雇用連会報 第9号



発行日 2005年3月20日
発行 全国視覚障害者雇用促進連絡会
編集責任者 田中 章治
連絡先 田中 章治(会長)
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(加入者名)  全国視覚障害者雇用促進連絡会


─ 目次 ─

「雇用連、職場介助者制度で学習会。講演会とシンポジウム開く」
職場介助者制度の改善に向けてのその後の取り組みの状況
民間企業で働く視覚障害者、5年間で60%減少!
短信


会報9号発刊にあたって

会長 田中 章治

皆さんこんにちは。会報第9号をお届けします。

雇用連ではこの間、職場介助者制度の期間延長の問題を中心に取り組んできました。今号は、この問題を引き続き取り上げ特集しています。

皆さんのご支援ご協力をお願いするしだいです。



「雇用連、職場介助者制度で学習会。講演会とシンポジウム開く。」

編集部

全国視覚障害者雇用促進連絡会(雇用連、田中章治会長)は10月31日、東京都障害者福祉会館において、職場介助者制度をテーマに講演会とシンポジウムを開催した。参加者は約30人。

冒頭、田中会長は、「職場介助者制度の助成が10年間で切れてしまうことを何とか延長させたいという切実な要求がある。」と、開催の主旨を述べた。また、最近特に驚いたこととして、厚生労働省が10月19日公表した障害者雇用実態調査結果について触れ、「この5年間で視覚障害者の雇用者数の推計値が4万3千人から1万7千人へと60パーセントも減った。厚生労働省当局は前回調査時点で50歳以上の人が5年後の時点で、定年退職あるいは早期退職制度などにより退職したためではないかとしているが、やはりその大きな原因は、経済不況による雇用情勢の悪化、リストラによる解雇が視覚障害者をはじめとする社会的に弱いところにしわ寄せされた結果ではないか。今後、より一層の視覚障害者の雇用対策の充実・強化を求めていきたい。」と述べた。

講演の部では、独立行政法人高齢・障害雇用支援機構助成審査課長の村上博夫氏が「視覚障害者の雇用に関する助成制度の現状」と題して講演を行い、今日の各種の助成金制度が創設された経緯、視覚障害者に利用できる助成制度、利用者の利便性向上のために改善・努力してきた点について解説し、従業員301人未満の企業に対する報奨金の支給要件についてや在籍出向社員の作業設備などについての具体的な質問にも丁寧に答えていた。

◆改善・努力について:利便性の向上を業績の目標値に掲げている。申請手続きの簡素化。介助者を委嘱する場合、回数制限をなしとした。配置から委嘱へ、委嘱から配置へとの変更を可能とした。

また、村上氏は講演の中で、非公式な集計としながらも視覚障害者にかかる職場介助者の認定件数を明らかにした。それによると、平成10年度以降平成15年度までの認定件数の総数は、配置(事務的業務のみ対象)82件、委嘱139件であり、委嘱のうち、事務的業務は11件、事務的業務以外は128件となっていた。

ちなみに、配置、委嘱ともに平成14年度以降は大きな伸びをみせており、配置の場合、例えば平成11年度からは毎年大体8から9件だったが、平成15年度は23件、同様に、委嘱の場合でも、毎年18から19であったのが、平成15年度には44件であった。

(☆委嘱(139)のうち、事務的業務以外(128)についてみると、例えば平成11年度には14件、平成15年度は41となっている。ただ、委嘱の事務的業務は11件と少なく、平成10年のと平成15年度が3で、ゼロという年度もあった。)

続いて、「視覚障害者の職場介助者制度のあり方について」と題するシンポジウムでは、内田邦子(雑草の会職員)、上薗和隆(点字印刷ビギン代表)、荒川明宏(株式会社ラビット代表)、新井健司(川崎市職員)の4人の各氏から発言があった。

点字出版に従事している内田、上薗両氏からは、ともに働く場の確保ということから創設された小規模事業所だが、「狭い市場の中でようやく安定してきたところで、助成金が切れることは深刻な問題だ。点字文化を守り、雇用の場を守るために、特例としてでも期限の延長を認めて欲しい。」「この12月で助成金が切れると、営業利益を上げることで介助者にかかる経費を生み出さなければならないが、受注が増えない限り存続は難しい。とにかく今はやれるところまでやってみるしかない。」と、それぞれ厳しい状況を語った。

