを配布してもらえるのかどうかは日障協の開発相談部というところに問い合わせてほしいとのことです。
要求18.(IT機器の訪問指導)
障害者が働く職場に訪問して、パソコン等のIT機器の操作について指導する制度を実施してください。
回答:18番、障害者の方のIT技能等職業能力開発につきましては、IT技術を活用した新たな訓練手法を行うと共に障害者職業能力校等で障害者の状況に応じた作業支援をする機能を有する機器等を整備する、訓練環境の整備に勤めているところである。特に視覚障害者の方の場合は、OA機器の利用については工夫が必要でありますので、入力内容を音声で認識できる支援機器等の職業能力開発校への整備を図ることによって障害者のIT活用を十分発揮しながら働くことができるよう職業能力の支援に努めている。なおご要望の職場に訪問してIT機器の操作について指導することにつきましては、既存の制度としては無いのだが、来年度予算要求の中に「ジョブコーチ」派遣事業というのを要求しており「ジョブコーチ」というのはITを専門に行うわけではないが、IT機器支援の一つになると考える。
質疑雇用  視覚障害者を対象にしたITの訓練施設は全国に何ヶ所あるのか。
厚生  全国19校でそれぞれ対応している。
雇用  たとえば小平の訓練施設は全盲はだめと聞いているが……。四ッ谷の職能開発センターが小平から委嘱されて視覚障害者に対応していると聞いている。私たちは3ヶ所だけと聞いている。四ッ谷、日本ライトハウスと職リハと。 19校というのは……。
厚生  今後設備等考え、対応するよう指導していきたい。
要求19.(中途視覚障害者対策)
中途視覚障害者が解雇されたり、不安定雇用にならないよう、「障害者解雇禁止法」(仮称)を制定するとともに、中途障害リハビリ期間中の所得保障等を実施してください。
回答:19番、我が国においては障害者解雇禁止する法律はないが「障害者の雇用の促進等に関する法律」においてその雇用する身体障害者または知的障害者の方が法定雇用率以上であるようにしなければならない雇用率制度を設けている。
障害者の雇用促進・安定を図る事も含め法律で定めている。また障害者の再就職が難しいことに鑑みて事業主の方が障害者の方を解雇する場合にはその旨をすみやかに公共職業安定所に届け出ることになっており、それによって公共職業安定所はあらかじめその方の適した求人の開拓や職業指導を行い対応している。さらに中途視覚障害者になった方の雇用を継続するということで言いますと、作業施設設備の設置ですとか職場適応といった措置を実施した事業主に対しまして「障害者雇用継続助成金」を支給しているところである。障害を理由にして解雇することのないように雇用継続を図っております。
質疑雇用  視覚障害者が解雇される現状がある。宮崎県の聖心ウルスラ学園の窪田さんは「視覚障害になった」というだけで不当解雇にあっていますし、私の知り合いも特養のマッサージ師ですが急に辞めてくれないかと言われているそうです。その理由が「院内でお年寄りとぶつかって危ない。」、「通勤途中で事故にあい労災にあっては困る。」といった理由です。15年も同じように働いてきて事故も起こしたこともないし、現在2ヶ月に1回は雇用主から「治療院で働けないか」、「辞めてくれないか」と再三言われている事例がある。
介護保険導入と規制緩和の中でこの2003年には社会福祉法人でなくても特別養護老人ホームが運営可能になり、東京の特養においては福祉のリストラが進んでいるのです。これはかなり全体にひどい状況がありまして、その矢面に視覚障害者が立たされている解雇の事例をお話ししましたが、「障害を理由に」辞めさせようとする施設運営者は、障害者は効率的でない、というような認識を持っているようです。私も東京都に申し入れをしたところ個々の案件については関わらないということです。厚生労働省としてこのような事例があることをご存知ですか。
厚生  把握はしていない。
雇用  このようなことは東京都に指導等できるのですか。して頂けませんか。
厚生  東京都にですか。
雇用  ええ。「障害を理由に解雇するな」といったことを……。
厚生  厚生労働省としては「解雇してはいけない。」ということは言えないのでして、障害者の方の雇用継続や職場環境の整備等は指導できるのです。
