雇用連情報第47号


発行  全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行責任者  竹下義樹
編集責任者  伊藤慶昭
連絡先  田中章治(事務局長)
   〒334-0071 埼玉県川口市安行慈林645-4
   電話 048-285-9935
   電子メール koyourenアットマークnpo-jp.net
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   郵便振替 00150-4-67809(加入者名 田中章治)
発行日  2001年3月1日

(この情報誌は活字版(標準サイズ)、点字版、テープ版、フロッピーディスク版、電子メール版(雇用連メーリングリストで配信)で製作されています。必要な方はご連絡ください。)

目次

まえがき
労働省交渉報告
厚生省交渉報告
ナショナルセンターと語ろう集会の報告
蓮田市の視覚障害職員第1号をめざす運動の現状と課題
特別養護老人ホームにおける視覚障害者マッサージ師問題の報告
仁王・沼宮内両治療院の廃止と針灸師解雇に対する反対運動のまとめ
中途視覚障害者の現職復帰
<職場レポート>大阪府立図書館職員として採用されて
雇用連に期待する
雇用連の広場
 (資料1)労働省への要望書
 (資料2)厚生省への要望書
 (資料3)2000〜2001年度 政策・制度 要求と提言(抜粋)
短信




まえがき

 『雇用連情報』第47号をお届けします。

 本会の構成団体である日本盲人福祉研究会(文月会)では、現在解散することが検討されており、 雇用運動も新たな展開を迎えることとなります。

 ともに活動していただける方を求めています。財政的支援も大歓迎です。 みなさん、よろしくお願いします。

(伊藤 記)




労働省交渉報告

事務局長  田中 章治

 

 毎年恒例となっている雇用連の秋の労働省交渉は、2000年10月23日(月)午前11時から12時まで行われました。労働省側の出席者は、障害者雇用対策課の望月、吉泉の両専門官、浅賀雇用指導係長、職業能力開発局特別訓練対策室の喜久川事務官の4氏でした。雇用連側は竹下会長以下約10名が参加しました。 要望項目に対する労働省側の回答は以下の通りです。(要望書は別掲、なお、今年は要望項目が多かったため、 *印のついている項目のみ回答がありました)。

 

要望2 病院マッサージ師(あはき師)や電話交換手など解雇された視覚障害者に対する雇用対策について

回答  解雇が発生した際には、同一業種における再就職支援のほか、ヘルスキーパーや事務的職種など新たな職域を開拓し、再就職のための支援を行っている。また、緊急雇用対策として、職場実習とトライアル雇用からなる障害者緊急雇用安定プロジェクトを実施している。

要望4 職場介助者の配置にかかわる助成金の支給期間を全雇用期間に拡大することについて

回答 本助成金は、障害者雇用納付金会計を財源としている。現在、雇用率は年々上昇しており、 支給期間の全雇用期間への拡大は難しい状況にある。

要望5 病院マッサージ師(非事務的職種)に対する職場介助者の委嘱に関する改善について

回答
(1)年間24万円、回数制限なしとし、介助日を増やす件については、平成9年4月の改正の際、あはき業にかかわる事務的作業として、月2回のレセプト請求の事務に介助が必要との障害者団体の助言を受けた経緯もある。大幅な改正をするのは困難である。
(2)複数の被介助者に対して、1人の介助者を重複して委嘱することについては、視覚障害者の業務遂行 にとって、必要な介助が十分に行われなくなる恐れもあるため、慎重な検討が必要である。
(3)年間利用限度額の引き上げについては、障害者雇用納付金会計は限られた財源で運用されており困難 である。

要望7 重度視覚障害の公務員に対するサポート体制の制度化について

回答 人事院とも協力しつつ、今後とも重度視覚障害者の働く環境や支援のあり方について、適宜各省庁に広報し、 理解を求めていく。

要望8 特定身体障害者に適用される特定職種(あはき師)について、 特定身体障害者雇用率100分の70の達成指導の強化について

回答 毎年6月1日現在の「雇用状況報告」の中で、特定職種についても調査を実施している。雇用率未達成の国・地方公共団体の機関に対し、達成するよう指導していきたい。また、同雇用率の達成が努力義務となっている民間企業に対しては、必要に応じて雇い入れ計画を作成させる等、達成のための指導をしていきたい。

