雇用連情報 第46号
発 行 全国視覚障害者雇用促進連絡会
発行責任者 竹下義樹
編集責任者 伊藤慶昭
連 絡 先 田中章治(事務局長)
〒334-0071 埼玉県川口市安行慈林645-4
電話 048-285-9935
電子メール LLJ07857アットマークbiglobe.ne.jp
郵便振替 00150-4-67809(加入者名 田中章治)
発 行 日 2000年5月1日
(この情報誌は活字版(標準サイズ)、点字版、テープ版、フロッピーディスク版、電子
メール版で製作されています。必要な方はご連絡ください。バックナンバーはインター
ネット上の次のところからダウンロードできます。
http://www.asahi-net.or.jp/~ae3k-tkgc/koyouren/)
『雇用連情報』第46号をお届けします。
当会も結成20周年を迎え新たなスタートをきりました。規約も改正し、雇用問題にとりくもうという多くの団体・個人の結集を求めていきたいと考えております。
いつもの「職場レポート」の代わりに視覚障害を理由に解雇されて闘っている二見さんから投稿をいただきました。雇用継続を運動課題に加えることとなった当会として、しっかりと受けとめていきたいと思います。なおこの冊子がみなさまのお手元にとどくころには状況が変化しているかもしれませんので、関心のある方はお問い合わせください。
埼玉県蓮田市で雇用運動がはじまりました。こちらも注目したいと思います。
(伊藤 記)
事務局長 田中章治
毎年秋に実施している労働省との交渉が、1999年10月25日(月)午前10時〜11時まで行われました。雇用連側の参加者は東郷副会長はじめ10数名、これに対し当局側の出席者は障害者雇用対策課の望月雇用専門官、浅賀雇用指導係長、特別訓練対策室の岡本事務官でした。以下、簡単に要望書に対する労働省側の回答を記します(要望書は資料1参照)。
1999年は、雇用連が結成され20周年を迎える記念すべき年でした。そこで雇用連では、この節目の年にちなみ、かつ、また新たなる運動の発展をめざして、記念のイベントを開催しました。この「記念の集い」は、10月24日、東京東池袋の「簡保ヘルスプラザ東京」において開催されました。
まず第1部では、竹下会長の挨拶の後、関西落語の笑福亭伯鶴さん、金沢大学助教授の福島 智さんのお二人から講演がありました。いうまでもなく、お二人は視覚障害者でありながら(福島さんは盲聾者)、大いに努力され独自の道を開かれました。お二人の軽妙な語り口はしばしば会場の参加者を爆笑の渦に巻き込みながら進行しました。そしてそのお話のなかに「私はこう生きている」という私たちおよび社会に対するメッセージがこめられており、参加者に感銘を与えました。
講演会に引き続き第2部「記念レセプション」が開催されました。レセプションは竹下会長の開会挨拶の後、会結成当時の事務局長をされていた西岡氏の乾杯の音頭を皮切りに進められました。参加者は堀参議院議員をはじめ、視覚障害者の雇用・就労促進の運動をしておられる幅広い方々の参加を得て、大きな盛り上がりを見せました。多くの視覚障害者関連団体の代表の方から、「今後の雇用運動の課題」や「今後の雇用連に期待すること」などさまざまな提言をいただきました。また、もと雇用連の役員だった方々からは、「私と雇用連」ということで思い出話もとびだしました。
この「記念の集い」は、第1部、第2部合わせて、述べ120名の参加があり、成功のうちにその幕をとじることができました。「集い」の成功にむけてご協力いただきましたすべてのみなさまに、この紙面をお借りして心より感謝の意を表します。20周年を基に、次なる1歩をどう踏み出すか、それが問われていると思います。「雇用運動における共同」、これこそ今後のキーワードだというのが、私が「記念の集い」に参加しての結論でした。 (文責 田中章治)
馬渡藤雄
雇用連は昨年結成20年をむかえ、これを記念してこの小冊子をつくりました。活字(墨字)版はA4版95ページ1000円、点字版3000円です。テープ版もあります。
内容ですが、20年間の運動の中から主なものを選び、当時担当された方たちに健筆をふるっていただきました。
西岡さんに「結成秘話」を、橋本さんに「国会請願」、高橋 実さんに雇用連が10余年にわたって追求してきた「国家公務員点字受験」を、田中章治さんに「職場介助者助成制度」を、そのほか飯嶋公子さんと神戸定子さんの支援活動などをズームアップしています。
そして雇用連運動の基礎を築いてくださったお二人の故人、松井新二郎さんと中村紀久雄さんを忍ぶ追悼文をいただきました。
さらに今後の雇用運動に対する貴重な提言が、6人の方々からよせられています。
最後に職業、雇用に関する文献の紹介と雇用運動の年表を付しました。資料としてご活用いただきたいと思います。
全国視覚障害者雇用促進連絡会の皆様、私は大阪府堺市に住んでいます二見と申します。この度、貴会より「私の職業」という題で記事を書いて欲しいとの依頼を受けました。しかし、私はご承知の方もあるかと思いますが、永年勤めていた会社から、中途視覚障害を理由に解雇され、現在裁判中の身です。ですから、解雇以前に従事していた仕事のこと、及び裁判の経過などについて述べさせていただきます。