雇用  特養は東京都だけで300ありまして、全国では3,000あるのです。東京には視覚障害を有するマッサージ師の方が180人ほど働いておられます。今後ですね、公設民営の区立や事業団が経営している特養も経営の効率化の中で重度の障害者が切り捨てられているのです。結果として「依願退職」、「本人都合」によって辞めていますが実態はそうではない。もっとひどいのは明日から正職員の方が非常勤になってくれとはんこを押させられている事例もあるのです。そのようなことが社会福祉法人で起こっているのです。こういった社会福祉法人や地方公共団体に文書等で通知は出せないのでしょうか。
厚生  実態を調査してみないと……。縦割り行政と言われると申し訳ないが、解雇禁止というような法的なこととなると厚生労働省の基準局の担当になりまして、今お伺いした内容はそちらの方にも伝えまして雇用の趣旨、法律の改正となると難しいでしょうが、伝えたいと思います。
雇用  よろしくお願いします。
要求20.(公務員である視覚障害者の職場介助者)
かつて労働省は、公務員である視覚障害者の職場介助者の配置について、人事院と相談することを約束しましたが、この件について、その後の経過を教えてください。
回答:20番、重度障害者職場介助者等助成金は納付金会計上請求という事で、民間の事業主から徴収しているお金を財源としていますので、国・地方公共団体につきましては民間事業主と同一のレベルでの減資はなじまないだろう。納付金制度の適用除外になっています。ですから今ある助成金という形で公務員の方を対象に支給するということは難しい。
なお、各官公庁に対しまして障害者を継続雇用するための職場環境の改善、施設のチェック等を働きかけるよう要望しているところです。
平成3年度から国家公務員の採用試験が点字で実施されていまして、特に、平成9年度の受験者から合格者が出たとか、視覚障害者の働く環境整備について人事院と相談しまして、また各省庁との連絡会議の場でも理解を求めるように努めてきました。今後とも各機会を活用しながら視覚障害者の働く環境とか支援のあり方について適宜、業務上の相談には各省庁に広報したり、理解を求めていきたい。
要求21.(視覚障害者担当相談員の配置)
視覚障害者の職場定着・安定のために、特定の職業安定所に視覚障害者の雇用を専門に担当する相談員を配置してください。
回答:21番、現在のところ公共職業安定所には身体障害者を担当する相談員を配置しており視覚障害者の方については、身体障害者職業相談員の方に対応していただいている。今回特に視覚障害者の専門に担当する相談員を配置するということは他の障害もあり、なかなか難しい。
要求22.(作業施設設置等助成金)
障害者雇用納付金制度に基づく助成金である作業施設設置等助成金について、視覚障害者のみでマッサージ事業所を運営している場合において、視覚障害者の金銭授受に伴うトラブルを回避し、領収書を発行することができる機能を付加した「自動販売機」を、助成金の支給対象にしてください。
回答:22番、作業施設設置等助成金には「自動販売機」は該当しない。
視覚障害者を対象としてはオプタコン、拡大読書機等が設置された場合助成金の支給対象になっている。
質疑雇用  恵比寿で開業されておられるマッサージ師で視覚障害者の経営者なんですが、「自動販売機」を助成金の支給対象にしてくださいということで申請したのですが、今回もだめだったというのです。先程、障害者が利用する設備に助成すると言われましたね。障害者が勤務する治療院で施術にあたり障害者が専ら利用するベッドとかが助成対象ですよね。「各種助成金のご案内」のパンフにも出ていますよ。原則として障害者が利用する、だからパソコンについては視覚障害者の音声に対応したパソコンとなっていますが、実際には視覚障害者については特別な扱いがされてきているのです。ここに要望している「販売機」ですが、これは利用者が使うと判断したようですが、ここではそういう使い方をしていなくて、お金をいったん受け取って視覚障害者の施術者が機械に入れて領収書が出て患者、お客に渡すというものなのです。ワープロで対応しろとも言われましたが、クイックマッサージのように10分単位でお客がくるところでは対応できないのです。一般的な事だけで助成金が支給されているわけではないのです。考え方を変えれば助成対象にすることは可能なわけで実態にあわせていただきたい。「領収書付販売機」は項目ごとに点字シールがはられ視覚障害者が使えるように工夫されています。よろしくご検討、お願いします。
(注) 質疑における 「雇用」は雇用連発言、「厚生」は厚生労働省発言を示す。