要望10 視覚障害者の適職とされる、病院や特別養護老人ホームのマッサージ師の雇用啓発の ためのマニュアルの作成について

回答 これらは重要な職域であると認識している。その際、職場定着推進マニュアルなどを活用していく。

要望12 復職した中途視覚障害者に対する職場定着指導、とりわけ、職業相談員の増員、 企業内の障害者職業生活相談員の役割の発揮などの対策について

回答 職場定着指導は、復職した中途障害者に対しても実施している。5人以上障害者を雇用する事業所は、障害者職業生活相談員をおくことになっている。職業相談員については、予算上増員することは困難である。また、中途障害者の職場復帰に際し、作業施設の設置や職場適応措置の実施のための雇用継続の助成金を支給している。

要望14 視覚障害が悪化し、盲学校や国立視力障害センターなどのあはき師養成過程に進んだ者に対する職業訓練手当の支給について

回答 訓練手当は、法律に定める「公共職業訓練」の訓練生を対象として、職業安定所の受講指示により決定されるものであり、支給対象とすることは困難である。

要望15 幕張の障害者総合職業センターに研修施設を設置し、ビジネスの基礎である接客マナーの研修、経営の基礎である情報処理、専門的な伝統技能の再訓練ができるようにすることについて

回答 本センターにおいては、基本的な労働習慣の体得を目的とした職業準備訓練、OA機器などの基本的操作技能および職業につくための知識などを付与するための職業講習等を実施している。対象者ごとに必要性に応じた個別カリキュラムを作成し対応している。伝統的技能の再訓練については、施設の計画(研究部門との連携による職業リハビリテーション技能の開発)からみて、対応は困難である。

【総括】  労働省側の回答は、現行制度の説明という部分もあったが、概ね丁寧な説明だったという印象である。今後の運動しだいで実現の可能性が出てきた項目も幾つかあった。視覚障害者の実態にあった雇用・就労対策にするために、引き続きがんばっていきたい。




厚生省交渉報告


 労働省交渉を行った年10月23日の午後、雇用連は厚生省と交渉したので、次の通り報告します。

要望1.あはき師が業務をおこなうにあたっては、免許証を適当な場所に掲示するか、その写しを携帯しなければならないことを義務づけること

回答 無資格あはき師については、各都道府県保健所を通じて適正に指導・監督している。
 免許証の携帯等は業団体を中心に自主的にお願いしたい。

要望2.サウナ・健康ランド等におけるあはき無免許業を取り締まるために、免許証(免許証明書)の掲示等の行政指導を強めること。(社)日本サウナ協会が主催するサウナ健康士養成事業については、無資格マッサージ業を助長するような講習はとりやめるよう行政指導を強めること。同協会は、自主規制として従事者の免許証(免許証明書)の掲示をおこなうこと

回答 サウナ・健康ランド等におけるあはき無免許業については、その事例を教えていただきたい。調査し検討したい。
 また(社)日本サウナ協会が主催するサウナ健康士養成事業については、無資格マッサージ業を助長することなく協会を指導していきたい。

要望3.高齢者・障害者施設等に視覚障害のあはき師を配置し、入所者の健康の保持増進をはかるようにすること

回答 現時点では考えていない。

要望4.介護支援専門員資格試験においては、拡大読書器の完備、試験時間の延長等の視覚障害者への配慮をすること

回答 拡大文字、点字受験者については配慮している。今後も不備な点・要望等に応えていきたい。

要望5.視覚障害者(全盲者を含む)である介護支援専門員の業務が、適正に行なえるよう、人的、物的条件を整えるようにすること

回答 介護支援専門員関係のパソコンソフトについては関係機関に要望を伝えます。

要望6.保健医療機関で働く視覚障害であるあん摩マッサージ指圧師の雇用状況に関する調査を、定期的に実施すること。緊急に、視覚障害者である、あん摩マッサージ指圧師の解雇の実態を明らかにする調査をおこなうこと

回答 この件は労働省との関係が深い。今後省庁再編の中で連携を図りたい。

要望7.介護老人福祉施設における人員基準の機能訓練指導員は、資格制度を採用し、業務規定は廃止すること。または、機能訓練指導員として、理学療法士、作業療法士、看護職員、柔道整復師、またはあん摩マッサージ指圧師を、常勤専従で1人以上を配置した場合の点数加算を増額すること

回答 現状では難しい。介護保険がスタートしたばかりでその推移を見たいところである。




ナショナルセンターと語ろう集会の報告  

 

 10月22日、東京都障害者福祉会館において、連合、全労連という手のナショナルセンター(全国の労働組合の結集する労働中央団体)の役員の方をお招きして、障害者の雇用促進についての政策をお聞きするとともに、私たちの要求を伝える集会を行いました。

 午前中は連合の松浦総合労働局長をお迎えして進めました。まず、厳しい雇用情勢が報告され、続いて別掲の「障害者の職務・職域拡大施策」に沿って連合の政策が紹介されました。分量が多くなるので雇用問題一般に関するお話の内容は省略し、障害者関連で出された問題としては、