荒川氏は、プログラマーとして雇用されていた時も、経営者としての今も、やはり介助者の存在は視覚障害者が能力を発揮するためには欠かせないと語った。これまで三度の転職経験から、最初就職した時、皮肉なことに、周囲が暇な時に自分に仕事が回ってきて、周囲が忙しい時には自分は仕事がなかったのは、忙しい時は仕事の説明をする人がいないことと関係していたと気付いた」、また、「介助者のいない自分は4年、介助者のいた友人は10年勤めたが、この差は何なんだろう。当時、情報不足と周囲に対する気兼ねから、自分は介助者をあえて要求することはできなかった。」と語った。さらに、「視覚障害者には介助者の配置とIT研修などのサポート体制を保障することで、できる仕事は確実に広がるだろう。」とも語った。「現実には、IT環境が整っても、研修やサポート体制がなく困っている視覚障害者が多く、勤務時間外に自腹を切ってでも何とかしようという人もいる。」このような現状を受けて、「ビジネスサポートクラブ」をスタートさせ、事業主と当事者の間で、双方のパイプ役としてのビジネスを展開し始めたところだと語った。

国の制度として公務員に対する職場介助者制度がない中で、新井氏は、労働組合への理解と協力も得ながら、長年の実績の蓄積により、川崎市独自の視覚障害者に対する職場介助者制度の実現までの経験を語った。その具体的な内容については、ご自身の人事異動にともなう変遷を経ながら、今日、「川崎市視覚障害者補助非常勤嘱託員設置要綱」(総務局人事部人事課、平成13年5月1日施行)に収められていることを紹介した。

主催者から、今回のシンポジストの人選に関して、民間企業におけるいわゆる事務職の人を探したが、視覚障害当事者自身、自分に介助者が配置されているのかどうかさえ分からず、結局民間企業で事務職で働いている該当者を探すことができなかったと報告された。

参加者の一人、日本盲人職能開発センター所長の篠島永一さんは、「事務的業務への介助者の件数は予想以上に少なかった。視覚障害者にとって職場介助者制度は不可欠で、平社員であろうと、管理職であろうと、また、経営者であろうと、介助者をうまく活用することで、その持てる能力を十分発揮できるのではないだろうか。10年で介助者を不要とすることについては、視覚障害という障害の特性から考えて問題があるのではないだろうか。」と感想を語っていた。



職場介助者制度の改善に向けてのその後の取組状況

雑草の会(点字印刷共同作業所)に勤務する内田邦子さんから、「職場介助者の委嘱が10年で助成期間が切れるので不安である。期間延長の運動をしたいので支援してほしい。」との要請があって、雇用連としてこの問題の解決を目指して取り組んでいます。毎年実施している厚労省交渉の重点項目として取り上げているほか、昨年10月31日にはシンポジウムも開催しました。

現在は、内田さんが所属している東視協(東京視力障害者生活と権利を守る会)と一緒にヒューマンアシスタント(職場介助者)問題の対策会議を持ち、継続的に協議しています。当面、「視覚障害者とヒューマンアシスタント制度(仮称)」と言うリーフレットを作成し、広く社会にアピールしていく予定です。近い将来、国会請願署名行動にも取り組んでいくことになるでしょう。皆さんの理解と協力をお願いいたします。



民間企業で働く視覚障害者、5年間で60%も減少!

昨年10月19日、厚労省は5人以上の民間企業で雇用されている身体障害者の数(推計値)を公表しました。それによると、平成15年11月現在、雇用されている身体障害者の総数は36万9千人、これは5年前の平成10年の前回調査にくらべ、4.8%減となっています。

障害種類別にみると、肢体障害者が18万1千人(49.1%)、ついで内部障害者が7万4千人(20.1%)、聴覚言語障害者が5万9千人(16.0%)となっています。そして、私達が最もショッキングだったのは雇用されている視覚障害者が1万7千人(4.6%)に留まっており、更に5年前の4万3千人から、1万7千人へと実に60%も減少していることです。大きく減った原因の分析と共に、抜本的な視覚障害者の雇用促進対策を考ずるよう厚労省に対し、強く要望します。



短信

1. 雇用連は昨年12月2日(木)、恒例となっている厚労省交渉を行いました。詳細については、4月頃刊行予定の「雇用連情報」、第51号をご覧ください。
2. 元当会会長の橋本宗明さん(現相談役)が、2004年度の点字毎日文化賞を授賞されました。たいへんおめでとうございます。昨年10月5日、当会と全視協などが主催する「祝う会」が都立障害者福祉会館で開催され、当会会員も出席されました。
1. 昨年12月6日、「手をつなごう全ての視覚障害者全国集会2004年度後期中央要請行動」開催され、雇用連も参加しました。また、今年1月20日には、全視協の主催で、「障害者差別禁止法を考える」集会が開催され、筆者(田中)が「視覚障害者の働く問題」で、パネリストを務めました。