 *なお、要望15(盲学校に進学した場合も、更生訓練施設の場合と同様、失業手当を支給し、あはき技能取得までの間、所得保障を図ってください。)については、日本理療科教員連盟を通じて失業保険給付が可能となっていることが判明した。



雇用連の広場

第12回雇用連総会が開催されました。


 2年に一度開催されている全国視覚障害者雇用促進連絡会の第12回定期総会が2001年12月9日、東京港区の芝公園福祉会館において開催されました。当日の参加者は約20名とやや少なかったものの、熱心な討議が行なわれました。以下、当日の模様を簡単にご報告いたします。

 総会は、議長に稲垣幹事を選出し進められました。竹下会長の開会の挨拶の後、田中事務局長の「2年間の活動のまとめ」と、西原幹事の「決算報告」がありました。その中で特筆すべき事項としては、(1)1999年10月に「雇用連結成20周年記念事業」を開催し大きな成功を収めたこと。(2)2001年3月の文月会解散に伴い、当会の組織を団体中心から個人会員中心にシフトさせたこと。(3)新たに雇用連のメイリング・リスト、ホームページを開設したこと等が上げられます。

 続いて、今期の活動方針案と予算案の提案がありました。主な提案としては、@現在の個人会員数は約120名、これを倍増させる。A『雇用連情報』の他、会員向けに『会報』を発行する。B個人に対する相談や情報提供活動に力を入れる。特に、メイリング・リスト、ホームページの充実に努める等でした。

 結局、総会では、2年間の活動のまとめと決算、今期の活動方針案並びに予算案を提案通り拍手で承認されました。最後に新役員の提案があり、これも提案通り承認されました。なお、長らく会長を勤めておりました竹下義樹に代わって田中章治が新会長に就任しました。竹下氏の長年に及ぶご苦労に対し、深く感謝申し上げます。

 総会に引き続き、工藤正一氏(タートルの会副代表、東京都飯田橋公共職業安定所勤務)より、「ハローワークにおける視覚障害者の職業相談について」のテーマで講演がありました。


雇用連の新役員

会長 田中章治
副会長東郷進、篠島永一
事務局長 伊藤慶昭
事務局次長乗松利幸
幹事稲垣実、小日向光夫、田中和夫、西原清松
会計監査高橋秀治
相談役橋本宗明、馬渡藤雄
[以上]



<職場レポート>
私の業務内容について


井上 博徳


 私は、先天性白内障のため、ほぼ生まれつき両眼ともに視力が0である。高校までを盲学校で過ごした後、筑波技術短期大学情報処理学課に進学。1994年3月に卒業し同年4月1日に、三菱マテリアル新潟製作所にシステムエンジニアとして入社し、同期入社の人達と共に、会社全体及び、新潟製作所の各課の業務内容について、教育を受けた後、事務部総務グループに配属された。

 以下に、今までの開発実績の中からいくつかを取り上げ、その概要を示す。尚、パソコンには、数種類の画面音声化ソフトをインストールし、用途によって使い分けており音声化できない部分の画面状況の確認、回覧書類などの要旨伝達、必要書類への記入、ワープロソフトで自作した文書中の漢字の誤りやレイアウトのチェックについては、同僚からのサポートを受けているが、専属のアシスタントは付けていない。また、技術資料の収集や電子メールの利用、データベース検索、出張時の切符や宿の手配などの目的で、インターネットを十分に活用している。通勤は、バスを乗り継ぎ片道50分程かかる。