・障害種別の対策が弱いので(視覚障害者としての)意見を聞きたい
・バブル経済の崩壊、そして自治体などの予算削減により、障害者を多数雇用している所が価格競争で負けるという問題がある

 などがあげられました。連合としても、障害者を雇っている事業所から物品を購入するなどして支援しているとのことです。

 会場からは、病院におけるマッサージ師の厳しい状況、新職業の開拓だけでなく雇用継続の問題も考えてほしい。中途障害者の職場復帰の問題、教育委員会などでの障害者雇用の拡大、職場介助者に対する助成金が最長10年しか受けられないことなど、さまざまな問題が報告されました。それに対して、松浦総合労働局長からは、今日出された問題を検討して、どのように取り組んでいくのか回答をいただけるとのお話がありました(本誌の編集段階ではまだお答えをいただいていません)。

 午後は、全労連国民運動局社会保障対策部の石川さんに来ていただきました。まず、厳しい雇用情勢について報告がありました。現業部門の独立行政法人化の動き、行政サービスの民間委託が進んでいること、国などの補助金カット、不安定雇用などです。障害者については細かい政策をもっていないとのことですが、世界人権宣言の主旨からも雇用の確保と働きに見合った賃金の支払いを求めていく必要があることが述べられました。

 会場からは、作業所などの実態、職場介助者助成金の問題、中途障害者の職場復帰の問題、教育委員会での低い障害者雇用率の問題などが出されました。全労連としてもこれらの要求を持ち帰って検討していただけるとのことでした。

 最後に竹下会長から、「今まで労働組合と政策的・継続的な意味で連帯してこなかった。今日の接点を大切につながっていきたい。今後の私たちの運動もふくめた課題として、視障者に不安定就労が多いが(一般的に)不安定就労の(権利などが)問題になる中で、どのように運動していったらいいのか、組合や職場からの声で職域が拡大できるような運動をどうしたらつくれるか、雇用契約ではない就労(作業所など)の労災保障の問題をどうするかなど、多くの問題がある」というまとめがありました。




蓮田市の視覚障害職員第1号を
めざす運動の現状と課題

東視協事務局長 山城 完治

 

 「点字に携わる仕事に就きたい」と、その青年・足利昌彦さんは語りました。 1999年3月に開いた就労相談会でのことでした。彼はその後「市で視覚障害者を採用してほしい」との手紙を蓮田市長に送り、その願いを膨らませました。東視協でも、足利さんの要求を実らせようと運動を起こすことになり、蓮田市市民や埼玉県立盲学校の進路担当職員の方々と力を合わせて、 下記の取り組みを実施してきました。

運動の歩み
1999年9月  雇用相談会(2度目)で、足利さん蓮田市への働きかけについて発言
    10月  蓮田視覚障害者の雇用を進める会結成
    11月  視覚障害者の採用と点字試験の実施について蓮田市長と懇談
2000年2月  蓮田市議会に陳情書提出
     同  蓮田市議会議員に集まっていただき陳情の主旨説明
   3月より 蓮田市議会請願署名に取り組む
    4月  蓮田駅頭署名行動
    5月  埼玉土建労組・蓮田養護学校などに署名運動の支援を申し入れ
     同  4000名を越える署名を市議会に提出
    6月  請願が市議会で採択
    10月  点字使用の市覚障害者の採用と点字による市職員採用試験の実施を市長に要請

運動の課題

 「点字使用者として市で働きたい」という声から始まった私たちの運動は、1歩1歩進んできています。市議会での請願採択を受けて行われた10月10日の要請の席で、市長は「視覚障害者の働きぶりを実際に見て、働くに当たっての課題や疑問点を整理する」と私たちに答えました。図書館をはじめ国や自治体で多くの視覚障害者が働いている現状をしっかり見て、前向きに取り組めば採用できるはずです。

 今後私たちは、市の職員の方々に視覚障害者の暮らしや労働の実態、なによりも一緒に働けることを知らせる取り組みを企画したいと考えています。写真やビデオで、働く視覚障害者の姿を市職員に見てもらうために、市役所でパネルによる展示会に取り組む予定です。本誌の読者のみなさまにも、写真のモデルになっていただきたいと思っています。

 だれしも、自立し社会生活するために教育を受け、歩みます。しかし、視覚障害者・点字使用者の就労の道は、あまりにも狭く険しいものです。蓮田市の視覚障害者の採用は、84人の市内の視覚障害者はもとより、埼玉の・全国の視覚障害者に、社会に大きな希望となります。そして私たちはこの運動が、地域における視覚障害者雇用促進の運動へのはずみとなることをめざしたいと思います。




