雇用連会報 第5号



発行日 2003年3月20日
発行 全国視覚障害者雇用促進連絡会
編集責任者 田中 章治
連絡先 田中 章治(会長)
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加入者名 全国視覚障害者雇用促進連絡会


「会報第5号」発刊にあたって

みなさんお元気ですか。「会報第5号」をお届けします。

今号には、昨年10月6日に開催されましたシンポジウムに参加しての感想や、特養マッサージ問題に関する稲垣実さんの投稿が載っています。どうぞ最後までお読み下さい。

尚、この「会報」は点字版、墨字版の他、メイリングリストでも配信しています。ご利用下さい。



─ 目次 ─

雇用連シンポジウム報告
(投稿)特養マッサージ師問題
窪田巧先生の勝利和解
雇用連に感謝状送られる
短信



雇用連がシンポジウムを開催

昨年10月6日(日)、日本盲人職能開発センター(東京 四谷)に於いて、雇用連主催のシンポジウムが開催されました。当日の参加者は30数名、講師や各パネリストの発言にみんな熱心に耳を傾け、大変内容の濃い集まりとなりました。

先ず、弁護士の森田明氏から、「障害者差別禁止法への道」と題する講演がありました。森田氏は、何故今「障害者差別禁止法」が必要かということについて話されました。世界的には2000年までに既に40ヶ国以上で障害者差別を禁止する法律が成立していること。今こそ我が国においても「行政のための法律(施策の根拠法)」から、「障害者のための法律(権利を保障する法律)」への転換、即ち、「戦える法律」の制定が緊急課題であることを力説されました。

このあと、森田氏は、日弁連の「障害のある人に対する差別を禁止する法律」要綱案(2001年)をもとに説明されました。特に、労働に関する規定では、障害者雇用促進法的発想からの転換や障害者の採用及び労働条件に関する差別の禁止などの点について詳しく述べられました。

後半は「視覚障害者の職域拡大とよりよい職場生活をめざして」と題するシンポジウムを行いました。神奈川県立養護学校でヘルスキーパーをしている斉藤建造氏の報告を通して、全国各地でこのような事例を広げることの重要性を痛感しました。大阪府立中央図書館司書の杉田昌幸氏の報告は特にその求職活動が注目されました。杉田氏のIT技術のスキルアップの努力と全国の自治体への司書採用アンケートをするなどの積極的な求職活動が現在の氏の位置を確保したと言えます。中途視覚障害者で民間会社に勤務する植村茂樹氏の報告から、東京飯田橋職安の視覚障害者の相談員のアドバイスが役立ったことがわかりました。この点で、各地の拠点となる職安に視覚障害者に精通した相談員の配置が必要であることを再認識させられました。



特別養護老人ホームにおける視覚障害者マッサージ師の雇用について

稲垣 実

東京都には昭和45年頃より、特別養護老人ホーム(特養)にマッサージ師を配置できる制度がありました。そのころには約170人程の視覚障害者マッサージ師が働いていました。しかし、平成12年の介護保険制度導入と同時に都加算制度が廃止され、激変緩和のための経営支援事業が施行され現在約140人程となっています。それは、介護保険以前から継続雇用されている民間経営の特養視覚障害者マッサージ師に限り補助金が出るなど、さまざまな問題がある制度で3年後に見直しとなっていました。私たちの活動は、東京都に要請や陳情署名などを行ってきました。現在の状況として、制度は継続して存続しそうですが、この制度には問題があり、活動の趣旨である特養に働く視覚障害者マッサージ師全てが対象になるように、また雇用が拡大、安定した制度となるように考えています。

一方では介護保険制度では、特養などに機能訓練指導員が必要となり、その資格要件としてあんま・マッサージ・指圧師が入りました。 機能訓練指導員を常勤配置した場合、機能訓練加算が介護報酬に加算された制度になりました。例えば、入所者10人の特養ホーム1日1人12単位で、1ヶ月約36万円になります。この加算は、病院のように出来高払いではなく体制が整っていれば支払われ、また、特定の人を対象とし、職場はバリアフリーになっているなど視覚障害者の働ける条件はわりと整っているように思われます。

私達は、厚生労働省に雇用連をとおし、視覚障害者マッサージ師の雇用拡大につながるような雇用促進のためのマニュアル作りを要望しており、今年度中に出来る予定です。

現在、国や都に対し2つの旗を掲げて活動しています。

1. 高齢者福祉サービスの維持・向上のためには、視覚障害者マッサージ師の行う業務が、欠かせないものであること。
2. 視覚障害者にとって特養での就労は、職場環境や業務内容が適していること。

今後も雇用の拡大につながるような活動を行っていきたいと考えています。



窪田巧先生の勝利和解について

みなさん既にご存じの通り、聖心ウルスラ学園高校の数学教師窪田巧さんは、中途視覚障害により、学校法人側から不当な休職命令を受け教壇に立つことが出来なかった。裁判を戦う中で、昨年12月10日、全国的な支援の輪が広がりを見せ、画期的な勝利和解を勝ち取ることが出来た。その内容としては、

1.学校法人が休職命令を撤回し、未払い賃金・賞与等全額支払う。
2.2003年1月より窪田さんに数学の授業を担当させる。というものである。 (宮崎地裁)

雇用連では、全国的に取り組まれた「はがき作戦」を支持し、会員個々にご協力をいただいた。以下、窪田先生支援募金をお寄せいただいた会員の名前を記し、感謝の意を表したい。

* この中には、会費を含め送金いただいた方もおられることをお断りします。(順不同、敬称略)

篠島永一山下利美下奥重望吉田重子堀井公子寺西勇二
貞包義正平坂恵子岡崎 学 春日満治酒井久江山崎保明
山崎さつき田中和夫高山良太水越直之井沢みゆき辻本昌美
永井昌彦高木紀子馬渡藤雄加藤 純 藤野高明


窪田先生他から雇用連に感謝状送られる

窪田先生の裁判闘争に会としては充分な支援が出来たとは言えませんが、先頃、窪田先生他の連名で雇用連に「感謝状」が届いております。以下に、全文を掲載致します。


感謝状

全国視覚障害者雇用促進連絡会殿

あなたは、窪田巧が学校法人聖心ウルスラ学園から退職勧告並びに休職命令を受けた苦難の時期に、窪田巧を心から支えていただきました。おかげさまでこのたび同法人は解雇通告並びに休職命令を全面撤回し、窪田巧は数学教師として教壇に戻ることができることとなりました。ここにあなたのご助力に心より感謝申し上げます。

私たちは障害があっても安心して働くことのできる社会をめざし、全力を注ぐ所存ですので、今後ともお力添え下さるようお願い致します。

2002年12月10日

聖心ウルスラ学園高等学校   数学科教諭  窪田 巧
働く障害者の弁護団   代表  清水 建夫
全国視覚障害教師の会   代表  山口 通



短信

1. 恒例の雇用連厚生労働省交渉が、昨年12月9日(月)に行われました。詳しい内容については、現在、発行に向けて準備中の『雇用連情報』に掲載致します。
2. 本会会員で、元京都府立盲学校教諭の永井昌彦さんが1月29日、逝去されました。78歳でした。 永井さんは、『視覚障害者労働白書(日本盲人福祉研究会発行)』の編集に関与された他、「一輪の会」の会長として、視覚障害者の雇用促進に大変造詣の深い方でした。謹んでご冥福をお祈り致します。


* 係りでは会員のみなさんの「投稿」や近況報告などをお待ちしています。どうぞ気軽にお寄せ下さい。

(田中 章治)