1.所内ネットワークの整備
 当所では、データの一元管理や、ファイル、プリンタ、ファックスモデムなどの資源を共有する事によって業務の効率化とコストの削減を推進するために、クライアント・サーバシステムを構築する事になり、私がシステムの設計、導入、運用、管理などを担当する事になった。その過程では、特に機種選定の際に、各メーカーの人と直接話す機会が多かったが、相手側も「視覚障害者に対して、どのように話を進めていけば良いのか」が分からず戸惑っていた。これは、日常生活において視覚障害者に接する機会が少ない人にとっては当然の事である。そこで、私は多少の時間を要しても、個々に我々のコンピュータ利用の実状、例えば、画面音声化ソフトによりDOSレベルでは殆ど問題なく作業ができる事、WINDOWSに対応したソフトも市販されており、メニューなどかなりの部分は音声化できるものの、アプリケーションによってはほとんど読み上げない場合もある事、上記ソフトと一般に使われているワープロソフトを組み合わせて、漢字仮名混じり文を作る場合の同音意義語の判別方法、画面音声化の簡単な仕組みなどを実機でのデモを交えて説明した。こうして文書にすると大げさになるが、全く難しい事では無く、相手も情報処理の有識者なので話を進めていくうちに状況は理解され、その後のコミュニケーションと業務はスムースに進行した。
 実務は、システム設計書の作成、機器の購入(見積書はテキストファイルでもらった)サーバー用OS(NETWARE/WINDOWS NT/UNIX)のインストール各クライアントのセットアップ、ケーブルの配線と接続確認、システム全体のテスト、ルーターによる外部のネットワークとの接続、アプリケーションのネットワーク対応、分散して持っていたデータの一元化、ユーザーへの教育、運用開始後のユーザーやデータの管理、モジュールのアップデートなどと、一般的な手順と全く変わりは無い。

2.アプリケーション開発
 Cやアセンブリーなどの言語を使用し、勤怠管理システム(タイムレコーダーに記録されている社員の勤怠データをRS232Cインターフェースを介してパソコンに取り込み、データを加工後、ホスト上の給与計算用データベースに転送する物)などの開発や、既存プログラムの修正を行っている。プログラミングの際には、我々が簡単に利用できる点字や電子データのマニュアルや専門書が非常に少なく、ソースその物の作成よりも関数やAPIの仕様確認の様な、付随する作業に時間を要する事が問題となっている。現在は、関数名からその仕様を検索するソフトなどを自作して開発時間の短縮に努めている。

 他に、社内におけるコンピュータの効率的な活用方法を提案するワーキンググループや、メーカーが技術者を対象に行うセミナーにも参加している。

 今後視覚障害者が情報処理業界で仕事を行っていくためには、この先普及が予測されるOSに対応した、業務での使用に耐え得る質の画面音声化ソフトを組織的に短期間で開発する事、視覚障害者が行う事のできる仕事の範囲を企業にアピールする事が必要だと思う。




<短 信>


★聖心ウルスラ学園高等学校・窪田巧さん不当解雇事件に支援を

 視覚障害を理由とした解雇事件がまた発生しました。宮崎県延岡市の私立聖心ウルスラ学園高等学校数学教諭、窪田巧さん(51歳)は、昨年(2001)7月26日、視覚障害を理由に一方的に学園から解雇されました。既に、全国視覚障害教師の会や中途視覚障害者の復職を考える会(タートルの会)などでは支援に取り組んでいます。長年雇用連運動の一翼を担ってきた全視協も窪田さんから支援要請を受け、支援を呼びかけています。本年1月12日に開かれた雇用連幹事会では、雇用連としても支援を確認しました。