特別養護老人ホームにおける
視覚障害者マッサージ師問題の報告 

稲垣 実

 

 東京都が一昨年「福祉の見直し」と「介護保険制度導入」による特別養護老人ホームに対する、マッサージ師の人件費を含む都加算事業の全廃方針を打ち出しました。  これに対し、私たちは次の3つの要望を掲げました。

要望1  視覚障害をもつ学生の「就労の希望の星」となっている特別養護老人ホーム就労の灯を消さないでください。
要望2  現在就労している視覚障害をもつマッサージ師を、介護保険制度下においても継続雇用できるようにしてください。
要望3  介護保険施設サービスの維持、向上にはマッサージ師の行う業務は欠かすことのできないものです。

 この要望趣旨に基づき東京都議会に請願署名を行い、また、関係機関との交渉などの活動を行ってきました。

 請願署名については、趣旨に賛同してくださった皆さんのおかげで、約1万名の署名が集まりました。結果不採択になりましたが、都議会で論議されたり、多くの人にこの問題を知っていただくことができました。関係機関との交渉では、厚生省が「東京都が加算することは問題ない、東京都の問題だ」と、東京都は「介護保険制度は保険制度なので東京都が加算をする整合性がない」「厚生省に介護保険制度において対応できるよう働きかけたい」との一辺倒でした。その後も粘り強く活動を行いました。結果、厚生省は、介護保険制度において機能訓練指導員の資格要件に、あんま・マッサージ・指圧師が入り、配置することにより介護報酬に加算されることになりました。

 東京都は介護保険制度を円滑に進める目的で「特別養護老人ホーム経営支援補助金事業」を実施することになり、その中にあんま・マッサージ・指圧師加算として位置づけられました。

 しかし、この事業は公設には適応されず、3年後には見直し、マッサージ師加算は平成12年度以降の新規採用には適応されません。現状では視覚障害者雇用の促進にはなっていません。今後も視覚障害者の雇用促進という視点にたった制度を国と東京都に働きかけて行きたいと考えています。




仁王・沼宮内両治療院の廃止と
針灸師解雇に対する反対運動のまとめ

沼宮内治療院  盛内 克則

 

はじめに

 仁王針灸治療院は、1967年に盛岡民主診療所(今の仁王診療所)に併設して開設された。沼宮内治療院は1968年に岩手町の工藤医院に併設して開設された。多いときには三つの治療院で14人の針灸師が働いていたこともある。現在は二つの治療院と二つの物療で5名働いている(昨年は6名だった)。

経過

 1999年8月9日に、盛岡医療生協理事会は、医療生協労組に対し、口頭で、9月末で仁王・沼宮内両治療院の廃止と、4名の針灸師の解雇を通告した。同じ日に私たちは執行委員から話をきき、8月17日に針灸師の集まりをもつことにした。そこでは96年までに開かれた針灸対策委員会の経過を確認し、退職もありうるかと話しあったが、まず労組と相談することに決めた。

 労組との話し合いの中で、解雇は簡単にはできないこと、使用者がこうなるまでに努力をしたのか、解雇には最高裁の四つの条件という判例もある。などなど、医労連の助言もあって廃止と解雇をやめさせる闘いに立ち上がった。労組を中心に、視覚障害者にも訴える運動がはじまった。

 8月30日の団体交渉で、理事会は手続き上、9月末の廃止と解雇はない、解雇は労組との合意なしには行わないと回答した。9月の労組との話し合いで、医労連の代表から、抗議活動はやめたほうがよいのではないかとの意見があったが、私たちの現状からして、今はやめないといった。私たちの感覚との温度差を感じた。

 12月末までに60通近い抗議葉書がくる中で、医療生協の総務部から、まだくるのかと悲鳴がきこえてきた。12月に入って理事会は料金の改訂を1月から行うことを決めた。2000年5月の総代会では、針灸治療院の廃止をふくむ中期計画の見直しが決定された。しかし私たちもふくめて、経営を一定の軌道に乗せないといつ廃止が出てくるとも限らない。

考察

 よかったこととして、労組を軸に闘うことができたこと。機敏に反応できたこと。全国の視覚障害者の仲間に支援を受けたことなど、運動の成果があがった。問題点としては、退職者を1名出したこと。私たち自身も、最初から針灸の職場を廃止するな、視覚障害者の職域を守れといえなかったことなど。私たちにとってもこの運動で得た経験は大きかった。