私の勤めていた会社は関西電力株式会社で、工業高校を卒業以来、30年間働いてきました。従事してきた職種は架空送電線路の新設や保守の設計の仕事でした。架空送電線路というのは、発電所で発生した電気を消費地の近くまで運んでくる特別高圧の電線路で、大きな鉄塔で支えています。
発病するまでは大阪北支店の野江電力所の架空保線課に在籍し、架空送電線路を維持していくための設計をしていました。設計と言っても、細かい図面を作ったりするのではなく、修理が必要な個所の予算を検討し、請負業者に依頼するための社内手続きを行う内勤の仕事です。
野江電力所が担当していた保守範囲は大阪府の北部で北は枚方市、南は東大阪市の一部に囲まれた範囲です。
私が視神経炎という病気になったのは46才の時でした。少しずつ、視力が落ち、関西電力病院で診察を受けると、両眼とも視神経炎ということで入院し、ステロイドの点滴治療を受けました。しかし、その後病院を大学病院に変えたり、漢方や鍼灸治療をしても直らず、2年ほどして障害者手帳を受けました。そして会社は休職期間が満了するときに健常者と同じようにワープロが使えない、視力が悪くてはもとの仕事ができないとして解雇されたのです。
私が視覚障害者の生活を守る会を知り、日本ライトハウスを知ったのは解雇される1週間前ぐらいでした。
私は関西電力が中途障害を理由に、かつ配置換えの検討もせずに解雇するのは不当だと思い、平成9年の2月に大阪地方裁判所に提訴しました。
裁判は5月から約2月毎のペースで審理が進みました。当初は野江電力所架空保線課の設計担当者の仕事の内容を明らかにし、その中で被告側の一人で現場調査をする必要があるとの主張への反論、復職願いの内容証明郵便に対する被告の検討の有無等が争点となりその後最高裁小法廷の判例を受けて、社員採用時の職務が限定でなければ配置換えの検討の必要性などが争点となりました。
平成10年の11月と12月に証人尋問が行われ、原告側の証人には私と日本ライトハウスの面高部長が立ちました。大阪市鶴見区にある視覚障害者のリハビリテーションセンター、日本ライトハウスには提訴後、第3生活訓練生として通ってワープロなどの指導を受けていました。大企業を相手の裁判の障害者側の証人になっていただいたことは、今でも感謝しています。そして、12月の被告関西電力側の証人尋問では、私の解雇を決定した人事課長が出てきましたが、障害者雇用の検討や配置替えの検討の有無を問われ、答えられず、何度も立ち往生していました。
また、証人尋問が終わった後、非公開で裁判所に日本ライトハウスのパソコンや拡大読書機を持ち込んで読み書きやワープロ操作のデモンストレーションも行いました。
それらが終わった後、裁判所より、関西電力に和解条件の検討をするよう依頼があり、その延長線上で平成11年5月から8月にかけての「試用」に発展しました。
この試用とは、視覚障害者用の補助器具を使って、私が発病前にやっていた実際の仕事をやって見るという、いわばテストでした。私は厳しい環境での3か月間でしたが、ほぼ設計者としての仕事はしたと思っています。
そして現在は仕事の評価を受けて復職をさせるか、またその条件は、等の協議が始まっています。今日までの裁判を通じて、中途視覚障害を理由とした解雇の不当性は明らかとなったと思います。
長い報告となりましたが、解雇を撤回させ、職場復帰が実現するまでがんばりますので、皆さんのご支援を心からお願いします。
2月21日、蓮田市議会に対し陳情を提出。市議会議長と各会派の代表議員で構成される代表者会議の場において、陳情趣旨の説明を行いました。
この運動は地元蓮田市において、福祉や点字文書の発行に関わる仕事に就きたいという会員からの要望により始まりました。蓮田市には現在約80人の視覚障害をもつ市民が生活していますが、点字ブロックの敷設の遅れや点字の広報の発行がないなど、障害者施策が十分に行き届いているとはいえません。視覚障害者が市の職員として働くことの意義や点字試験の実施を訴え、昨年11月には本人を交えながら、蓮田市長との懇談の機会をもちました。その後、今回の市議会への陳情提出へと運動を継続させています。
市では視覚障害者を採用した経験はなく、当事者団体からこのような要望を受けたのも初めて。市長や市議会議員には新鮮な驚きをもって迎え入れられたような気がします。点字のお知らせが届いて初めて情報が得られることや、ひとり歩きの不自由など日常の生活実態から話し、全国の公共図書館で働く視覚障害職員の例をもとに、雇用の可能性を訴えました。また、この場には「埼玉視覚障害者の生活と権利を守る会」の代表者と埼玉県立盲学校の進路担当の先生が同席して下さいました。
今後、6月市議会にむけて請願活動を行います。市内の障害者団体やボランティアグループ、養護学校PTA、盲学校など幅広い関係団体への協力を呼びかけていきたいと思います。まだ運動を支える基盤が弱く、地元での運動の経験も浅く、機会が熟すまで待つことも多いです。運動を「読むこと」で評価せず、いまある運動を見にきてください。