 窪田さんは人望も厚く、教職歴26年の実力を備えた数学教師です。病気で視力が低下してからも、拡大読書器等を活用して低下した視力をカバーし、一人ひとりの生徒に添った授業を行い、生徒の評判も高い教師です。

 学校側は、窪田さんの視力低下を解雇の唯一の根拠としています。医学的な面での「視力回復不能」にのみ着目し、事業主としてなすべき働く環境や条件を改善する考えなどは全く見受けられません。

 もし、この学校側の行為が容認されるならば、働くすべての視覚障害者はその障害を理由に、いつでも解雇されるということになります。

 窪田さんは昨年9月、地位保全と未払い賃金の支払いを求める仮処分を宮崎地裁に申し立て、清水建夫弁護士(働く障害者の弁護団代表、東京)を主任に、竹下義樹弁護士(雇用連前会長、京都)など11人の弁護団で裁判が始まりました。支援の輪が広がるなかで、学園側の不当性が明らかになっていきました。本年1月21日の第2回目の裁判所での話し合いを前に学園側から和解案が出され、1月28日、解雇は撤回されました。

 しかし、その真意は裁判所の決定(判決に相当)を避けるところにあり、学園側は態度を改めたわけではありません。このことは、解雇撤回と同時に就業規則にも反して休職命令を実行したことからも明らかです。検証という名のもとに、解雇に追い込もうとする陰湿な意図さえうかがえます。

 「休職命令を撤回せよ」という窪田さん側の要求には、学園側は無視を決め込んでいます。学園側に障害者雇用促進法等に基づく配慮があれば、すぐに復職して働くことは可能です。

 以上のようなことから、窪田さんは3月22日、休職命令撤回を求めて新たな裁判を起こさざるを得ませんでした。

 いずれにしても、このような学園側の態度は、働くすべての視覚障害者にとって不幸なことであり、社会の流れにも逆行します。窪田さんが一日も早く職場復帰を果たし、多くの人たちを励まして欲しいものです。

 窪田さんに対する皆様のご支援を心より訴えます。お問い合わせは雇用連事務局まで。なお、タートルの会では支援カンパ受け入れ専用の口座(郵便振替口座番号:00170-8-113942、口座名:タートルの会)を開設していますので、重ねてご支援を訴えます。

(2002年3月22日 記)




<資料> 全国視覚障害者雇用促進連絡会規約


第1条
この会は、全国視覚障害者雇用促進連絡会(雇用連)と称し、事務所を東京都または近県に置きます。
第2条
この会は、視覚障害者の雇用促進及び職場定着等を、国と自治体、企業などに求め、視覚障害者の職域と職種の拡大を図るとともに、その職業と生活の安定・向上を実現することを目的とします。
第3条

この会は、前条の目的に賛同する個人で組織します。

この会は、賛助団体を組織します。
第4条
この会は、総会と幹事会で運営します。総会及び幹事会は会長が召集します。
第5条

総会は、会員で構成され、2年に1回以上開きます。賛助団体の代表は、総会に参加することができます。

総会は、規約改正、活動方針、予算、決算、役員及び会計監査の選出、その他本会の重要事項を審議・決定します。
第6条

幹事会は、次条第1号から第5号の役員により構成し、年に1回以上開きます。

幹事会は、具体的な行動計画、入会の承認、総会の運営に関する事項など、必要な事項を執行します。
第7条

この会に、次の役員を置きます。
@ 会長
1名
A 副会長
2名
B 事務局長
1名
C 事務局次長
1名
D 幹事
若干名
E 会計監査
1名

役員の任期は2年とします。ただし再任は妨げません。

本会に名誉会長及び相談役を置くことができます。
第8条

この会の経費は、会費、寄付金、事業収入、その他によって賄います。

個人会費の額は、幹事会で決定します。

この会の会計年度は、7月1日に始まり、翌翌年6月30日までとします。
付則

この規約は、1999年10月24日改正、実施

この規約は、2001年12月9日改正、実施