まとめ

 私たちの針灸の職場には三つの願いがある。
  1、東洋医学を普及する。
  1、患者の立場に立って治療を行う。
  1、視覚障害者の運動として位置づける。

 この伝統を再確認させられた運動だった。全国の視覚障害者のみなさんに心から感謝いたします。これからも全国の仲間と手をとりあって、進んでいくことを表明して、報告に代えさせていただきます。




中途視覚障害者の現職復帰

大阪視覚障害者の生活を守る会  二見 徳雄

 

 私は、このたび全国の皆さんのご支援のおかげで、職場復帰を勝ち取ることができました。職場はもちろん、元の大阪市城東区にある野江電力所の架空保線課です。従来と同じ机上の設計業務を行っています。

 裁判所の調停による和解が成立したのは、5月30日ですが、その和解条項により6月1日付けで社員に採用され、今日に至っています。  和解が成立したのは最終的な裁判所の民事調停法17条に基づく判決に代わる「決定」に原告・被告双方が異議を唱えなかったことから実現しました。その内容は、

  「・平成8年当時は解雇でなく合意退職とする。
   ・平成12年6月1日付けで社員採用する。
   ・職場は野江電力所で机上の設計業務とする。
   ・退職金と解決金を原告に支払う。」 等でした。

 私達は、一部給料面などの不満足な面はありましたが、「現職復帰で、事実上の解雇撒回であること」「裁判の目的は判決で白黒をつけることでなく、職場復帰にあること」などの認識で、この決定に応じました。異議を申し出る機会は2週間ありましたが、被告関西電力も長期化することによる不利益も考えたのでしょう、和解が成立しました。

 私もその時は、少し気合いが抜けた感じがし、これで闘いは終わったとほっとしました。しかし、2、3日は忙しく、30日の夜にはA新聞が取材にくる、31日は午後より大阪地方裁判所の記者クラブで弁護団の先生方と共同の記者会見に応じました。記者会見には10人ほどの支援の仲間もかけつけてくれ、見守っていただきました。皆さんの中でもテレビや新聞で和解成立を知っていただいたことと思います。

 さて、あわただしい中で6月1日を迎え、辞令を受けた後、もとの職場に向かいました。野江電カ所では所属長の案内で、各課に挨拶に回り、歓迎の拍手を受けました。昔の知り合いは「二見さん、歩けるんですか」などと、私達視覚障害者のことが分かっていないと思える反応もありました。

 私が健常者の職場で、補助器具を使い、一定の援助のもと、働くことでできることを理解してもらおうと考えています。

 職場の毎日は、全員での体操から始まります。そして、私の机のある拡大読書器と拡大ソフトのついたパソコンに向かいます。IT革命で、一人一台のパソコンとPHS、そして連絡は電子メールの時代です。拡大することによる理解の遅さはありますが、慣れることで、ロータスやエクセルも理解することはできます。

 中途視覚障害者が、皆様のおかげで復職できたことを報告し、お礼とさせていただきます。




<職場レポート>
大阪府立図書館職員として採用されて

杉田 正幸

 

 今年(2000年)大阪府立図書館職員として採用された私は、4月から府立中央図書館司書部閲覧第三課対面朗読室で働いております。都道府県立図書館で働く全盲の司書は東京、埼玉、千葉にいますが、西日本では初めてで、多くの人から期待の声をいただきました。

 筑波技術短期大学在学中に近畿大学の通信教育で図書館司書の資格を取得しました。就職活動では、地元の埼玉県内の市立図書館を中心に、関東地方の公共図書館に対しての点字受験を求めてきましたが、1年目は思うような結果を出すことができませんでした。国立国会図書館の点字受験拒否、各自治体に対しての嘆願書も、ほとんどが「視覚障害者を採用するだけの環境が整っていない」との解答でした。

 2年目には宮城県の身体障害者特別枠採用試験と、大阪府立図書館の司書の採用試験に合格することができました。いろいろと悩みましたが、公共図書館で働くことが夢でしたので、大阪府に就職することを決意しました。

 大阪府立中央図書館は1996年5月10日、大阪府東大阪市に開館した、比較的新しい図書館です。1974年に開館した夕陽丘図書館での対面朗読サービスを引き継ぎ、府立での唯一の障害者サービス館となっています。

 現在、私は図書館の1階にある視覚障害者へのサービスをしている対面朗読室に配属されています。対面朗読室は私を含め職員4人が、専任職員として配置されています。対面朗読室7室、録音室1室、そして対面朗読事務室から構成されています。

 私の業務は、対面朗読利用者とボランティアの日程調整、点字図書・録音図書の所蔵調査と借受貸出、墨字図書新刊案内の作成、レファレンス、視覚障害利用者へのパソコン利用サポート等です。