請願署名の問い合わせは、当会事務局・宮澤(TEL:03-3581-2331 内線3018、図書館)までお願いします。
雇用連(全国視覚障害者雇用促進連絡会)の第11回総会が、1999年10月24日午前10時30分から12時まで、東京東池袋の「簡保ヘルスプラザ東京」に於いて開催されました。総会では、2年間の活動と決算の報告がなされ、原案通り承認されました。
討議された主な内容としては、雇用連も協力した「病院マッサージ師関係の署名」が18000筆集まったこと(請願は不採択)、病院マッサージ師の解雇が相次いだこと、東京都における特養(特別養護老人ホーム)マッサージ師の身分が危うくなっている問題、中途視覚障害者の復職に向けてのとりくみ事例などでした。
続いて活動方針案、予算案が提案され、若干の修正の後、承認されました。今回は、規約の改正案が提案されました。主な改正点としては、
1 「雇用」のみならず「職場定着」すなわち職場を守る運動にも力を注ぐ。
2 文月会、全視協の2団体のみならず、広く団体、個人の参加を認める。各々の会費の額は幹事会で決定する。
などです。
最後に新役員が提案され、次の方々が幹事に選出されました。
会長:竹下義樹規約改定により、読者のみなさまから会費をいただくこととなりました。加盟団体からの分担金だけでは財政が苦しいうえ、運動を広げていきたいと思っておりますのでご協力お願い申し上げます。年会費はつぎのとおりです。詳細については事務局までお問い合わせください。
団体会費:一口 2,000円(何口でも)1999年10月25日 労働大臣 牧野隆守様
全国視覚障害者雇用促進連絡会
会長 竹下義樹
1.視覚障害者の最大の雇用の場である病院マッサージ師の解雇の事例が相次いでいます。労働省として、この実態をどのように把握しているのか明らかにしてください。
2.不況とリストラの中で、病院マッサージ師(あん摩マッサージ指圧師)、電話交換手等、多くの視覚障害者が解雇されている実態を明らかにするため、緊急に同調査・研究をおこない、対策を講じてください。
3.職場介助者の配置にかかる助成金の支給期間を、全雇用期間に拡大してください。現行制度では、雇用されてから10年を経過してサポートが受けられなくなることにより雇用不安がおこることが予想されますが、この問題についての労働省としての解決策を示してください。
4.病院マッサージ師(非事務職)に対する職場介助者の役割は、日々のカルテ、院内報等、専門情報等の文字処理への介助であり、現行の支給要件である「年24回以内」では実態にあいません。現行のもとでも、@「年間24万円以内、回数制限なし」とし、介助日を増やすこと、A同一院内に複数の被介助者がいる場合は、重複して一人の介助者を委嘱できるようにすること、B同一の介助者が複数の被介助者の介助をおこなえるようにすること等、被介助者の実態にあった柔軟な運用をはかってください。また必要に応じて年間利用限度額の引き上げも考慮してください。
5.職場介助者制度の事業主への周知徹底をはかってください。とりわけ、非事務職に適用されるものについては、制度化後まもないため、これを知らない事業主も多く、視覚障害者が職場介助者の委嘱を希望しても事業主が消極的な事例がみられるので、事業主への周知徹底・活用をはたらきかけてください。
6.重度の視覚障害者である公務員に必要とされるサポートの課題、サポートの実態及び今後の改善策について具体的に説明してください。
7.特定職種に関して、労働省は、同制度が適用される該当企業数は、205、これが雇うべき特定職種雇用労働者数2384人のうち、現に雇用されている特定身体障害者
1597人(雇用率66.99%)と把握していますが、この数字は、実態とくらべきわめて少ないものとなっています。
特定身体障害者(視覚障害1〜3級)に適用される特定職種(あん摩マッサージ指圧師)特定身体障害者雇用率100分の70が適用される該当企業を徹底的に洗い出すとともに、これを達成するため、国・地方公共団体は、法にもとづく雇用計画を作成し、速やかに達成するよう強力に指導してください。また、同雇用率の達成が努力義務とされている民間企業に対しては、達成のための指導を強化し、必要に応じて雇い入れ計画の作成を命じてください。
8.現在新規雇用時にしか適用されない職場定着指導を雇用期間中に視覚障害者となったケースにも適用してください。
9.視覚障害が悪化し、あるいは中途で視覚障害者となり、転職を考えて盲学校等の職業課程にすすむものが増えています。盲学校及び国立視力障害センター等で、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師養成課程等の職業課程に在籍するこれらの者に対して、職業訓練手当の支給等の所得保障策を講じてください。過去に制度的に難しいとの回答をいただいていますが、現実問題として盲学校が職業訓練の場となっており、訓練中の生活保障が緊急の課題となっていることから、その解決策についての展望を示してください。
以上
(文責 田中章治)