 図書館には私が採用され、業務用の音声パソコン(ノートパソコン)を導入していただきました。周辺機器としては、スキャナー、点字ピンディスプレイ、ソフトとしては、95ReaderやPC-Talker、OutSpokenなどの音声化ソフト、ヨメールや「よみとも」などのOCRソフトなども導入していただきました。ほとんどの事務的処理はこれらパソコンシステムを活用して行っています。

 また、視覚障害のある図書館利用者が使えるパソコンシステムも導入していただきました。OCRや点訳ソフトの利用、パソコン通信を使っての府立図書館の蔵書検索、インターネットを利用した各種コンテンツへのアクセスなどを、視覚障害者がいつでもできるようにしています。視覚障害利用者にパソコンの操作指導をすることも、私の大きな仕事の一つです。

 今、私の新たな仕事としてDAISY図書の作成があります。DAISY図書の編集には点字ピンディスプレイを用いて、ほとんど一人で行っています。視覚障害者サービスの中心は、近いうちにDAISYに移行されるでしょう。

 府立図書館は公共図書館として課題も多くあります。利用者の声をできるかぎり館の業務として生かせるよう、今後がんばって行きたいと思います。




雇用連に期待する

前埼玉県立盲学校長  堺 正一

 

 全国視覚障害者雇用促進連絡会の20周年記念誌を読ませていただいた。「継続は力なり」の意味をあらためて教えられ、関係者のたゆまぬ努力に敬意を表するものである。私だけではなく、その前向きな活動の姿勢と不断の努力に励まされた者は少なくないにちがいない。

 しかし、視覚障害者の雇用状況は、相変わらず厳しい状況におかれ、その新しい展開が見られず、いらだちを覚えている方も少なくないと思う。

 私は盲学校の現場から離れ、他の障害種の学校に来て2年ほどになるのだが、あらためて雇用連の在り方から教えられている。運動の具体的成果以上に、運動それ自体、活動そのものから、勇気と希望を与えられている。

 長い日本の障害者の歴史において、視覚障害者の歩みは際立っている。1000年もの歴史をもつ当道座については言うまでもなく、明治以降の障害児教育の歩みも、常に視覚障害者がリードしてきた。同様に、この雇用連に見られる運動が、どれほど私たちの励みなっているかは言葉では表せないほどである。「与えられるのではなく、雇用を作り出す」という努力が、広く障害者運動の今後の在り方を示しているように思う。

 思うに、視覚障害者の伝統的な職業といわれる「あはき」も、職域拡大の闘いの中で獲得したものであることを心に留めておかなければならない。「“あはき”きりない」のではなくて、「“あはき”もある」のである。伝統的職業の意義を踏まえたうえで、これからもあらたな職域開拓と条件の改善のための運動を創造していくのが、私たちに課せられた責任であろう。

 江戸時代末期、埼玉盲学校がある川越で活躍した盲人の国学者・沼田順義がいる。昼間は学問をし、夜は按摩で生活の糧を得て大成したという。後に川越藩に召し抱えられるのであるが、伝統的な職業があって、はじめてその才能に花を咲かせることができたのである。同校の校歌に歌われているあの塙保己一についてもしかりである。嫌でたまらなかった“あんま”の技術が、皮肉にも人生を切り開き、学者としての彼を大成させたのである。自らの力で勝ち取った伝統的職業とはそういうものだと思う。

 障害者運動全体の牽引役として、雇用連の今後の活躍を期待している。




雇用連の広場

 

★メーリングリストとホームページを開設しました(事務局次長 伊藤慶昭)

 雇用連では、このほどメーリングリストとホームページを開設しました。

 メーリングリストでは、『雇用連情報』を配信するとともに、当会の動きをお伝えしていきます。また関連情報も配信します。参加者のみなさまには、当会に対する質問や意見はもちろんのこと、就職や職場での悩みなど、視覚障害者の雇用・就労にすこしでも関係のあることならなんでも投稿していただきたいと思います。これにより全国の読者のみなさまとの交流をはかれればと考えております。特に盲学校の先生や就職活動中の方、職場で奮闘している方などの参加を歓迎します。

 ホームページには『雇用連情報』バックナンバーを中心として、必要な資料を掲載していきたいと考えております。

メーリングリストへの参加方法

 koyourenアットマークnpo-jp.netというアドレスに簡単に参加の意志表示をするメールを送るだけです。すると、メーリングリスト上に登録確認通知が掲載されます(あなたのアドレスはここでは発表されません)。

ホームページアドレス

 http://www.koyouren.npo-jp.net  

アクセスしてみてください。すでに『雇用連情報』バックナンバーが掲載されていますし、メーリングリストについての説明もあります。

会費やカンパをいただいた方々

 当会に対し、以下の方々から会費やカンパをいただきました。ありがとうございました。
(2000年12月15日現在、順不同)
乗松利幸、高木紀子、松浦清春、石河芳子、鴫野秀和、
井沢みゆき、長谷川健、根岸伸樹、平田節雄、下奥重望




資料1

  労働省への要望書

 

 1.
視覚障害者の最大の雇用の場である病院マッサージ師の解雇の事例が相次いでいます。労働省としてこの実態をどのように把握しているのか明らかにしてください。
*2.
不況とリストラの中で、病院マッサージ師(あはき師)、電話交換手等、多くの視覚障害者が解雇されている実態を明らかにし、そのための対策を講じてください(昨年の陳情では、実態調査を約束されました)。
 3.
いかなる場合にも視覚障害を直接の理由とした中途視覚障害者の解雇は認めないでください。 特に、障害者継続雇用委員会等の設置を企業に義務づけ、リハビリ期間中の解雇を許さない等、安易な解雇を認めないよう法的規制を検討してください。
*4.
職場介助者の配置に係る助成金の支給期間を全雇用期間に拡大してください。現行制度では、10年経過後サポートが打ち切られ、雇用不安が予想されますので、労働省としての解決策を示してください。
*5.
病院マッサージ師(非常勤職)に対する職場介助者の委嘱について
(1)年間24万円以内、回数制限なしとし、介助日を増やすこと
(2)同一院内に複数の被介助者がいる場合、重複して一人の介助者を委嘱できるようにすること等、被介助者の実態にあった柔軟な運用をしてください。 また、年間利用限度額の引き上げを実施してください。
 6.
職場介助者制度の事業主への周知徹底、とりわけ制度化後まもない非事務職に適用される者について活用を働きかけてください。
*7.
重度視覚障害の公務員に対するサポート体制の制度化、特に本人が申請すればサポートが得られるようにしてください。
*8.
特定身体障害者に適用される特定職種(あはき師)について、特定身体障害者雇用率百分の七十が適用される該当企業を徹底的に洗い出すとともに、国、地方公共団体は、法に基づく雇用計画を作成し、速やかに達成するよう強力に指導してください。また、同雇用率の達成が努力義務とされている民間企業に対しては、達成のための指導を強化し、必要に応じて雇入れ計画の作成を命じてください。
 9.
中途視覚障害者が努力し、学んだあはきを生かせるヘルスキーパー等への復職や再就職を積極的に促進してください。
*10.
視覚障害者の適職とされる、病院や特別養護老人ホームのマッサージ師の雇用啓発のためのマニュアルを作成してください。
 11.
在職中に中途視覚障害者が安心して訓練が受けられるように、訓練期間中の身分と所得保障を行ってください。また、生活訓練や職業訓練施設の整備、専門職員の養成等、社会資源の充実を図ってください。
*12.
復職した中途視覚障害者についても、新規雇用と同様、職場定着指導を行ってください。そのために職業相談員の増員、企業内の障害者職業生活相談員の役割の発揮等の対策を講じてください。
 13.
盲学校に進学した場合も、更生訓練施設の場合と同様、失業手当を支給し、あはき技能取得までの間、所得保障を図ってください。
*14.
視覚障害が悪化し、または転職のための盲学校、国立視力障害センター等のあはき師養成課程等の職業課程に進んだ者に対し、職業訓練手当を支給し、所得保障策を講じてください。
*15.
幕張総合職業センターに、盲学校卒業後の研修施設を設置し、ビジネスの基礎となる接客、マナーの研修、経営の基礎である情報処理・カルテや名簿管理・データベース処理、専門的な伝統技能の再訓練ができるようにしてください。
 16.
同施設で障害者の雇用を切り開くことをテーマとしたセミナーを定期的に開催してください。

 

資料2 

厚生省への要望書

 

平成12年10月23日

厚生大臣殿

全国視覚障害者雇用促進連絡会
 会長 竹下義樹

厚生省への要求

  1. あはき師が業務をおこなうにあたっては、免許証を適当な場所に掲示するかその写しを携帯しなければならないことを義務づけること。
  2. サウナ・健康ランド等におけるあはき無免許業を取り締まるために、免許証(免許証明書)の掲示等の行政指導を強めること。(社)日本サウナ協会が主催するサウナ健康士養成事業については、無資格マッサージ業を助長するような講習はとりやめるよう行政指導をつよめること。同協会は、自主規制として従事者の免許証(免許証明書)の掲示をおこなうこと。
  3. 「カイロプラクティックは、脊柱の矯正を目的とする点において指圧とは異なり、したがって、あん摩マッサージ指圧師の業には含まれない」とした1970年厚生省医務局長通知を再検討すること。
  4. 高齢者・障害者施設等に視覚障害のあはき師を配置し、入所者の健康の保持増進をはかるようにすること。
  5. 介護支援専門員資格試験においては、拡大読書器の完備、試験時間の延長等の視覚障害者への配慮をすること。
  6. 視覚障害者(全盲者を含む)である介護支援専門員の業務が、適正に行なえるよう、人的、物的条件を整えるようにすること。
  7. 保健医療機関ではたらく視覚障害であるあん摩マッサージ指圧師の雇用状況に関する調査を、定期的に実施すること。緊急に、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の解雇の実態を明らかにする調査をおこなうこと。
  8. 介護老人福祉施設における人員基準の機能訓練指導員は、資格制度を採用し、兼務規定は廃止すること。または、機能訓練指導員として、理学療法士、作業療法士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師を、常勤専従で1人以上を配置した場合の点数加算を増額すること。
  9. 介護支援専門員資格試験においては、拡大読書器の完備、試験時間の延長等の視覚障害者への配慮をおこなってください。
  10. 視覚障害者(全盲者を含む)である介護支援専門員の業務が、適正に行なえるよう、人的・物的条件を整えるようにしてください。

 

資料3

2000〜2001年度
 政策・制度 要求と提言(抜粋)
日本労働組合総連合会

6 雇用・労働政策

  1. 障害者の社会的な自立をはかりながら職業を通じた社会参加をすすめ、障害者が可能な限り一般職種に就けるよう「障害者雇用対策基本方針」の早期具体化をはかること。
  2. 障害者の法定雇用率を達成するため、雇用・就労形態別の調査などを通じて、業種別対策あるいは地域別・業種別団体等を通じた対策を充実させるとともに、雇い入れ指導や公務部門を含む未達成事業所の公表など対策を強化する。政府自らは、公務部門において法定を上回る障害者雇用の促進をはかる一方、障害者雇用の受け皿を増やすため、除外率・除外職種の見直しを早期に行うこと。
  3. 障害者緊急雇用安定プロジェクトをさらに拡充させ、トライアル雇用を常用雇用に結びつける支援策を強化するとともに、労使共同の取り組みに対する支援策を講ずること。また、一般雇用の拡大に向け、受け皿となる産業・企業における職域開発のための具体的な生産技術開発・オフィス環境開発などの研究を、当該の業種・産業の団体が積極的に行うための支援を充実すること。
  4. 国や各地方自治体が雇用創出施策を策定する際には、一定程度の障害者雇用の創出を勘案した施策とする。また、障害者雇用を安定的に確保するため、官公需の発注の際には、授産施設や障害者を一定割合以上雇用する事業所などを優先するよう、数値目標の設定を含めた措置を講ずること。
  5. 雇用対策と福祉対策が一体化した障害者対策を推進するため、「障害者就業・生活支援の拠点づくり」を全国的な展開としていく。また、知的障害者の就職支援事業の拡充とともに、精神障害者については、医療機関と連携しジョブガイダンス事業をさらに拡充すること。
  6. 障害者に対する在宅就労支援事業を拡充し、従来行われていたパソコンの無料貸与や、障害者団体などに対する仕事の発注に向けた支援措置を強化すること。また、これらの発注単価が適正に設定されるよう、関係審議会の連携によりガイドラインを策定すること。

短信

★タートルの会の復職事例

 タートルの会(中途視覚障害者の復職を考える会)が最近関わった復職事例 (1999年6月以降分)を以下に紹介します。個々の具体的な内容については、 会報に掲載していますが、タートルの会のホームページからも会報にアクセス できます。
URLはhttp://www.asahi-net.or.jp/~ae3k-tkgc/turtle/index.htmlです。

 以上の他にも、大学在学中に視覚障害者となり、医師からの紹介でタートルの会で交流するなかで就職を果たした事例などもあります。このように、最近は治療段階でタートルの会と繋がり、復職や訓練に繋がったケースも見られるようになりました。今回の復職事例には、労働組合が積極的に支援してくれたケースや、障害者職業センターが関わったケースも少なくありません。

 タートルの会は1995年6月に結成されて以来、地道に相談支援交流活動をしてきました。この間に『中途失明〜それでも朝はくる〜』を発行し、これが相談活動に繋がったという例も少なくありません。5,000部を印刷したこの本も残り少なくなり、増刷を検討しなければならなくなりました。これも嬉しいことです。21世紀は私たちにとって明るい社会になるよう、引き続き地道に活動を積み重ねていきたいと思います。

(文責 タートルの会幹事 工藤正一)